スピコメルス

スピコメルス (Spicomellus) - 最古の曲竜類

スピコメルス（学名: Spicomellus、「スパイクの首輪」の意味）は、モロッコのエル・メルス層群（バトニアン-カロビアン）から発見された絶滅した原始的な曲竜類恐竜の属です。本属は、癒合した皮骨板を持つ単一の肋骨から知られるスピコメルス・アフェル（Spicomellus afer）一種のみを含みます。スピコメルスは、命名された最古の曲竜類として知られています。

発見と命名

スピコメルスのホロタイプ標本 NHMUK PV R37412 は、モロッコのフェズ＝メクネス地方、ブラファ近郊のエル・メルス層群で発見されました。この標本はディーラーを通じてロンドン自然史博物館に譲渡されました。標本は、4本の骨化した棘を持つ1本の肋骨で構成されています。ホロタイプはコンピュータ断層撮影され、組織学的に分析され、曲竜類の特徴が確認されました。

2021年、スザンナ・メイドメントらの研究チームによって、スピコメルス・アファーは新属新種の装盾類曲竜類として記載されました。属名の Spicomellus は、ラテン語で「スパイク」を意味する "spicus" と「首輪」や「襟」を意味する "mellus" を組み合わせたものです。種小名の afer は、ラテン語で「アフリカに生息するもの」を意味します。

ジュラ紀のローラシア大陸からは多様な装盾類が発見されていますが、ゴンドワナ大陸からの化石記録は稀です。スピコメルスは、アドラティクリットに次いで北アフリカで2番目に記載された装盾類です。

概要

ホロタイプの皮骨板の棘は骨に直接癒合しており、これはスピコメルスに独特の特徴であり、他の脊椎動物では知られていません。プロトゥベルム（キノドン類）やエウスコロスクス（偽鰐類）などの先史時代の動物にも、表面上類似した変形した肋骨が見られます。しかし、他の既知の曲竜類とは異なり、スピコメルスの皮骨板は骨と癒合しておらず、筋肉組織に埋め込まれていたと考えられています。全長は約3メートルと推定されています。

分類

ホロタイプの予備的な評価では、剣竜類との関係性が示唆されました。しかし、2021年にメイドメントらは、スピコメルスを原始的な曲竜類とする根拠となるいくつかの証拠を提示しました。肋骨が実際には顎の一部である可能性も考慮されましたが、魚類の歯の主要な構成要素である象牙質の証拠がないため、この説は支持されていません。肋骨のT字型の断面から、スピコメルスは装盾類に分類されました。さらに、皮骨板の構造繊維は合板のように絡み合っており、これは曲竜類の特徴ですが、他の装盾類では見られません。

スピコメルスは、現在知られている中で最古の曲竜類です。カロビアン期のサルコレステスは、イングランドのオックスフォード粘土層から下顎の一部が発見されています。スコットランド、スカイ島のバッジョシアンのベアレレイグ砂岩層から発見された未命名の装盾類はスピコメルスよりも古い可能性がありますが、これらの断片的な化石が剣竜類のものか曲竜類のものかは不明です。

古生態学

スピコメルスは、中期ジュラ紀にゴンドワナ大陸の一部であったモロッコのエル・メルス層群から知られています。スピコメルスは、竜脚類の "ケティオサウルス"・モグレビエンシス、剣竜類のアドラティクリット、ティレオフォロスと共存していました。この生態系の捕食者は、不確定な獣脚類（おそらくメガロサウルス科）で構成されていました。竜脚類のアトラサウルスも、同時代のゲティワ層から発見されています。

スピコメルスの発見は、2つの主要な装盾類（曲竜類と剣竜類）が2000万年以上共存していたことを示唆しており、前期白亜紀の剣竜類の絶滅は、当時の曲竜類の多様性の増加以外の理由で起こった可能性を示唆しています。

この地域の堆積学と地層学の研究では、大陸の混合砕屑岩、蒸発岩、炭酸塩岩を含む浅海堆積環境が示唆されています。

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