ステゴウロス

ステゴウロス：南米のユニークな装盾類

ステゴウロス（Stegouros elengassen）は、後期白亜紀（約7490万～7170万年前）のチリに生息していた曲竜類の恐竜です。属名は「屋根の尾」を意味し、その名の通り、尾の独特な構造に由来します。2018年にチリ南部のマガジャネス州で化石が発見され、2021年に新属新種として記載されました。

発見と命名

ステゴウロスの化石は、2018年2月にチリのRío de las Chinas渓谷で発見されました。この地域は、かつてゴンドワナ大陸の一部だったパタゴニア地方に位置します。化石を研究したSergio Soto-Acuñaらのチームは、そのユニークな特徴から新属新種と判断し、ステゴウロス・エレンガッセンと命名しました。

属名は、ギリシア語の「stegos（屋根）」と「oura（尾）」を組み合わせたもので、尾を覆う屋根のような構造を表しています。種小名の「elengassen」は、化石が発見された地域に伝わる先住民族アオニケンクの神話に登場する、鎧をまとった生物に由来します。

ホロタイプ標本CPAP-3165は、上部カンパニアン階のDorotea層から産出しました。この標本は、頭蓋骨と下顎を含むほぼ完全な骨格で、成体のものと考えられています。

特徴

ステゴウロスは、体高60cm未満、全長約2mと、比較的小型の曲竜類です。最大の特徴は、その独特な尾の構造にあります。他の既知の曲竜類とは異なり、ステゴウロスの尾は短く、尾椎の数は26個以下です。尾の後部には、7対の平板状の皮骨板が重なり合って癒合しており、シダ植物の葉を彷彿とさせる独特の形状をしています。

他の恐竜との比較

ステゴウロスは、近縁なアンタークトペルタといくつかの点で区別されます。ステゴウロスはアンタークトペルタよりも小型で、神経孔が大きく、胴仙椎が長く、仙椎の椎体がより高く狭いです。また、歯の鋸歯の数や歯帯の形状も異なります。クンバラサウルスとの違いとしては、尺骨と橈骨が湾曲していること、上顎骨の背側突起が狭く後傾していることなどが挙げられます。

骨格の特徴

ステゴウロスの頭部は、保存状態があまり良くありませんが、体に対して大きいと考えられます。前上顎骨には歯がなく、短く、高く、狭いです。上顎骨は涙骨と癒合しており、二次的な郊外を形成する内部の枝があります。下顎の前歯骨は短く高く、上側の枝が下側の枝よりも長いです。歯骨歯は14本あり、葉状で高く、非対称な外観をしています。

頸椎は短く、椎体は長さと幅がほぼ同じです。仙骨には4個の仙椎と2個の胴仙椎が含まれます。上腕骨は細長いシャフトを持ち、先端部は横方向に拡大しています。橈骨は細長く、尺骨は肘頭が発達しています。手の爪は蹄状で、第2指は指骨2本に短縮しています。腸骨は水平方向に長く、前側のブレードが前側と側方に湾曲しています。坐骨は長く、遠位端で癒合していません。大腿骨は脛骨よりもわずかに長く、真っ直ぐです。足幅は狭く、第3趾と第4趾の末節骨は平坦な円盤状です。

皮骨板

ステゴウロスの皮骨板は、頭部では発見されていません。体には、楕円形やキール状の中型の皮骨板が8個発見されており、脇腹を保護していたと考えられます。尾の付け根には、円錐形の小さな皮骨板が2対あります。そして、ステゴウロスの最大の特徴である尾の武装は、7対の平板状の皮骨板から構成されており、尾の先端を覆う長く伸びた構造を形成しています。この構造は、アステカのメイスであるmaquahuitlに例えられています。

分類

ステゴウロスは、ゴンドワナ大陸南部の白亜系から知られる小型曲竜類の系統に位置付けられています。この系統には、オーストラリアのクンバラサウルスや南極のアンタークトペルタが含まれます。これらの恐竜は、アンキロサウルス科やノドサウルス科よりも前に分岐したパラアンキロサウルス類と呼ばれています。

古環境

ステゴウロスの化石が産出したDorotea層は、カンパニアン期からマーストリヒチアン期にあたる地層で、両生類、哺乳類、魚類、爬虫類、無脊椎動物など、多様な生物の化石が発見されています。恐竜としては、ハドロサウルス類のGonkokenや、未同定の竜脚類、獣脚類、鳥盤類が知られています。

ステゴウロスの発見は、曲竜類の進化史において重要な意味を持ちます。真アンキロサウルス類と分岐してマーストリヒチアン期まで生存したパラアンキロサウルス類という、曲竜類の新たな系統の存在を示唆しています。また、尾の独特な武装は、アンキロサウルス科の棍棒と収斂進化によって生まれた可能性も示唆されています。

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