スヌーク (潜水艦)

ガトー級潜水艦「スヌーク」(SS-279) の戦歴と悲劇的な最期

第二次世界大戦において、アメリカ海軍は多数の潜水艦を太平洋戦線に投入しました。その中で、ガトー級潜水艦「スヌーク」(USS Snook, SS-279) は、その卓越した戦果と、謎に満ちた最期によって、特筆すべき存在となっています。本稿では「スヌーク」の艦歴、そしてその悲劇的な終焉について、詳細に見ていきます。

艦の誕生と初期の活動

「スヌーク」は、1942年4月17日にメイン州キタリーのポーツマス海軍造船所で起工されました。艦名は、大型魚であるスヌークに由来します。1942年8月15日に進水、同年10月24日、チャールズ・O・トライベル少佐の指揮下で就役しました。ニューイングランド沖での訓練を経て、1943年3月、太平洋へ向けて出航、真珠湾に寄港した後、最初の哨戒任務に就きました。

激戦の記録：7度の哨戒

「スヌーク」は、1944年5月までの2年間に渡り、7度の哨戒任務を遂行しました。その間、東シナ海、黄海、南西諸島、小笠原諸島、トラック諸島など、日本の勢力圏の広範囲を航行し、数々の日本軍艦船を撃沈しました。

第1～3次哨戒: 初期の哨戒では、主に中国沿岸や東シナ海で日本海軍の輸送船を攻撃し、数々の撃沈、損傷を記録しました。大連沖での輸送船2隻の撃沈、奄美大島近海での特務艦「大瀬」への攻撃などがその代表例です。

第4次哨戒: この哨戒では、「ハーダー」「パーゴ」と共にウルフパックを形成し、マリアナ諸島方面でトラック諸島へ向かう日本軍輸送船団を攻撃、特設運送船「山福丸」と海軍徴傭船「志賀の浦丸」を撃沈しました。

第5次哨戒: 小笠原諸島、草垣群島、対馬海峡など、広範囲で日本軍艦船を攻撃し、特設砲艦「まがね丸」、陸軍輸送船「りま丸」、「白根山丸」、輸送船「日徳丸」「鴎丸」「香洋丸」を撃沈しました。この哨戒の後、艦長がジョージ・H・ブローン少佐に交代しています。

第6次哨戒: 日本近海で哨戒任務に就き、6,000トン級輸送船1隻を撃沈しました。

第7次哨戒: 「コビア」「ポンフレット」と共にウルフパックを形成、ルソン海峡方面でマタ30船団を攻撃しました。「スヌーク」は、タンカー「菊水丸」を含む複数の輸送船を撃沈したとされています。しかし、この哨戒における「スヌーク」の戦果報告には、日本側の記録との食い違いがあり、現在でも議論の余地が残されています。 この哨戒の後、艦長はジョン・F・ウォーリング中佐に交代しました。

第8次哨戒: 千島列島方面での哨戒では、目立った戦果は挙げられませんでした。

謎に包まれた最期：第9次哨戒と消息不明

1945年3月、9回目の哨戒任務に就いた「スヌーク」は、東シナ海に向かいましたが、出撃直後に故障が発生し、一時帰港を余儀なくされました。その後、再出撃した「スヌーク」は、気象情報送信やパイロット救助任務に従事した後、ルソン海峡方面に向かったと推測されています。しかし、4月20日以降、「スヌーク」からの連絡は途絶え、5月16日、戦没したものと認定されました。乗員84名全員が戦死したとされます。

「スヌーク」の喪失原因は未だに不明です。日本側の記録から、4月上旬から中旬にかけて、舟山列島付近で日本軍機の攻撃や海防艦による攻撃を受けている可能性が示唆されていますが、確証はありません。アメリカ側の記録もあいまいな部分が多く、その詳細な状況は、未だに謎に包まれています。

戦功とその後

「スヌーク」は2年半の活動期間中、17隻の敵艦を撃沈し、7個の従軍星章を受章しました。その戦功は、アメリカ海軍におけるガトー級潜水艦の活躍を象徴するものです。戦後、1958年にはスキップジャック級原子力潜水艦として、2代目の「スヌーク」(SSN-592) が就役しました。初代「スヌーク」の戦功と悲劇的な最期は、太平洋戦争におけるアメリカ海軍の潜水艦戦史において、重要な一章を飾っています。その謎めいた最期は、今もなお、多くの研究者や歴史愛好家の関心を集め続けています。

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