ジャーニーマン (アルバム)

『ジャーニーマン』（Journeyman）は、1989年にリリースされたエリック・クラプトンによるスタジオ・アルバムです。

この作品の制作にあたっては、プロデューサーとしてラス・タイトルマンが迎えられました。クラプトンの過去の作品でプロデュースも手がけていたフィル・コリンズは、今回はドラムスなど演奏に専念する形で参加しています。

収録曲の中でも特に注目を集めたのは、「バッド・ラヴ」です。この曲はフォリナーのミック・ジョーンズとクラプトンの共作であり、後にシングルとしてリリースされました。日本ではホンダ・アスコットのテレビCMに起用され、その認知度を高めました。また、この楽曲は第33回グラミー賞において「ベスト・ロック・ボーカル・パフォーマンス（男性部門）」を受賞するという大きな成功を収めています。

親しい友人であったジョージ・ハリスンも本作に貢献しています。彼はクラプトンのために新曲「ラン・ソー・ファー」を書き下ろし、自らもギター演奏とコーラスで参加しました。この曲は後にジョージ自身のアルバム『ブレインウォッシュド』（彼の死後に発表）でセルフカバーされています。

ジョージは「ラン・ソー・ファー」以外にも、「ザット・カインド・オブ・ウーマン」という楽曲も用意していましたが、こちらはクラプトンのデモ制作に留まり、アルバムには収録されませんでした。しかし、そのデモテープはジョージからゲイリー・ムーアに渡され、ゲイリーのアルバム『スティル・ゴット・ザ・ブルーズ』（1990年）に、ゲイリーとジョージが共演したバージョンとして収められています。さらに、クラプトンが録音したデモバージョンも、1990年にリリースされたチャリティー・アルバム『ノーバディズ・チャイルド-ルーマニアン・エンジェル・アピール』に収録されています。

また、当時若手のブルースギタリストとして頭角を現しつつあったロバート・クレイも、4曲にわたって参加しています。そのうちの1曲「オールド・ラヴ」は、クラプトンとクレイが共作した楽曲であり、後にクラプトンのライブでも重要なレパートリーとなりました。

アルバムには、上記以外にも多彩な楽曲が収録されています。

収録曲

プリテンディング (Pretending) (Jerry Williams)
エニシング・フォー・ユア・ラヴ (Anything for Your Love) (J. Williams)
バッド・ラヴ (Bad Love) (Eric Clapton, Mick Jones)
ランニング・オン・フェイス (Running on Faith) (J. Williams)
ハード・タイムス (Hard Times) (Ray Charles)
ハウンド・ドッグ (Hound Dog) (Jerry Leiber, Mike Stoller)
ノー・アリバイ (No Alibis) (J. Williams)
ラン・ソー・ファー (Run So Far) (George Harrison)
オールド・ラヴ (Old Love) (E. Clapton, Robert Cray)
ブレイキング・ポイント (Breaking Point) (J. Williams, Marty Grebb)
リード・ミー・オン (Lead Me on) (Cecil Womack, Linda Womack)
ビフォー・ユー・アキューズ・ミー (Before You Accuse Me) (E. McDaniel)

本作には、クラプトンや前述のゲストに加え、非常に多くの著名なミュージシャンがレコーディングに参加しています。

主なレコーディング・メンバー

エリック・クラプトン - ギター, ボーカル
フィル・コリンズ - ドラムス、ボーカル
デイヴィッド・サンボーン - アルト・サックス
ロバート・クレイ - ギター
フィル・パーマー - ギター
ジョン・トロペイ - リズムギター
ジョージ・ハリスン - ギター、ハーモニー・ボーカル
ネイザン・イースト - ベース、バッキング・ボーカル
ピノ・パラディーノ - ベース
グレッグ・フィリンゲインズ - シンセサイザー、ピアノ、キーボード
リチャード・ティー - ピアノ、ローズ・ピアノ
ジム・ケルトナー - パーカッション、ドラムス 他
スティーヴ・フェローン - ドラムス 他
多くのホーン・セクション（ハンク・クロフォード、デヴィッド・ファットヘッド・ニューマンら）とバックコーラス（チャカ・カーンら）

これらの豪華な顔ぶれが、アルバムの多様で厚みのあるサウンドを形作っています。クラプトンのキャリアにおける重要な一時期を捉えた作品と言えるでしょう。

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