ストア・ポイキレ

ストア・ポイキレ（Ποικίλη στοά）は、古代ギリシャのアテネのアゴラに存在した柱廊建築です。日本語では「彩色柱廊」とも呼ばれます。紀元前5世紀、アテネのアゴラの北端に建設され、その歴史の中で重要な役割を果たしました。

ストア・ポイキレは、古代ギリシャで最も有名な場所の一つでした。柱廊内には戦争をテーマにした絵画や戦利品が飾られ、アテネ市民の誇りを示す場でした。また、哲学者ゼノンがここで教えを説いたことから、ストア派哲学の誕生の地としても知られています。近年の発掘調査から、外側の列柱はドーリア式、内側はイオニア式の円柱で構成されていたことが判明しています。

建設後約600年間は、修復を重ねながら良好な状態を保っていたと考えられています。しかし、267年のヘルール族の侵入により、展示品は略奪されました。396年頃には、ローマ帝国の属州総督によって絵画が撤去され、その後、建物自体も解体され、石材はアテネの城壁などの建設資材として利用されました。

1981年の考古学調査では、ストア・ポイキレがゼウスのストアとほぼ同じ大きさであったことが明らかになりました。ストア内には、『オイノエ』、『アマゾノマキア』、『トロイアの陥落』、『マラトノマキア』の4枚の絵画が展示されていました。これらの絵画は、ストアの建設後まもなく描かれ、ペイシアナクテイオス＝ストアと呼ばれていた柱廊は、ポイキリ＝ストア（絵画のある柱廊）として知られるようになりました。

これらの絵画は現存していませんが、2世紀の地理学者パウサニアスが著した『ギリシア案内記』によって、その内容を知ることができます。絵画は、ストア建築と同時代の戦いや英雄時代の戦いを題材とし、アテネの勝利を称えるとともに、勝利に際しての慎重な振る舞いを促す警告としての意味合いも持っていたとされています。ペロポネソス戦争後には、スパルタ兵から得た盾が展示されるようになり、ストアは勝利の殿堂としての性格を強めていきました。

展示されていた絵画の内容は以下の通りです。

オイノエ: アテネ軍がスパルタ軍を破ったオイノエの戦い、またはアテネ軍と同盟軍の合流を描いたものとされます。パウサニアスは、戦いの最高潮ではなく、戦闘が開始され、武器を手にした兵士たちが接触する様子が描かれていたと記述しています。
アマゾノマキア: アマゾン族とアテネ軍の神話上の戦いを描いたものとされています。パウサニアスは、テセウス率いるアテネ軍がアマゾン族と戦っている様子が描かれていたと記しています。
トロイアの陥落: トロイア戦争の神話に基づいて、小アイアスのカッサンドラ凌辱事件後の協議の様子が描かれたものとされます。パウサニアスは、捕虜となった女性たちやカッサンドラ、アイアスと王たちが描かれていたと述べています。
マラトノマキア: マラトンの戦いを描いたものとされます。パウサニアスは、プラタイアのボイオティア軍とアッティカ軍が、ペルシア軍と戦っている様子が描かれていたと記しています。

ストア・ポイキレには、5枚目の絵画として『嘆願するヘラクレスの子供たち』が存在したとする説もありますが、多くの研究者は、この絵画がこの場所に展示されていたとは考えていません。

ストア・ポイキレは、アテネ地下鉄のモナスティラキ駅から西へ約300メートルの場所に位置しており、アテナイのアゴラ内にあります。アテネ地下鉄1号線の線路沿いに位置しています。

関連項目

アテナイのアゴラ
ストア派哲学

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