スペースX CRS-23

SpaceX CRS-23

SpaceX CRS-23は、国際宇宙ステーション（ISS）への商業補給サービスミッションの一つです。アメリカ航空宇宙局（NASA）との契約に基づき、宇宙開発企業のスペースXが実施しました。このミッションでは、同社の再利用可能な無人補給船「カーゴドラゴン C208」が使用され、2021年8月29日に打ち上げられ、翌8月30日にISSにドッキングしました。これは、2016年に締結されたNASAのCRSフェイズ2契約におけるスペースXによる3回目のISSへの貨物輸送フライトにあたります。

このミッションに投入されたカーゴドラゴン C208は、このCRS-23が2回目の宇宙飛行となりました。2021年9月15日から18日頃にかけては、ISSにドッキングしたC208と、宇宙飛行士を運んだCrew-2ミッションのドラゴン「エンデバー」、そして初の民間宇宙飛行ミッションであるインスピレーション4で使用されたドラゴン「レジリエンス」という、3機のドラゴン2宇宙船が同時に地球軌道上に滞在するという珍しい期間がありました。

カーゴドラゴンは、複数回の再利用を前提に設計されており、スペースXは各機体を最大5回まで使用することを目指しています。宇宙飛行士を乗せないため、有人ミッションで必要となるスーパードラコ脱出エンジン、座席、操縦装置、生命維持装置などは搭載していません。ドラゴン2シリーズは、前世代のドラゴン1に比べて、再改修時間の短縮など、運用効率を高めるための改良が施されています。NASAのCRSフェイズ2契約下で運用される新しいカーゴドラゴンは、ミッション完了後、パラシュートを用いてフロリダ沖のメキシコ湾または大西洋に着水し回収されます。

CRS-23ミッションでは、ISSでの研究活動やクルーの生活を支えるために、多岐にわたる貨物が輸送されました。輸送された主な貨物の内訳とその重量は以下の通りです。

科学調査関連機器・資材： 1,046 kg
宇宙ステーションハードウェア： 338 kg
乗組員向けの補給品： 480 kg
船外活動（EVA）用装備： 69 kg
* ロシア製ハードウェア： 24 kg

輸送された科学・技術ペイロードには、注目の実験や技術実証が含まれていました。日本のGITAI Japan社による「GITAI S1ロボットアーム技術実証」はその一つです。これは、微小重力環境下での汎用作業ロボットアームの能力を試験するものです。前回のCRS-21でISSに運ばれ、ナノラックス・ビショップ・エアロック内に設置されていたこのロボットアームは、エアロック内部で工具の操作や簡単な科学実験を行うなど、その多用途性と器用さを実証しました。将来的には、ISS船内外や月面などでの多様な作業への応用が期待されています。

NASAグレン研究センターからは、「対流沸騰および凝集実験（FBCE）」や、「固体燃料の点火および消火（SoFIE）」の支援ハードウェアといった、宇宙空間での流体や燃焼に関する基礎物理学実験に資する装置が届けられました。

若い世代の科学者育成を目指す「学生宇宙飛行実験計画（SSEP）」からは、ミッション14Cと15Bに関連する計5件の科学実験がこのミッションで実施されました。

CRS-23はまた、マルタ共和国にとって初の宇宙実験となる「SpaceOMIX」を運びました。マレス計画の一部として行われたこの実験は、従来の治療に抵抗性のある糖尿病性足潰瘍の皮膚細菌叢を宇宙環境下で調査することを目的としていました。

欧州宇宙機関（ESA）も複数の研究を行いました。「BIOFILMS」実験では、微小重力を含む異なる重力条件下での細菌性バイオフィルム形成と抗菌性を持つ金属表面の有効性が評価されました。ESAの教育プログラム「Orbit Your Thesis!」からは、ベルギーのハッセルト大学チームによる「OSCAR-QUBE」実験装置が搭載され、ISSのICECube施設でダイヤモンド量子ベースの磁力計の性能を実証しました。

これらの主要なペイロードに加え、米国、英国、オーストラリア、日本、フィリピンなど、様々な国の大学や研究機関が開発した複数の小型衛星（CubeSats）もELaNa 37として輸送され、展開されました。これには、PR-CuNaR2、Amber IOD-3、Binar-1、CUAVA-1、CAPSat、Maya-3およびMaya-4、SPACE HAUCなどが含まれます。

SpaceX CRS-23ミッションは、ISSへの不可欠な物流支援を果たすと共に、ロボット技術、基礎科学、生命科学、教育、小型衛星開発など、幅広い分野における国際的な研究開発を促進し、宇宙における活動領域拡大に貢献しました。

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