ジョウロウスゲ

ジョウロウスゲ (Carex capricornis)

ジョウロウスゲはカヤツリグサ科に属する植物で、高さは30～60cmほどになります。この植物は特に視覚的に印象的で、大きな小穂と突き出た果胞が特徴です。その優雅さから美麗なものとしての名を持ち、自然においても目を引く存在となっています。

特徴

ジョウロウスゲは束状に生育し、太くて断面が三角形の花茎を持ちます。葉は広線形で1cmほどの幅があり、花茎の途中に互生して生えています。上部に伸びる葉は、花穂よりも長くなります。また、茎の上部はザラザラとした質感を持っているのも特徴です。

花期は初夏から夏にかけてであり、茎の先端には3～6個の小穂が近接して付いています。頂小穂は雄性で、側小穂は雌性という性別があり、この特徴は他のスゲとは異なる点です。小穂の基部には葉状の苞が発達しており、この苞は花序よりも長く成長します。頂小穂は線状円柱形で長さ約2cm、柄はありません。雄花鱗片は短く、先端が尖っていて長い芒を持ち、縁には細かな鋸歯が並んでいます。

雌小穂は短い柄があり、形は楕円形で、黄緑色をしています。長さは約2cmで、雌花鱗片は淡褐色から蒼白色で、先端が尖り、また長い芒と細かい鋸歯が見られます。果包は多数の雌小穂に密着しており、長さ6mm程度で披針形をしています。その先端は長い嘴状に突き出し、二つに裂けます。このように、ジョウロウスゲは見た目も非常に特異で一目で識別できます。

分布と生育環境

本種は日本国内では主に本州の関東以北および北海道に分布しています。海外では朝鮮半島や中国東北部、ウスリーに自生しています。ジョウロウスゲは川岸や池の水際に生育し、砂質の湿地にともなって現れます。この植物は常に安定した湿地に見られるわけではなく、土木工事や水害などの影響で出現することもあります。条件が整えば、姿を消しても再び生育することができる柔軟性を持った植物です。

分類

勝山(2015)によれば、ジョウロウスゲは頂小穂が雄性、側小穂が雌性という特徴があります。同じクグスゲ節に分類される種としては「クグスゲ」がありますが、この種は雌小穂が細長く、長い柄を纏っています。ジョウロウスゲはその特有の果包の長い嘴によって容易に見分けることができます。2011年の星野他の研究でもこの植物は非常に目立つとされています。

保護の状況

環境省のレッドデータブックでは、ジョウロウスゲは絶滅危惧II類に指定されています。神奈川県や山梨県、長野県、新潟県などで保護指定があり、いずれの地域でも普通に見られるとは言えません。特に神奈川県では数株の記録があり、その自生地は河川改修で消えてしまったとされています。安定した生育場所が確保されないことが、その保護を難しくしています。

参考文献

• - 牧野富太郎 原著、『新分類 牧野日本植物図鑑』、(2017)、北隆館
• - 勝山輝男、『日本のスゲ 増補改訂版』、(2015)、文一総合出版
• - 星野卓二他、『日本カヤツリグサ科植物図譜』、(2011)、平凡社

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