ジャマイカの歴史

ジャマイカの歴史は、カリブ海に浮かぶ島国ジャマイカの先史時代から現代に至るまでの変遷を辿るものです。この島は、その地理的な位置と歴史的な経緯から、多様な文化と社会が織りなす複雑な歴史を持っています。

先コロンブス期

ジャマイカに最初に定住したのは、南アメリカからカヌーでやってきたタイノ族/アラワク族でした。彼らは11世紀頃までに島に定住し、漁労や採集を主な生業として生活していました。タイノ族は、島を「森と水の国」を意味する「Xaymaca（ザイマカ）」と呼んでおり、これが「ジャマイカ」という名前の由来になったという説もあります。

スペイン植民地時代

1494年、クリストーバル・コロン（コロンブス）が2度目の航海でジャマイカに上陸し、この島はスペインの支配下に入りました。1509年には、フアン・デ・エスキベルによって征服され、「サンティアゴ」と改名されました。しかし、この地での先住民の生活はスペイン人によって一変しました。

スペイン人は先住民のタイノ族をキリスト教に改宗させようと試みましたが、その過程で過酷な労働を強いるなど虐待を行いました。その結果、スペインの支配からわずか50年足らずで、10万人いたとされるタイノ族は、スペイン人が持ち込んだ疫病、奴隷制度、そして戦争によって絶滅してしまいました。1517年には、最初の黒人奴隷がアフリカからジャマイカに連行され、サトウキビプランテーションでの労働を強いられました。

1538年、首都はセビージャ・ヌエバからビジャ・デ・ラ・ベガ（現在のスパニッシュ・タウン）に移転しました。1640年代には、ジャマイカは美人が多いという評判が立ち、多くのスペイン人が移住しましたが、1555年から1655年の間には海賊による攻撃も頻発しました。また、金などの鉱産物が産出しないことが判明すると、スペイン人は植民地支配への関心を失っていきました。

イギリス植民地時代

1642年にイングランドでピューリタン革命が起こると、オリヴァー・クロムウェルが実権を握り、重商主義政策を推進しました。1655年、クロムウェルの「西方計画」の一環として、イギリス軍はジャマイカを侵攻し、スペインから実効支配を奪いました。1657年には、海賊やスペイン軍の攻撃から守るため、首都はポート・ロイヤルに移されました。

1670年、マドリード条約によってジャマイカは正式にイギリス領となり、イギリスによる植民地支配が始まりました。1692年にはポート・ロイヤルで大地震が起こり、都市が壊滅したため、首都はスパニッシュ・タウンに移されました。

18世紀に入ると、プランテーションでの過酷な労働から逃亡した黒人奴隷たちが、島の山岳地帯に集落を形成し、マルーンと呼ばれる集団となりました。彼らは、奴隷解放を求めてイギリス植民地政府に対して反乱を繰り返しました。18世紀初頭には、クジョに率いられた第一次マルーン戦争が勃発し、マルーンはゲリラ戦でイギリス軍を苦しめ、結果的に自由と土地を獲得しました。しかしその後、マルーンはイギリスの傭兵となり、他の黒人たちを弾圧する側にも回ることになります。

1760年にはタッキーの反乱が勃発し、全島を揺るがす大反乱へと発展しました。1795年には第二次マルーン戦争も起こりました。

19世紀に入り、度重なるマルーンたちの反乱を受けて、1807年にイギリス議会は奴隷貿易を廃止しました。しかし、奴隷制度の廃止を求める声はさらに強まり、1831年には奴隷でありバプテスト教会の説教師でもあったサム・シャープが反乱を起こしました。この反乱はイギリス軍によって鎮圧されましたが、1833年に奴隷制度廃止法案がイギリス議会で可決され、1838年には徒弟制度も廃止され、黒人は完全な自由を獲得しました。

奴隷制度廃止後、多くの黒人が丘陵地帯に定住し、小規模な農業を始めましたが、プランテーション経営者は労働力不足に悩まされることとなりました。そのため、1840年代から1910年代にかけて、インド、アフリカ、中国などから契約労働者がジャマイカに流入しました。1865年には、ポール・ボーグル牧師がモラント・ベイの反乱を起こし、この反乱を機に、ジャマイカは王領直轄植民地となりました。1872年には、首都がキングストンに移されました。

19世紀後半には、サトウキビに代わってバナナのプランテーションが開発され、バナナが主要な輸出品となりました。この産業構造の変化によって、多くのジャマイカ人が失業し、アメリカ合衆国や中米諸国に移住するようになりました。

独立への道

1914年にはマーカス・ガーベイが世界黒人地位向上連盟（UNIA）を結成し、アフリカ帰還運動を指導しました。1930年代の世界恐慌下では、労働条件の改善を求めて大規模な暴動やストライキが頻発しました。1938年には、ノーマン・マンリーとアレクサンダー・バスタマンテという二人の指導者が現れ、それぞれ人民国家党（PNP）とジャマイカ労働党（JLP）を結成しました。これらの政党は、普通選挙による議会設置をイギリスに要求し、1944年に議会が設置されるとともに総選挙が実施されました。

第二次世界大戦後、イギリスは植民地政策を転換し、1956年に西インド連邦が発足しましたが、ジャマイカは1961年に連邦から脱退し、1962年8月6日に正式に独立を果たしました。ジャマイカは、カリブ海のイギリス植民地の中で最初に独立を達成した国となりました。

独立後のジャマイカ

独立後、初代首相にはJLPのバスタマンテが就任しました。1972年にはPNPのマイケル・マンリーが首相となり、社会主義政策を推進しましたが、アメリカの干渉などによって成功しませんでした。1980年の選挙では、JLPのエドワード・シアガが勝利し、アメリカとの関係を重視する政策を採りました。シアガ政権は一時的に経済を改善させましたが、経済政策に失敗し、累積債務を増大させました。1988年にはハリケーン・ギルバートがジャマイカを直撃し、大きな被害が出ました。その後、再びマイケル・マンリーが首相に就任しましたが、1991年に引退し、パーシヴァル・パターソンが後を継ぎました。

2006年にはポーシャ・シンプソン＝ミラーがジャマイカ初の女性首相に就任しました。2007年には、JLPのブルース・ゴールディングが首相に就任しました。独立後のジャマイカは、政治的な対立や経済的な困難に直面しながらも、カリブ海地域における重要な国として、その歴史を刻み続けています。

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