スレイプニル

スレイプニル：北欧神話の八脚の軍馬

北欧神話において、スレイプニル（Sleipnir）は主神オーディンに仕える、特異な特徴を持つ神獣として知られています。8本の脚を持つ軍馬であり、その名は古ノルド語に由来し、「滑走するもの」といった意味を持つと解釈されています。アイスランド語やスカンジナビア語でも、古くから伝わる呼び名として用いられています。

驚異的な能力と起源

『古エッダ』の『グリームニルの言葉』では、スレイプニルは「馬のうち最高のもの」と称賛されています。その能力は並外れており、驚異的な速度で走り、空を飛ぶことすらできたと伝えられています。しかし、近年の表現においては、必ずしも8本の脚で描かれるとは限らず、通常の4本脚の馬として表現される場合もあります。

スレイプニルの誕生秘話も興味深いものです。彼はロキが、雌馬に変身した姿で巨人のスヴァジルファリと交配し生まれた子供です。その後、オーディンに献上され、彼の忠実な愛馬となりました。

ラグナロクにおける役割

北欧神話における終末、ラグナロクにおいて、スレイプニルはオーディンと共に戦場を駆け巡りました。しかし、運命の糸は彼らを逃れませんでした。最後は、グレイプニルの枷から解放された魔狼フェンリルによって、オーディンと共に飲み込まれてしまうという悲劇的な最期を迎えます。

スレイプニルの血を受け継ぐ名馬

伝承によれば、人間の英雄シグルズが所有した名馬グラニは、スレイプニルの血を引く子孫であるとされています。このことは、スレイプニルの血統が、英雄たちの活躍を支える重要な要素であったことを示唆しています。

現代文化におけるスレイプニル

スレイプニルは、現代の娯楽作品にも広く登場します。特にコンピュータゲームにおいては、しばしばキャラクターとして採用されています。例えば、有名なRPGシリーズ『ファイナルファンタジー』では、6本脚の幻獣としてアレンジされた姿で登場しています。また、日本の企業が開発したウェブブラウザ「Sleipnir」も、この神馬の名にちなんで命名されています。さらに、日本中央競馬会（JRA）では、2019年から「スレイプニルステークス」という競走が新設されるなど、現代でもその名は広く親しまれています。

参考文献

V.G.ネッケル他編 著、谷口幸男 訳『エッダ 古代北欧歌謡集』新潮社、1973年
ヴィルヘルム・グレンベック著 著、山室静 訳『北欧神話と伝説』新潮社、1971年

関連項目

オーディン、ロキ、フェンリル、ラグナロク、北欧神話、伝説の生物

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