スイス・コテージ駅 (メトロポリタン線)

スイス・コテージ駅：ロンドン地下鉄の忘れられた駅

ロンドン地下鉄の歴史には、現在使われていない多くの駅が存在します。その一つが、メトロポリタン線にあったスイス・コテージ駅です。1868年、メトロポリタン鉄道（現在のメトロポリタン線）のベーカー・ストリート駅から北へ伸びる支線として開業しました。当初はメトロポリタン＆セント・ジョンズ・ウッド鉄道の北の終着駅でしたが、1879年以降はミドルセックス、ハートフォードシャー、バッキンガムシャーへと路線が延伸され、ワトフォード、アイルスベリー、チェシャム、ウクスブリッジへと繋がりました。

しかし、スイス・コテージ駅は長く営業を続けることはありませんでした。1930年代半ば、メトロポリタン線の各支線からベーカー・ストリート駅に集中する列車の本数は限界に達していました。この問題を解決するため、ベーカー・ストリート駅からフィンチリー・ロード駅まで新しいトンネルが建設されることになりました。この新線は、ベーカールー線のトンネルを利用してシールド工法で掘削されました。

1939年11月20日、メトロポリタン線スタンモア支線の機能はベーカールー線スタンモア支線に移管されました。これにより、ベーカー・ストリート駅への乗客の集中が緩和され、メトロポリタン線を通過する列車の本数が減少しました。

興味深いことに、新しいベーカールー線スタンモア支線には、既存のスイス・コテージ駅に隣接して新しい駅が作られました。一つの駅舎にメトロポリタン線が1番線と2番線を、ベーカールー線が3番線と4番線を使い共用する形となりました。しかし、この状態は長く続きませんでした。第二次世界大戦中の戦時経済の影響を受け、スイス・コテージ駅のメトロポリタン線部分は1940年8月17日に廃止されてしまったのです。

その後、1979年にはジュビリー線が延伸され、ベーカールー線スタンモア支線はジュビリー線の一部となりました。スイス・コテージ駅は、ロンドン地下鉄のネットワークの中で、その役割を終え、歴史の中に消えていったのです。

スイス・コテージ駅の廃止は、メトロポリタン線の路線構造、そしてロンドン地下鉄の輸送力向上のための戦略的決断の過程を示す重要な出来事でした。この駅の廃止は、他の路線の駅にも影響を与え、例えばローズ駅やマールボロ・ロード駅なども同様に廃止されています。これらの駅は、ロンドン地下鉄の近代化と効率化の過程における犠牲となったと言えるでしょう。スイス・コテージ駅の短い歴史は、ロンドン地下鉄の進化と変遷、そして時代の流れを象徴する、一つの物語として残されています。

現在では、スイス・コテージ駅は廃駅となり、その姿を見ることはできません。しかし、その存在は、ロンドン地下鉄の歴史を語る上で重要な要素であり、かつてこの地にあった活気ある駅舎の姿を想像してみるのも、ロンドンの歴史を学ぶ上で興味深い体験となるでしょう。

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