マハーラージャ

マハーラージャ：偉大な王の称号とその歴史

マハーラージャ（Mahārāja）は、サンスクリット語で「偉大な王」または「高位の王」を意味する称号です。女性形はマハーラーニー（Mahārājñī）で、マハーラージャの妻や、女性君主を指します。マハーラージャの未亡人はラージマータ（Rajmata、王太后に相当）と呼ばれます。ヒンディー語では語尾の「a」が黙字となるため、「マハーラージ」と発音されることも多く、日本語でも「マハラジャ」と表記されることが一般的です。学術的な文脈では「マハーラージャ」が用いられる傾向があります。

語源と広がり

「マハーラージャ」は、「偉大なる（mahānt）」と「王（rājan）」を組み合わせた同格限定複合語です。ラテン語の「magnum（偉大な）」と「rēgem（王）」と語源を共有し、サンスクリット語の影響を受けたインド周辺諸語（ヒンディー語、マラーティー語、ベンガル語など）にも広く浸透しています。元々は広大な領土を治める王を指しましたが、中世以降は小規模な王侯もこの称号を用いるようになりました。

インド亜大陸におけるマハーラージャ

1947年のイギリス領[[インド帝国]]には600以上の藩王国が存在し、それぞれにラージャ、ナワーブなどの称号を持つ統治者がいました。イギリスはインドの大部分を直接統治していましたが、残りの地域はこれらの小君主に間接的に統治を委ね、駐在官を派遣して影響力を行使していました。

マハーラージャは「偉大な王」を意味しますが、実際の権力や領土の規模は藩王国によって大きく異なりました。小さな村落を統治する者から、現代的な意味での皇帝に相当する者までいました。イギリスによる植民地化以降、多くの小規模な王侯が自らをマハーラージャと称するようになり、さらに君主とは無関係な者もこの称号を名乗るようになりました。コーチン王国のマハーラージャやカプルターラーのジャガトジート・シングなどがその例です。

「マハーラージャ」には様々な変種が存在します。「マハーラーナー」、「マハーラーワル」、「マハーラワット」、「マハーラーオ」、「マハーラーオル」など、「マハー」に異なる「王」を意味する語を組み合わせた同義語です。綴り字も地域や時間によって変化しており、「マフラージ」、「マラージ」、「マハーラージャー」、「マハーラージ」など様々な表記が見られます。

「ラージャーディラージャ」（諸王の王）や「マハーラージャーディラージャ」などのより上位の称号もありましたが、皇帝を意味する称号としては、サムラート（Samraat）やその変形が主に用いられ、マウリヤ朝やグプタ朝など限られた王朝のみが用いました。イスラーム教圏ではパードシャーが皇帝を意味する称号でした。

複合称号と君主以外の使用例

マハーラージャは単独で使用されるだけでなく、他の称号と組み合わされた複合称号も存在しました。例えば、ムガル帝国では「マハーラージャーディラージャ・バハードゥル」、「サワーイー・マハーラージャ・バハードゥル」などの高位の称号が用いられ、その階級を示していました。

また、「マハーラージャ」は君主以外にも、貴族や高官に称号として与えられることもありました。ザミーンダール（大地主）階級や、植民地軍の軍務に就いた者などにも授与された事例があります。ニザーム王国では、廷臣にもイギリスの貴族称号のように様々な称号が与えられ、その中で最も高位のヒンドゥー貴族はマハーラージャと称されました。

さらに、宗教指導者にも用いられた例があり、マヘーシュ・ヨーギーが創設した「地球的世界平和の国」の統治者であるトニー・ネイダーは「Maharaja Adhiraj Rajaraam」と称されました。

マハーラージャの血縁者

マハーラージャの息子はマハーラージ・クマール（Maharaj Kumar）またはマハーラージクマール（Maharajkumar）、娘はマハーラージクマーリー（Maharajkumari）またはマハーラージ・クマーリー（Maharaj Kumari）と呼ばれました。

東南アジアにおけるマハーラージャ

インドネシア、マレーシア、フィリピンなど東南アジア諸国でも、かつてヒンドゥー教や仏教が盛んだった時代、あるいはその影響下で「マハーラージャ」が使用されました。シュリーヴィジャヤ王国やマジャパヒト王国などの統治者はマハーラージャの称号を用いており、イスラーム化後も王族の一部が伝統的な称号を保持していました。マレーシアのジョホール王国やサバでも一時的にマハーラージャの称号が用いられ、現代マレー語では「皇帝」を意味する言葉として使用されています。フィリピンのスールー諸島でも、地域の小規模な統治者の称号として用いられました。

このように、「マハーラージャ」は単なる称号ではなく、インド亜大陸から東南アジアにかけて広大な地域で、歴史、政治、文化、宗教など様々な文脈において多様な意味と役割を果たしてきた言葉です。

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