ジョン・マクマホン (初代準男爵)

初代準男爵 サー・ジョン・マクマホン

初代準男爵サー・ジョン・マクマホン（Sir John McMahon, 1st Baronet、1754年 - 1817年）は、イギリスの軍人であり、廷臣としても活躍しました。特に、摂政ジョージ（後の国王ジョージ4世）の国王秘書官を務めたことで知られています。

生涯

マクマホンは、家事使用人ジョン・マクマホン（初代リートリム伯爵ロバート・クレメンツの執事）の息子としてアイルランドで生まれました。幼少期はダブリンで飲食店の給仕として働いていたと伝えられています。

軍人としてのキャリア

1775年、マクマホンは北米第44歩兵連隊付きの少尉に任官し、軍人としてのキャリアをスタートさせました。この地で、後の彼の人生に大きな影響を与える第2代モイラ伯爵フランシス・ロードン=ヘイスティングズと出会います。1778年には中尉に昇進し、1780年には第48歩兵連隊に所属しました。1794年には中佐としてフランドル地方に赴任しますが、病気のためすぐに帰国し、1796年に陸軍を退役しました。

廷臣としてのキャリア

退役後、マクマホンは政界に転じたモイラ伯爵とチャールズ・フォックス（ホイッグの有力政治家）との連絡役などを務めました。その後、ジョージ王太子に見いだされ、プリンス・オブ・ウェールズ付の広報官となります。1800年にはプリンス・オブ・ウェールズ付副会計官、1802年にはコーンウォール公領評議会議員に任命されるなど、着実に地位を確立していきました。1802年にはアルデバラ選挙区から庶民院議員に当選し、1812年まで務めましたが、議員としての発言はわずか2回にとどまりました。

1811年1月、摂政法の成立によりジョージ王太子が摂政王太子（Prince Regent）となると、マクマホンのキャリアは頂点を迎えます。1812年3月、摂政ジョージはマクマホンを国王秘書官に任じ、同時に国王手許金会計長官に据えました。この人事は、議会で「若くて壮健な摂政に秘書は不要」という反発を招きましたが、摂政ジョージがマクマホンの給与を自身の手許金から出すことで、不満を抑え込みました。

国王秘書官在職中、マクマホンは多忙な摂政ジョージから爵位や勲章を授ける権限をほぼ一任され、その結果、栄典を求める者から賄賂を受け取っていたという疑惑が浮上しました。その一方で、マクマホンは悪評が絶えなかった摂政ジョージを擁護する仕事に追われ、徐々に健康を害していきました。

1817年、マクマホンは官職を辞し、（アシュリー・マナーの）準男爵を授与されました。ファルマスに引退しようとしましたが、その年のうちにバースで亡くなりました。彼の死後、9万ポンド相当の土地・財産が残されましたが、これは秘書官や会計長官の給与だけでは到底築けない額でした。準男爵位は、弟のトマスが継承しました。

サー・ジョン・マクマホンは、その生涯において、軍人、政治家、廷臣として様々な顔を持ち、摂政ジョージの側近として権勢を誇りました。しかし、その裏では、賄賂を受け取っていたという疑惑も存在し、彼の評価は一概には定まらない複雑な人物です。



参考文献
* 君塚, 直隆『女王陛下の影法師 - 秘書官からみた英国政治史』（第一刷）筑摩書房、東京都台東区〈ちくま学芸文庫〉、2023年。ISBN 4480511644。

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