ジョン・ヘイ・ホイットニー

ジョン・ヘイ・ホイットニーの生涯

ジョン・ヘイ・ホイットニー（John Hay Whitney, 1904年8月27日 – 1982年2月8日）は、アメリカ合衆国の官僚、新聞社経営者、そして競走馬の馬主として知られています。名門ホイットニー家の一員であり、第50代在イギリスアメリカ合衆国大使（1957年～1961年）を務めました。通称「ジョック・ホイットニー（Jock Whitney）」として親しまれました。

生い立ちと青年時代

メイン州エルスワースで生まれ、父はペイン・ホイットニー、母はヘレン・ジュリア・ヘイ・ホイットニーです。姉にジョーン・ホイットニー・ペイスンがいます。祖父はアメリカ合衆国海軍長官、母方の祖父は国務長官という、政界と深い繋がりを持つ家系でした。また、産業界にも影響力があり、父の叔父であるオリヴァー・ハザード・ペインは、タバコ事業で成功を収めています。

ジョンは、父や祖父も通ったイェール大学に進学し、秘密結社「デルタ・カッパ・イプシロン」と「スクロール・アンド・キー」に所属しました。伝説によると、イェール在学中に現在の「スポーツ刈り」と呼ばれる髪型を考案したとされています。1926年にはオックスフォード大学に進学しましたが、父の死により帰国しました。父の遺産2000万ドルに加え、後に母の遺産も受け継ぎ、莫大な財産を築きました。

結婚と家族

最初の妻はメアリー・エリザベス・アルテマス（通称リズ）です。プロポーズとして2200エーカーの乗馬牧場を贈りました。しかし、結婚後もジョンは多くの女性と関係を持ち、俳優との浮き名を流しました。その中には、タルラー・バンクヘッド、ジョーン・ベネット、ポーレット・ゴダード、ジョーン・クロフォードなどがいました。キャロル・ロンバードとクラーク・ゲーブルが彼のパーティーで出会い結婚したという逸話も残っています。1940年にリズと離婚しましたが、リズはその後も競馬界で活躍しました。

1942年、ジョンはベッツィ・キャッシング・ルーズベルトと再婚し、彼女の連れ子2名も家族に迎えました。

兵役と官僚時代

第二次世界大戦中、ジョンはアメリカ空軍に情報将校として従軍し、OSS（戦略情報局）に所属しました。南フランスでドイツ軍に捕らえられそうになりましたが、連合軍の攻撃に乗じて脱出しました。

終戦後、1957年にドワイト・D・アイゼンハワー大統領の指名を受け、在イギリスアメリカ合衆国大使に就任しました。スエズ動乱の際には、アイゼンハワーの意向を受け、イギリス、フランス、イスラエルに対してエジプトからの撤退を勧告する立場を担いました。

晩年

1970年代には、世界でも有数の富豪として知られていました。ロングアイランドの広大な邸宅、ジョージアのプランテーション、マンハッタンの大規模な宅地区画、コネチカット州の別荘、サラトガ・スプリングズの別宅など、多くの不動産を所有していました。また、ジョージア州オーガスタやイギリスのアスコット競馬場近郊にも別荘を構え、サウスカロライナ州には臨終の地となる邸宅を用意していました。1982年2月8日、ニューヨークで心不全により77歳で亡くなりました。

事業

フリーポート・テキサス

1929年、硫黄採掘会社のフリーポート・テキサス社の創業者一族と出会い、同社買収を企てました。創業者一族を追い出し、会社を乗っ取ることに成功しました。その後、1933年にウィリアムズ・ジュニアが社長に就任し、ジョンは取締役となりました。

テクニカラー

ジョンはブロードウェイのミュージカルにも投資しており、成功と失敗の両方を経験しました。1934年頃には、映画産業にも関心を持つようになり、テクニカラー社の三色カラーフィルム技術に将来性を感じ、RKOのクーパーと共に投資しました。1932年にはパイオニア・ピクチャーズを設立し、出資者となりました。

また、デヴィッド・O・セルズニックの制作会社にも多額の投資を行い、取締役会長にも就任しました。彼の資金は『風と共に去りぬ』や『レベッカ』などの名作制作に大きく貢献しました。

J. H. ホイットニー & カンパニー

ベンチャーキャピタルの先駆けとなったJ. H. ホイットニー & カンパニーを設立しました。1958年にはニューヨーク・ヘラルド・トリビューンを買収し、1966年の廃刊まで発行者となりました。また、他の新聞社や放送局も傘下に収めていました。

活動

競馬

父の遺産には競走馬や牧場も含まれていました。ジョンは姉と共に競走馬を所有し、1928年にはアメリカジョッキークラブの最年少会員となりました。アメリカやヨーロッパで競走馬を走らせ、1929年、1930年のチェルトナムゴールドカップで優勝しました。また、グランドナショナルでは惜しくも2着に終わりました。

アメリカのケンタッキーダービーにも4頭の競走馬を送り込みましたが、3着が最高位でした。

俳優のフレッド・アステアとは終生の友であり、競馬への情熱を共有しました。ジョンはアステアのミュージカルを後援し、RKOとの契約を仲介しました。また、ジョン自身もポロの選手として有名でした。

美術

他のホイットニー家の一員と同様に、美術品収集にも力を入れていました。ルノワールの『ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会』の小さい方の作品は、彼のコレクションの中でも特に有名でした。

篤志活動

父の活動を継ぎ、イェール大学への寄付や病院への融資を行いました。1946年には「ジョン・ヘイ・ホイットニー財団」を設立し、貧困層への教育支援を行いました。1951年には、グリーンツリーステーブルの一部を切り取り、そこに病院を建てて寄贈しました。これが現在のノースショア大学病院です。これらの活動により、ニューヨーク市から夫妻で表彰を受けました。

ジョン・ヘイ・ホイットニーは、その多岐にわたる活動を通じて、アメリカ社会に大きな足跡を残しました。

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