スカイテラス南山

スカイテラス南山：多摩丘陵の変遷と新たな街づくり

スカイテラス南山は、東京都稲城市の南端に位置する丘陵地帯で展開されている、民間の宅地開発事業の名称です。この地域は、多摩都市計画事業の一環として「稲城南山東部土地区画整理事業」によって開発が進められています。事業地区全体が「スカイテラス南山」と名付けられ、新たな住宅地として生まれ変わりつつあります。

南山の歴史と変遷

南山とは、この開発事業が行われている山林の通称で、その全域が私有地です。多摩丘陵の北部では珍しく、近年まで宅地化されずに残った里山でしたが、土地区画整理事業によって、住宅地、霊園、商業施設、道路へと姿を変えようとしています。

江戸時代から現代へ

事業地区は、稲城市大字矢野口、東長沼、百村にまたがる地域です。かつては里山として利用されていましたが、江戸時代末期には禿げ山に近い状態でした。戦中から戦後にかけては、木々が伐採され農地として利用されました。高度成長期には、「稲城砂」と呼ばれる砂が建設資材として大量に採取され、丘陵の地形が大きく変化し、崖地となりました。急峻な地形と北向きの斜面は農地としては魅力に欠け、戦後の食糧難が落ち着くと、農地の多くは耕作放棄され、粗大ゴミや不法投棄の場所と化していました。

丘陵の南部は、よみうりランドが所有し、ゴルフ場やサーキットが建設されました。一方、現在の稲城駅周辺は「亀山」と呼ばれ、中世には山城が築かれていました。

宗教施設と歴史的遺産

東部には、日本山妙法寺やありがた山の石仏群、西部には妙見寺や同寺奥ノ院などの宗教施設も存在しています。これらの歴史的な遺産は、この地域の歴史を物語る重要な要素です。

区画整理事業の概要

この事業は、南山東部土地区画整理組合が施行主体となり、2006年に設立が認可されました。事業の計画変更や都市計画施設の決定を経て、2025年3月31日までの期間で、約87.5ヘクタールの土地を対象に開発が進められています。総事業費は約576億円で、組合員数は308人に及びます。

都市計画施設

事業区域内には、複数の都市計画道路、公園、緑地が整備されます。これらの施設は、住民の生活を支えるインフラとして重要な役割を果たします。

事業の歴史と反対運動

1970年代には、日本住宅公団が南山地区を多摩ニュータウンに含めることを検討しましたが、地権者らの反対により中止となりました。その後、バブル経済の崩壊などを経て、2006年に土地区画整理組合が設立され、開発が開始されました。しかし、この事業に対しては、市民団体による根強い反対運動が展開されました。

「南山の自然を守る会」の活動

「南山の自然を守る会」は、開発計画に反対し、緑地保全を訴えました。市民や市議会議員を交えた「南山懇談会」を開催し、署名活動や陳情を行いました。

「里山コモンズ案」の登場

反対運動の結果、宅地開発と緑地保全を両立させる「里山コモンズ案」が提案されました。この案は、住宅地の中に緑地を組み込み、自然との共生を目指すものです。石川良一市長もこの案を支持し、2007年の市長選で推進を公約に掲げました。

新たな反対運動の盛り上がり

2005年には、新たな市民団体「稲城の里山と史蹟を守る会」が結成され、反対運動をさらに活発化させました。メディアもこの問題を取り上げ、開発反対運動は大きな広がりを見せました。

第1期工事着工

2009年5月、反対運動が続く中で、第1期工事が着工されました。市や都は事業を支持する姿勢を示し、反対派との対立が深まりました。市民団体は都議会への陳情も行いましたが、最終的に不採択となりました。

反対運動の失速

反対運動は徐々に勢いを失い、「南山問題市民連絡会」は区画整理事業阻止を断念しました。2011年の統一地方選では、反対派の市議が大幅に議席を減らし、市政における反対運動の勢力は大きく減退しました。

TOKYO GIANTS TOWN構想

2016年、読売巨人軍が当地区内に2軍の新球場を建設する「TOKYO GIANTS TOWN」構想が発表され、新たな展開を見せています。

主な論点

区画整理事業を巡っては、補助金支出、環境アセスメント、工事の進め方、土壌問題など、様々な論点が議論されてきました。

補助金支出への批判

「稲城の里山と史蹟を守る会」は、市の補助金支出を批判しましたが、「南山の自然を守る会」は、公共施設の整備という観点から補助金を支持しています。

環境アセスメントのやり直し要求

工法の変更を理由に、環境アセスメントのやり直しを求める声も上がりました。

区画整理事業の進め方についての議論

ダンプカーの通行問題、稲城砂層の危険性、府中市との共同墓苑計画などについても議論が行われました。

市民からの提案

市民からは、里山コモンズ、南山スポーツ広場跡地の保全案、南山縄文の森など、様々な提案がなされました。これらの提案は、開発と自然保護の両立を目指すものです。

里山コモンズ

里山コモンズは、「南山の自然を守り育てる会」が提唱するもので、住宅地内に共有地を設け、里山として保全するものです。

南山縄文の森

「稲城の里山と史蹟を守る会」は、南山東部地区を遺跡公園とする「南山縄文の森」構想を提唱しました。

脅迫事件

開発反対の立場から、市長宛に脅迫メールが送られる事件も発生しました。

主な施設

スカイテラス南山には、複合施設、商業施設、住宅、公園、教育機関、霊園、医療機関、寺社などが整備されています。

複合施設

• - TOKYO GIANTS TOWN

商業施設

• - ヤオコー稲城南山店

住宅

• - プラウドシーズン稲城南山
• - プラウドシティ南山
• - ファインコート稲城南山

公園

• - 奥畑谷戸公園

教育機関

• - 稲城市立南山小学校

霊園

• - 公営 稲城・府中メモリアルパーク

医療機関

• - 南山リハビリテーション病院

寺社

• - 日本山妙法寺
• - 妙覚寺

交通

鉄道

• - 京王相模原線

- 京王よみうりランド駅
- 稲城駅

バス

• - 小田急バス

スカイテラス南山は、多摩丘陵の自然と歴史が交錯する場所で、新たな街づくりが進められている場所です。開発を巡る様々な意見が交錯する中で、自然との共生を目指す試みが続いています。

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