ジョー・ディートン

ジョー・ディートン。その名は、1980～90年代のプロレスファンにとって、特別な響きを持つだろう。アメリカ合衆国出身のこの元プロレスラーは、全日本プロレスにおいて、長きに渡り活躍した人気外国人レスラーの一人として知られる。

テキサス州タイラー出身、1957年4月9日生まれの彼は、幼少期は野球選手を目指していたという。しかし、兄のデビッド“ホス”ディートンの影響を受け、1970年代後半にプロレスラーへの道を歩み始める。当初はジョエル・ディートン名義で、兄との兄弟タッグチーム『ジ・アウトローズ』としてNWA南部テリトリーでキャリアをスタートさせた。この頃は主にジョバーとしての役割を担っていたものの、フロリダのCWFでは、名門ブリスコ・ブラザーズとも対戦する機会を得ている。

1983年からは、ジム・クロケット・ジュニアが主宰するNWAミッドアトランティック地区へ移籍。ここでは、リッキー・スティムボート、ボブ・オートン・ジュニア、ザ・グレート・カブキといった当時のトップレスラーたちと対戦。彼らメインイベンター相手に実力を磨きながら、地道にキャリアを重ねていった。この時代は、主にテレビ収録やハウスショーのアンダーカードに多く出場。J・J・ディロンをマネージャーに迎え、サンダーフットという覆面レスラーに扮した時期もあったという。

転機が訪れたのは1987年8月。ジョー・ディートンとして全日本プロレスに初来日を果たす。日本のプロレス中継ディレクター、村上和彦氏が彼を「いい奴」というキャラクターで紹介したことが功を奏し、たちまち人気を獲得。以降、全日本プロレスへの参戦回数は増加していった。

1991年7月18日には、ビリー・ブラックと組んで小橋健太&ジョニー・エースを破り、アジアタッグ王座を獲得。世界最強タッグ決定リーグ戦にも1990年から連続出場を果たすなど、日本マットにおいても確固たる地位を築き上げた。1990年代半ばには、悪役商会と共闘する機会が増え、永源遙と同じピンクのタイツを着用したり、ラッシャー木村とマイクバトルを繰り広げたりと、外国人レスラーとしては異色の活躍を見せた。

1997年7月にWARへ参戦したのを最後に来日機会は途絶え、アメリカではセミリタイア状態となった。しかし、2019年2月19日、ジャイアント馬場没後20年追善興行において、実に22年ぶりに日本マットへ帰ってきた。バトルロイヤルへの参加や、アブドーラ・ザ・ブッチャーの引退式での車椅子介助など、ファンを沸かせた。ちなみに、ブッチャーとは全日本プロレス参戦以前の1985年にもNWAミッドアトランティック地区でタッグを組み、ロックンロール・エクスプレスが保持するNWA世界タッグ王座に挑戦した経験を持つ。

得意技はブレーンバスターやブルドッグなど。獲得タイトルはアジアタッグ王座1回（w/ビリー・ブラック）。

ジョー・ディートン。その名は、日本のプロレス史に確かに刻まれている。長く日本のマットで活躍し、多くのファンを魅了した彼のプロレス人生は、多くのプロレスファンに記憶され続けているだろう。

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