スマートなゲートボール (アルバム)

『スマートなゲートボール』（Smart na Gateball）は、日本の音楽家、近田春夫が率いたバンド、ゲートボールが1983年（昭和58年）8月25日に発表した、彼らにとって最初のアルバムおよびシングルのタイトルです。

概要

バンド「ゲートボール」の結成

バンド「ゲートボール」は、本作リリースと同年の1983年に結成されました。中心人物である近田春夫に加え、かつて「近田春夫&ビブラトーンズ」に在籍した高木英一、そして「ガールズ」や「ピンナップス」といったバンドで活躍した野元貴子（リタ名義）がメンバーとして参加しました。

リリース形態と特徴

1983年のオリジナル盤は、当時のメディア事情を反映した形でリリースされました。アルバムは当時普及が進んでいたカセットテープのみでの発売。一方、シングル版は、通常のドーナツ盤よりも回転数が遅い33 1/3回転に対応し、片面に2曲ずつ計4曲を収録した、いわゆるコンパクト盤としてリリースされました。これらは共に徳間ジャパン（現在の徳間ジャパンコミュニケーションズ）から発売されています。特にカセットテープ専用アルバムという形式は、当時の音楽シーンにおいてもユニークな試みでした。

音楽性

この作品の最大の特徴は、その実験的な音楽性にあります。ゲートボールは、古今東西の著名な楽曲、それもジャンルや時代を超えたバラエティ豊かなオリジナル曲を、独自の解釈で「アンビエント化」してカバーするという手法をとりました。パーシー・フェイス、デヴィッド・ボウイ、ザ・ハプニングス、ビリー・ヴォーン、ポール・モーリア、ザ・キンクス、トニー・ハッチ、坂本九、クラフトワーク、パット・ブーン、フランク・シナトラなど、非常に多様な楽曲が選ばれています。これらの原曲を、従来のカバーとは一線を画す、浮遊感のあるアンビエントサウンドへと変貌させています。

収録曲

シングルとアルバムでは収録内容が異なります。

シングル『スマートなゲートボール』 (4曲収録)

FASCINATION (魅惑のワルツ) (原曲: ザ・パーシー・フェイス・オーケストラ)
STAR MAN (スター・マン) (原曲: デヴィッド・ボウイ)
YOU REALLY GOT ME (ユー・リアリー・ガット・ミー) (原曲: ザ・キンクス)
PEARLY SHELLS (真珠貝の歌) (原曲: ビリー・ヴォーン)

アルバム『スマートなゲートボール』 (12曲収録)

FASCINATION (魅惑のワルツ) (原曲: ザ・パーシー・フェイス・オーケストラ)
STAR MAN (スター・マン) (原曲: デヴィッド・ボウイ)
SEE YOU IN SEPTEMBER (シー・ユー・イン・セプテンバー) (原曲: ザ・ハプニングス)
PEARLY SHELLS (真珠貝の歌) (原曲: ビリー・ヴォーン)
THEME FROM A SUMMER PLACE (夏の日の恋) (原曲: ポール・モーリア)
YOU REALLY GOT ME (ユー・リアリー・ガット・ミー) (原曲: ザ・キンクス)
LOOK FOR A STAR (星を求めて) (原曲: トニー・ハッチ)
SUKIYAKI (上を向いて歩こう) (原曲: 坂本九)
THE MODEL (モデル) (原曲: クラフトワーク)
SAIL ALONG SILV'RY MOON (浪路はるかに) (原曲: ビリー・ヴォーン)
LOVE LETTERS IN THE SAND (砂に書いたラブ・レター) (原曲: パット・ブーン)
STRANGERS IN THE NIGHT (夜のストレンジャー) (原曲: フランク・シナトラ)

再発売と現状

アルバム版『スマートなゲートボール』は、オリジナル発売から8年後の1991年（平成3年）4月25日に、徳間ジャパンコミュニケーションズよりCDとして再発売されました（リリースナンバー: TKCA-30246）。これにより、より多くの音楽ファンがこのユニークな作品に触れる機会を得ましたが、残念ながら現在は廃盤となっており、入手は困難な状況が続いています。

まとめ

『スマートなゲートボール』は、近田春夫率いるゲートボールが提示した、既成概念にとらわれないサウンドアプローチを示す重要な作品です。カセットアルバムやコンパクト盤といった当時のメディアでのリリース形態も特徴的で、多様な原曲をアンビエント化するという手法は、1980年代における近田春夫の先駆的な音楽活動を象徴する一枚と言えるでしょう。現在は廃盤ながらも、そのユニークな内容は今なお音楽愛好家の間で語り継がれています。

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