スリーコム

スリーコムの歴史

スリーコム（3Com、NASDAQ: COMS）は、1979年から2010年まで存在したアメリカのコンピュータネットワーク関連企業です。その名前は、主要業務であるComputers、Communication、Compatibility（コンピュータ、通信、互換性）の頭文字に由来します。イーサネットの共同発明者であるロバート・メトカーフらが創業し、ネットワークカード、LANスイッチ、ルーター、無線LANアクセスポイント、VoIPシステム、侵入防止システムなど、多岐にわたる製品を開発・販売しました。

創業と成長

スリーコムは、1980年代初頭にはLSI-11、IBM PC、VAXなど様々なコンピュータシステム向けのイーサネットアダプタカードを製造していました。1980年代中期には、イーサネット技術を「EtherSeries」というブランド名で展開し、Xerox Network Systems（XNS）プロトコルを使ったLANサービスやPCベースの製品群をリリースしました。これには、ファイル共有の「EtherShare」、プリンタ共有の「EtherPrint」、電子メールの「EtherMail」、IBM端末エミュレーションの「Ether-3270」などが含まれます。

また、同社は以下のネットワークソフトウェア製品を開発しました。

3+Share：ファイルとプリンタ共有
3+Mail：電子メール
3+Remote：PCのシリアルポート上でのXNSプロトコルのルーティング
NetConnect：複数のイーサネット間でのXNSプロトコルのルーティング
3+Open：Microsoft LAN Managerベースのファイルとプリンタ共有
Etherterm：端末エミュレーション
Etherprobe：LAN解析ソフトウェア
DynamicAccess：イーサネット上の負荷分散とリモートモニタリング

システム製品としては、以下のようなものがありました。

3Server：3+サービス群が動作するサーバ型PC
3Station：ディスクレスワークステーション

1987年には、Bridge Communicationsを買収し、製品ラインナップを拡充。MC68000プロセッサとXNSプロトコルを使用した製品や、CS/1、CS/200といったコミュニケーションサーバ（端末サーバ）、イーサネットブリッジ、XNSルータ、X.25ゲートウェイ、SNAゲートウェイなども提供しました。

USロボティクス買収と市場の変化

1997年、スリーコムはUSロボティクスと合併（事実上吸収）し、モデム市場へ参入するとともに、パームを傘下に収めました。また、ダイヤルアップアクセスサーバ「Total Control Hub」シリーズも「Total Control 1000」として販売しました。1990年代後半のインターネット急成長期には、ISP向けのアクセスサーバ市場でシスコシステムズと競合しました。

しかし、モデム市場の縮小に伴い、DSL機器事業への進出を試みるも成功には至りませんでした。サーバ用ネットワークカード（NIC）市場ではインテルに次ぐ2位のシェアを占めていましたが、インテルを打ち破ることはできませんでした。また、ギガビットイーサネットカードの開発も途中で中止となりました。

1999年には、中小企業向けイーサネットベース電話システムの会社NBXを買収。これはスリーコムの販売網を通じて人気となり、IP電話の技術実用化に貢献しました。2000年にはハイエンドルーター事業から撤退しましたが、これは顧客の怒りを買い、他社製品へ移行するきっかけとなりました。同年にパームを独立させましたが、スリーコムの時価総額はパームのそれを下回っていました。

華為技術との合弁事業

2001年、CEOが交代し、ネットワークカード市場の縮小に対応するため、部門売却と規模縮小を開始しました。従業員数は12,000人から2,000人まで減少しました。2003年には本社をマサチューセッツ州に移転。中国の通信機器企業である華為技術（Huawei Technologies）との合弁会社ファーウエイスリーコム（Huawei-3Com Co., Ltd）を設立し、H3Cブランドで中国・日本市場に製品を供給しました。他の市場ではスリーコムブランドでの製品供給を継続しました。2006年には華為技術との合弁を解消し、ファーウエイスリーコムを完全子会社化してH3Cテクノロジーズに社名変更しました。

HPによる買収

2009年、スリーコムはヒューレット・パッカード（HP）に27億ドルで買収されました。これにより、独立した法人としてのスリーコムは消滅しましたが、その技術はHPと後継のヒューレット・パッカード・エンタープライズ（HPE）のネットワーク機器事業の基盤となっています。スリーコムが合弁事業で用いたH3Cブランドは、現在も中国市場向けHP製品に使用されていますが、HPと華為技術との間には資本関係や提携関係はありません。

製品

スリーコムは以下のような製品を提供していました。

LANインタフェースカード、スイッチ、ファイアウォール
WANルーター
無線LAN製品（アクセスポイントなど）
インターネットアクセスゲートウェイ（有線と無線）
モデム
ネットワーク管理アプリケーション
ネットワークセキュリティ製品
IP電話関連製品（構内交換機、内線電話など）

買収

スリーコムは、設立以来、以下の企業を買収しています。

Bridge Communications（1987年）
USロボティクス（1997年）
NBX（1999年）
TippingPoint（2005年）
* Huawei-3Com (H3C) （2007年）

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