スリュムル (衛星)

スリュムル (Thrymr) - 土星の第30衛星

スリュムルは、土星の第30番目の衛星であり、外側の衛星群に属しています。この衛星は、土星の自転方向とは逆向きに公転する逆行軌道を持ち、北欧群と呼ばれるグループに分類されます。北欧群は、不規則な形状と軌道を持つ外部衛星の集まりで、その起源は土星の形成時に捕獲された小天体であると考えられています。

発見と観測

スリュムルは、2000年9月23日にブレット・J・グラドマン、ジョン・J・カヴェラーズらの研究チームによって発見されました。この発見には、カナダ・フランス・ハワイ望遠鏡（CFHT）、8m口径の反射望遠鏡VLT、そしてパロマー天文台の5m反射望遠鏡という、世界各地の大型望遠鏡が使用されました。観測には補償光学という技術が活用され、これにより地球大気の揺らぎによる画像の歪みを補正し、より鮮明な画像を捉えることが可能となりました。

発見の事実は、同年12月7日に国際天文学連合（IAU）のサーキュラーで公表され、当初は仮符号S/2000 S 7という名称が与えられました。

名称の由来

スリュムルという固有名は、北欧神話に登場する霜の巨人スリュム（古ノルド語: Þrymr）に由来します。スリュムは、雷神トールのハンマー「ミョルニル」を盗んだことで知られています。この名称は2003年8月8日に正式に承認され、同時に土星の衛星としての確定番号「Saturn XXX」も与えられました。この名称は、アイスランド語ではスリームル（Srymur）、ドイツ語ではトリュムル（Trymr）とも表記されます。命名当初の綴りは「Thrym」でしたが、2005年1月21日に名称の主格である「Thrymr」に修正されました。

物理的特徴

スリュムルの物理的な特徴については、まだ詳しい観測データが不足しています。しかし、アルベド（反射率）を0.06と仮定した場合、その直径は約7kmと推定されています。これは、スリュムルが非常に小さく、光をあまり反射しない暗い天体であることを示しています。スリュムルのような小さな衛星は、その組成や形成過程について、太陽系の初期に関する貴重な情報を提供してくれる可能性があります。

スリュムルの軌道や物理的特徴の詳細な研究は、今後の観測によってさらに進むことが期待されています。これにより、土星の衛星系の形成史や、外太陽系の微小天体の進化について、より深い理解が得られるでしょう。

参考資料

• - 土星の衛星
• - 北欧神話

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