スペースX CRS-27

SpX-27 (スペースX CRS-27)

SpX-27、またはスペースX CRS-27として知られるこのミッションは、2023年3月15日に打ち上げられた、国際宇宙ステーション（ISS）への重要な商業補給サービス飛行です。本ミッションは、アメリカ航空宇宙局（NASA）との契約に基づき、スペースX社によって実施されました。使用された輸送船はカーゴドラゴンC209で、これはNASAの商業補給サービス契約フェーズ2の下でスペースXが運用する7回目の飛行にあたります。

カーゴドラゴン輸送船

このミッションに用いられたカーゴドラゴンは、最大5回までの再利用が想定されているタイプの輸送船です。有人型のクルードラゴンとは異なり、宇宙飛行士の安全を守るためのスーパー・ドラコ緊急脱出エンジン、座席、操縦装置、生命維持装置などは搭載されていません。これは貨物輸送に特化することで、構造をシンプルにし、再整備時間の短縮と飛行間隔の短縮を実現しています。ミッション終了後、NASAのCRSフェーズ2契約で新たに建造されたカーゴドラゴンカプセルは、フロリダ州東方の大西洋上へ着水しました。

搭載ペイロード

NASAはCRS-27ミッションの主要ペイロード、打ち上げ日時、軌道パラメータなどを決定するためにスペースXと契約を締結しました。輸送された物資は多岐にわたり、その内訳は以下の通りです。

科学調査機器: 約1,200 kg
宇宙船ハードウェア: 約540 kg
乗組員用補給物資: 約910 kg
船外活動用装備: 約170 kg
コンピューター関連資材: 約0 kgから30 kg
外部ペイロード: 約530 kg

外部ペイロード STP-H9

外部ペイロードには、STP-H9と呼ばれる技術実証プラットフォームが含まれていました。これは複数の試験装置で構成されています。

SWELL: レーザー通信技術の試験。
電気推進静電分析器: イオン推進による再ブースト技術の実証。
NRLの中性子放射検出器: 中性子放射の検出。
NRLの可変電圧イオン保護実験: イオンからの保護に関する実験。
ECLIPSE: 下部電離層の特性とスポラディックE層生成の研究。
Glowbug: 宇宙線検出器として、約2年間宇宙線を研究。
SpaceCube Edge Node Intelligent Collaboration: 宇宙環境下でのマイクロチップと人工知能の研究。
SOHIP: ハイパースペクトルカメラを用いて、約2年間大気圏を研究。

搭載研究・実験

軌道上のISSに届けられた新しい実験は、将来の科学者や探査者を刺激し、研究者には貴重な洞察を提供しました。ドイツ航空宇宙センター（DLR）の学生コンペティション「Überflieger 2」の一環として、ISSでの実験機会を得た学生プロジェクトも含まれています。

学生プロジェクト: FARGO（磁性流体の応用研究）、Glücksklee、BRAINS（宇宙における神経科学のためのAIを用いた研究）、ADDONISS（ISSでのニューロンの老化・変性疾患）。
欧州宇宙機関（ESA）研究: BIOFILMS（宇宙環境下での金属表面における細菌バイオフィルム形成とその抗菌特性の研究）。
NASA グレン研究センター研究: MISSE-17（宇宙環境での各種材料試験、特にビトリマー類可逆接着剤など）。

CubeSat

このミッションでは複数の超小型衛星（CubeSat）の放出も計画されていました。

NEUDOSE: マクマスター大学の学生による2U CubeSat。地球低軌道（LEO）における宇宙放射線被ばくに関する理解を深めるため、荷電粒子と中性粒子が人間の等価線量にどう寄与するかを調査。リアルタイム線量識別装置のデモと、LEOでの粒子線量率のマッピングを目指す。アマチュア無線家との連携も特徴。
Northern SPIRIT: カナダの大学（ユーコン大学、オーロラ研究所、アルバータ大学）が共同開発した3機のCubeSat群。カナダ宇宙庁（CSA）のCanadian CubeSat Projectの一環。主に電離層の磁場データを収集し、磁場に沿った電流を研究。
Ex-Alta 2: アルバータ大学の学生による3U CubeSat。山火事の研究・予防のための科学データ取得を優先ミッションとする。オープンソース化の促進や、アルバータ州の宇宙産業発展支援も目的。
AuroraSAT / YukonSat: オーロラ研究所とユーコン大学がアルバータ大学と協力して開発した2U CubeSat。ノーザン・イメージ・ミッション（カナダ北部の子供たちのアートを宇宙から撮影・紹介）とノーザン・ヴォイシズ・ミッション（カナダ北部の物語をアマチュア無線で放送）という二つの主要ミッションを持つ。
ELaNa 50: NASAの教育的打ち上げイニシアチブ（ELaNa）による、米国の教育機関からの2つのCubeSat。
ARKSat-1: アーカンソー大学の学生による1U CubeSat。軌道上からのLED信号を地上で検出することで大気測定を行う。ミッション終了後はインフレータブルバルーンで大気抵抗を増やし、迅速な再突入を試みる。
LightCube: アリゾナ州立大学の学生による1U CubeSat。アマチュア無線で起動し、地上から視認できる短い光の点滅を発生させる光源を搭載。

CRS-27ミッションは、ISSへの不可欠な補給に加え、様々な分野の先端科学研究や技術実証、さらには学生による宇宙開発教育の機会を提供しました。

もう一度検索