ベーカールー線

ベーカールー線：ロンドンの地下を走る茶色のライン

ロンドン地下鉄の路線の一つ、ベーカールー線は、路線図上で茶色で示される路線です。南東部のエレファント＆キャッスル駅から北西部のハーロウ＆ウィールドストーン駅までを結び、地下区間と地上区間から成り立っています。全25駅中15駅が地下に位置し、乗客数ではロンドン地下鉄7位を誇る、ロンドン市民にとって欠かせない交通手段となっています。各駅のホーム長は110メートルと、ゆったりとした設計も特徴です。

歴史：波乱に満ちた開業と幾度かの延伸

ベーカールー線は、当初「ベーカーストリート・アンド・ウォータールー鉄道」として1906年3月に開業しました。当初はベーカーストリートからランベス・ノース（後にケニントン・ロードと改称）間でしたが、同年8月にはエレファント＆キャッスル駅まで延伸されました。その後、一般的に「ベーカールー」と呼ばれていたことから、同年7月には正式名称もベーカールー線に変更されています。

開業以前には、資金提供者であるワイテイカー・ライトの違法行為と衝撃的な自殺という暗い影がありました。この事件で工事が一時中断したものの、チャールズ・ヤークスらの介入により再開され、1913年にはベイカーストリート駅からパディントン駅まで延伸されました。

1915年にはクイーンズパーク駅まで延伸され、ロンドン・アンド・ノース・ウェスタン鉄道（LNWR）のワットフォード方面の路線と接続、ワットフォード・ジャンクション駅までの直通運転を開始しました。しかし、1982年にはストーンブリッジパーク駅より北への直通運転が廃止されました。その後、段階的に再開され、1989年には終日運行となりました。現在もユーストン駅からのロンドン・オーバーグラウンドと一部線路を共有しています。

1930年代には、メトロポリタン線の混雑緩和策として、「ニュー・ワークス・プログラム」の一環で、ベーカーストリート駅からフィンチリー・ロード駅まで新たなトンネルが建設されました。これにより、ベーカールー線は1939年にメトロポリタン線のスタンモア駅までの運行を引き継ぎ、スタンモア支線が開業しました。この支線は1979年にジュビリー線として分離されました。

また、エレファント＆キャッスル駅からキャンバーウェル、デンマーク・ヒルへの延伸計画もありましたが、第二次世界大戦やその後も実現には至らず、現在も計画段階にとどまっています。

給電：開業当初の特異なシステム

ベーカールー線は開業当初、ディストリクト線と電源を共有していました。漏電問題対策として、他の路線とは逆の極性（外側レールがマイナス、中央レールがプラス）の給電システムを採用していました。しかし、1917年にLNWRが新線を開通させたことで、給電が分離され、極性も通常に戻されました。

100周年と将来計画：ワットフォード延伸とキャンバーウェル延伸の可能性

2006年に開業100周年を迎えました。将来計画としては、1982年に廃止されたワットフォード・ジャンクション駅までの区間を2026年までに再延伸することが計画されています。また、長らく計画されていたキャンバーウェル延伸計画も、ロンドン市長ケン・リヴィングストーンによって改めて言及され、注目されていますが、実現の可否はまだ不透明です。

車両：時代の変遷を映す車両たち

開業当初は1906形電車が使用され、その後も時代に合わせて様々な車両が導入されました。1972形電車はジュビリー線への転属を経て、現在もベーカールー線で活躍しており、2033年の置き換えが予定されています。車両はロンドン地下鉄標準塗装で統一され、小型車両が使用されています。内装は1990年代に更新され、座席も青系のものとなっています。

駅と車両基地：路線網と車両の維持管理

ベーカールー線には、ストーンブリッジ・パーク、ロンドン・ロード、クイーンズパークの3つの車両基地があります。特にストーンブリッジ・パーク車両基地は規模が大きく、保守施設も併設されています。クイーンズパーク車両基地は営業列車が通過する珍しい基地としても知られています。

まとめ

ベーカールー線は、ロンドン地下鉄の中でも歴史と変遷に富む路線です。開業以来、幾度かの延伸や車両の入れ替えを経て、現在もロンドンの交通を支えています。今後の延伸計画も注目され、その進化は今後も続きそうです。

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