蒸発岩

蒸発岩：乾燥気候と地殻変動の痕跡

蒸発岩は、かつて湖沼や海などの水域が存在し、水が蒸発することで水中に溶けていた鉱物が析出して固まった堆積岩です。特に、水の供給が限られる塩[[湖]]において、蒸発作用が繰り返し起こることで大量の蒸発岩が形成されます。

蒸発岩を構成する鉱物

蒸発岩を構成する主な鉱物としては、岩塩（塩化ナトリウム）と石膏（硫酸カルシウム）が挙げられます。これ以外にも、カリウム塩、苦灰岩、重晶石などが含まれることもあります。これらの鉱物の種類や比率は、元の湖沼の水質や蒸発の過程によって異なります。

蒸発岩の生成環境

蒸発岩は、乾燥した気候条件下で形成されます。降水量が少なく、蒸発量が大きい環境では、湖沼や海の水位が低下し、水中の塩分濃度が高まります。塩分濃度が飽和に達すると、溶解度が低い鉱物から順に析出し始め、最終的に蒸発岩層を形成します。そのため、蒸発岩の存在は、過去の乾燥気候を示す重要な手がかりとなります。

岩塩ドームと資源

岩塩は、地質学的時間スケールにおいて塑性変形を示す性質を持っています。そのため、堆積後に地層の上部から圧力がかかると、岩塩は塑性流動し、ドーム状の構造（岩塩ドーム）を形成することがあります。この岩塩ドームは、石油や天然ガスの貯留層となる場合があります。岩塩の低い密度と高い塑性のため、周囲の岩石層よりも上昇しやすく、その上に堆積した地層を折り曲げることがあります。

地殻変動の解明

蒸発岩は、地殻変動を推定する上で重要な役割を果たします。例えば、地中海地域では、600～500万年前の地層から大量の蒸発岩（岩塩、石膏、苦灰岩など）が見つかっています。これは、地殻変動によって地中海が一時的に干上がったり、塩[[湖]]になったりしたことを示唆しています。この現象は「メッシニアン塩分危機」と呼ばれ、地中海の形成史を考える上で重要な出来事と考えられています。その後、ジブラルタル海峡付近の地殻の低下によって海水が流入し、現在のような地中海が形成されたという学説が有力です。

カラ・ボガス・ゴル湾の例

カスピ海南東部のカラ・ボガス・ゴル湾では、現在も塩化ナトリウムや硫酸カルシウムなどの蒸発岩が活発に沈殿しています。この湾は、カスピ海から分離された浅い水域であり、蒸発量が非常に大きいため、高濃度の塩水となっています。この湾は、現代における蒸発岩形成のプロセスを観察できる貴重な場所となっています。

まとめ

蒸発岩は、乾燥気候や地殻変動といった地球史における重要な出来事を記録した堆積岩です。その構成鉱物、生成環境、地質学的意義を理解することは、地球環境の変遷を解明する上で不可欠です。また、岩塩ドームは、石油や天然ガスなどの資源探査においても重要なターゲットとなっています。今後も、蒸発岩に関する研究は、地球科学の様々な分野に貢献していくでしょう。

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