ジャンタル・マンタル (ジャイプル)

ジャンタル・マンタル：時を超えて天を測る天文台

インド、ジャイプルの中心部に位置するジャンタル・マンタルは、18世紀初頭に建てられた壮大な天文台です。その名は現地の言葉で「計測する機器」を意味し、天文学者であり占星術にも精通していたマハーラージャ・ジャイ・シング2世によって建設されました。この天文台は、単なる観測施設ではなく、当時の高度な天文学的知識と建築技術を今に伝える貴重な遺産です。

歴史と背景

ジャンタル・マンタルは、ジャイ・シング2世が1728年から1734年にかけて建設しました。彼は、ムガル帝国のラージプート族カチワーハー家の当主であり、自らの領土に天文学の知識を広めることに熱心でした。ジャイ・シング2世は、ジャイプルを含め北インド各地に5つの天文台を建設しましたが、その中でもジャイプルのものが最大規模を誇ります。

最初の天文台は1724年にデリー郊外に建設され、その後、ヒンドゥー教の聖地であるヴァーラーナシーやマトゥラー、ウッジャインにも天文台が設けられました。これらの天文台は、単に天体観測を行うだけでなく、宗教的な儀式や占星術にも活用されたと考えられています。

2010年には、その文化的、科学的価値が認められ、ユネスコの世界遺産に登録されました。

観測施設の詳細

ジャンタル・マンタルには、12の主要な観測機が設置されており、いずれも天体望遠鏡が発達する以前の技術で建設されました。これらの観測機は、太陽、月、星の位置や動きを測定するために使用され、当時の天文学の知識と技術を物語っています。以下に代表的な観測機を紹介します。

サムラート・ヤントラ: 高さ27.4mの日時計で、この天文台で最大の観測機です。その精度は2秒で、北極星を指す一直線の斜面が特徴です。
ダクシノー・ブリッティ・ヤントラ: 太陽の高度を測定するための観測機です。
ウンナターシャ・ヤントラ: 星や惑星の位置を測定するために使用されます。
ヤントラ・ラージ: 天体の高度を測定する観測機です。
クラーンティ・ヴリッタ・ヤントラ: 天体の緯度と経度を測定します。
ナリ・ヴァラヤ・ヤントラ: 太陽を観測するために使用されます。
ジャイ・プラカーシュ・ヤントラ: 他の観測機のデータを補完するために使用される観測機です。
ラーシ・ヴァラヤ・ヤントラ: 占星術に用いられ、12の観測機が各々の星座に向かって設置されています。
ラグ・サムナート・ヤントラ: サムラート・ヤントラの小型版で、世界標準時が採用される以前には、ジャイプルの標準時計として機能していました。
チャクラ・ヤントラ: 子午線通過時間や星の位置を測定する観測機です。
ラーム・ヤントラ: 太陽、月、星の高度と方位を測定するために使用されます。
ディガンシャ・ヤントラ: 太陽、惑星、星の位置を測定します。

これらの観測機は、ジャイ・シング2世が自ら設計に関わったとされ、その天文学への深い理解と情熱が感じられます。

世界遺産としての価値

ジャンタル・マンタルが世界遺産として登録された理由は、その建築的、技術的な価値に加え、人類の歴史における重要な時代を象徴しているからです。具体的には、以下の登録基準を満たしています。

(2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
(6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの。

これらの基準からもわかるように、ジャンタル・マンタルは単なる天文台以上の価値を持ち、人類の知識と文化の発展を物語る重要な遺産と言えるでしょう。

まとめ

ジャンタル・マンタルは、天文学と占星術への情熱が形になった、壮大で美しい天文台です。そのユニークな構造と正確な観測機は、当時の人々の知識と技術を今に伝えます。ジャイプルを訪れる際には、ぜひこの天文台を訪れ、古代の天文学者たちの足跡を辿ってみてください。

関連情報

シティー・パレス: ジャイ・シング2世の居城であり、ジャンタル・マンタルの建設と同時期に建てられました。
ハワー・マハル（風の宮殿）: ジャイプルの代表的な観光名所の一つで、美しい外観が特徴です。
天文遺産: ジャンタル・マンタルのような、天文学に関連する歴史的建造物や場所のことです。

この天文台は、過去と現在を繋ぎ、宇宙への憧憬を抱かせる場所として、今後もその価値を伝え続けるでしょう。

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