スペシャルフラッグ

スペシャルフラッグ（英: Special Flag）は、バンダイナムコエンターテインメント（旧ナムコ）が手掛けるゲーム作品を中心に登場する、黄色い三角旗に赤いアルファベットの「S」が描かれた特徴的なデザインを持つキャラクターです。単なるゲーム内のアイテムに留まらず、企業のシンボルとしても重要な位置を占めています。

その起源は1980年に稼働したアーケードゲーム『ラリーX』に遡ります。この当時は「スペシャルチェックポイント」という名称で登場し、これを通過すると以降のターゲットで獲得できるスコアが倍増するという、得点ボーナスをもたらすアイテムでした。翌年のリニューアル版『ニューラリーX』にも引き続き登場しましたが、同時期に登場した「ラッキーチェックポイント」（残燃料に応じてスコアが加算される）に比べてその効果が軽視される傾向にあったとされています。

スペシャルフラッグがゲーム史において革新的な存在となるのは、1983年のシューティングゲーム『ゼビウス』においてです。この作品で初めて「隠れキャラクター」という概念が導入され、スペシャルフラッグはそのパイオニア的存在として、特定の場所に隠された「スペシャルフラッグ」を取得することで、プレイヤーの残機が一つ増える（設定により10000点ボーナスに変更可能）という、非常に価値の高い効果を持つアイテムとして登場しました。『ゼビウス』は隠し要素の楽しさをプレイヤーに広く認知させたタイトルであり、スペシャルフラッグはその象徴となりました。

『ゼビウス』の開発者である遠藤雅伸氏は、このスペシャルフラッグを隠しキャラクターとして導入し、プレイヤーの残機を増やすアイテムとした意図について、いくつかの理由を説明しています。一つには、ピンボールゲームに見られるエクストラの仕様を取り入れたかったこと。二つ目には、アイテムをそのまま登場させるとプレイヤーのプレイ時間が延び、結果としてゲームセンターの売上低下につながるため、意図的に隠すことで出現頻度を調整したこと。三つ目として、当時まだ斬新だった「隠れキャラクター」という概念が社内で否定されたとしても、違和感のあるキャラクターであればバグだと主張して押し通せる保険にしたこと。そして最後に、『ニューラリーX』でスペシャルチェックポイントが軽視された経験から、敢えてこれを重要なアイテムとして復活させたことなどが挙げられています。

『ゼビウス』以降、スペシャルフラッグは同年に稼働した『リブルラブル』をはじめ、多くのナムコ（後にバンダイナムコエンターテインメント）作品に、主にプレイヤーの残機が増えるアイテムとして登場し、定番化しました。直接登場しない場合でも、『グロブダー』でハイスコア更新時に類似の効果音が使われたり、『レイブレーサー』のミニゲームでアイコンとして表示されたりと、様々な形でその存在感を示しています。2015年以降の「カタログIPオープン化プロジェクト」を通じて、許諾を受けた他社のゲームタイトルにも登場する機会が生まれており、パチスロや最新のパズルゲームなど、多岐にわたるメディアに進出しています。

ゲーム内だけに留まらず、スペシャルフラッグはバンダイナムコエンターテインメントのシンボルとして、様々なメディア展開も行われています。過去にはプライズゲームの景品としてキーホルダーやTシャツに使用されたり、『ナムコヒストリーVOL.2』のノベルティとして純銀製ピンズが制作されたりしました。キーホルダーやプレートチェーンといったグッズとしても展開され、2019年にオープンしたVRテーマパーク「MAZARIA」では、カフェバーの名称とそのロゴに採用されるなど、企業のアイデンティティを象徴する存在として活用されています。

また、2011年には電通と共同で、ゲーム開発で培われたノウハウを他の分野に応用する「ゲームメソッドコンサルティングサービス」が発表され、そのサービス名に「SPECIAL FLAG」の名前とキャラクターが使用されました。これは、スペシャルフラッグが「クリエイターの遊び心から生まれ、ゲームに付加価値をもたらした」ように、ゲームの知見を日常生活やビジネスに応用することで新たな価値を生み出すというコンセプトを体現するものでした。NTT東日本やクラシエフーズなどでの導入実績がありましたが、残念ながら2015年頃を最後に事業の公式サイトは更新されなくなり、後に閉鎖されました。

このように、スペシャルフラッグは『ラリーX』での得点アイテムから始まり、『ゼビウス』で隠れキャラクターの概念を確立する重要なアイコンとなり、今日ではバンダイナムコエンターテインメントの歴史や遊び心、そして革新性を象徴する存在として、ゲームの内外で広く親しまれています。

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