スペースX CRS-22

スペースX CRS-22ミッションは、2021年6月3日、国際宇宙ステーション（ISS）への商業補給サービス（CRS）として実施されました。NASAとの契約に基づきスペースXが運用するカーゴドラゴン宇宙船が使用され、ISSへ重要な物資を輸送し、使用済みの機器などを地球へ持ち帰りました。これは、2016年1月に締結されたNASAのCRSフェイズ2契約下で行われたスペースXによる2回目のISS補給フライトです。

カーゴドラゴンの特徴

本ミッションに用いられたカーゴドラゴンは、有人宇宙船ドラゴン2を基にした貨物専用機です。宇宙飛行士が搭乗する際に必要な緊急脱出システムや座席といった設備を省略することで、貨物搭載能力を高めています。スペースXはカーゴドラゴンの複数回（最大5回）の再利用を目指しており、先行するドラゴン1と比較して、再改修に要する時間を短縮するなど運用効率が向上しています。また、CRSフェイズ2契約では、カーゴドラゴンの着水地点がメキシコ沖の太平洋からフロリダ半島近くのメキシコ湾または大西洋に変更され、回収された貨物と地上輸送の迅速化が実現しています。

打ち上げと軌道投入

CRS-22ミッションは、協定世界時2021年6月3日17時29分15秒にファルコン9ロケットで打ち上げられました。離昇後、ロケットは順調に飛行し、約2分30秒で第1段の燃焼を停止、約4秒後に分離しました。第2段は約2分41秒後に燃焼を開始し、カーゴドラゴンをISSへ向かう軌道に乗せました。分離された第1段は洋上のドローン船への着陸シーケンスを実行し、離昇から約7分52秒後に着艦に成功しました。第2段の燃焼停止は約8分46秒後に行われ、約11分58秒後にカーゴドラゴンは第2段から分離、約12分35秒後にはドッキングポートを保護していたノーズコーンを展開し、ISSへの接近を開始しました。

輸送された貨物

ISSに輸送された貨物の合計質量は3,328キログラムでした。これには、科学研究機器（920 kg）、宇宙船ハードウェア（345 kg）、乗組員補給物資（341 kg）、船外活動装備（52 kg）、コンピューター資材（58 kg）が含まれます。主要な外部貨物（1,380 kg）として、ISSの電力供給を強化するためのISS伸展式太陽電池アレイ（iROSA）の最初の1対が搭載されました。この新しい太陽電池アレイは、より高効率な太陽電池技術（XTJプライム）を採用しており、設置には2回の船外活動（2021年6月16日と6月20日）が行われました。与圧カプセル内には、生命維持システム関連の部品、緊急時用空気供給システム、ロシアモジュールのドッキング支援ハードウェア、飲料水フィルター、空気タンク、低温保管庫「アイスバーグ」など、ISS運用に必要な多様なハードウェアが搭載されました。

軌道上での科学研究

CRS-22ミッションでISSに届けられた実験機器により、様々な科学研究が実施されました。地球での腎臓病治療薬開発や、水・農薬使用量を減らす綿花品種の研究、微小重力下でのポータブル超音波技術の検証などが行われました。また、生物学分野では、ダンゴイカを用いた微生物と宿主の相互作用研究や、クマムシの極限環境適応能力に関する研究が進められました。これらの研究は、医学、農業、生物学など幅広い分野に貢献する可能性があります。学生宇宙飛行実験計画（SSEP）による学生考案の実験や、ISS米国国立研究所主導による商業パートナー（コルゲート・パーモリーブ、イーライリリーなど）による研究も多数行われました。

小型衛星の放出

本ミッションでは、ISSから複数の小型衛星（CubeSat）の放出も計画されていました。NASAのELaNa 37計画によるRamSat、ナノラックス社からのSOAR、そしてUNOOSA/JAXA KiboCUBE計画によるMIR-SAT1とG-SATELLITE 2が輸送され、ISSの「きぼう」モジュールなどから宇宙空間に展開されました。

地球への帰還

ISSでの任務を終えたカーゴドラゴンは、地球への帰還のためドッキングを解除しました。当初、2021年7月6日にISSから分離される予定でしたが、着水予定海域であるフロリダ西岸沖のメキシコ湾に熱帯低気圧/ハリケーン・エルザが接近したため、天候上の懸念からドッキング解除は延期されました。最終的に、カーゴドラゴンは2021年7月10日にISSを離れ、地球大気圏に再突入し、フロリダ西岸近くのメキシコ湾へ無事着水しました。本ミッションでは、合計2,404キログラムの貨物がISSから地球へ持ち帰られました。これには、軌道上で使用済みとなった機器、故障したハードウェア、診断や改修が必要な部品などが含まれます。具体的な帰還貨物として、環境制御・生命維持システム関連の開発試験装置や部品、齧歯類研究飼育器、再利用される空のガス充填タンクなどが含まれていました。これらの機器は地上で評価・整備された後、将来のミッションで再び使用される可能性があります。

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