スワンナプーム空港

スワンナプーム空港（Suvarnabhumi Airport）は、タイの首都バンコクから東へ約30kmに位置する国際空港です。その名はサンスクリット語で「黄金の土地」を意味し、タイの空の玄関口として重要な役割を担っています。

概要

この空港は、3240ヘクタールという広大な敷地を誇り、これは成田空港の約3倍にも相当します。2本の滑走路を備え、年間6500万人の旅客が利用しており、計画では4本の滑走路が建設され、年間1億人の輸送能力を持つことが想定されています。かつてバンコクの主要空港であったドンムアン空港に代わり、その空港コード「BKK」も引き継ぎました。

格安航空会社（LCC）専用ターミナルの計画もありましたが、LCC各社の要望によりドンムアン空港の利用が継続されています。2013年には3本目の滑走路が既存空港の西側に建設されることが決定し、現在工事が進められています。この滑走路は全長4000メートルになる予定です。

歴史

背景

第二次世界大戦後の民間航空発展期において、バンコクは政治的に安定しており、東南アジアのハブ空港としての地の利がありました。特にヨーロッパとオーストラリアを結ぶ「カンガルールート」の中継地として、ドンムアン空港は重要な役割を担っていました。しかし、航空機の大型化や航空需要の増加に伴い、ドンムアン空港は手狭になり、新たな空港の必要性が高まりました。

1973年、タノーム政権下で空港用地の買収が完了しましたが、その後の政変により計画は一時凍結されました。1981年にはシンガポールにチャンギ国際空港が開業し、東南アジアの新たなハブ空港となりました。その後、幾度かの計画の中断を経て、1996年にバンコク新空港株式会社が設立され、工事が開始されました。しかし、アジア通貨危機により再び計画が危ぶまれましたが、日本政府からの借款交渉を経て、2002年にターミナル建設が開始されました。

開港

当初は2005年 9月に開港予定でしたが、計画変更やシステムチェックにより遅延しました。2006年7月には国内航空会社によるテストが実施され、同年9月15日から一部航空会社が就航しました。同年9月19日の軍事クーデターにも関わらず、9月28日にスワンナプーム空港は正式に開港しました。開港後最初の旅客便は、ウクライナのキーウからのアエロスヴィート航空でした。

開港直後の問題点

ヘルムート・ヤーン設計による斬新なターミナルは、開港直後から多くの問題が発生しました。

手荷物受取の遅延
乗り継ぎ客の荷物の紛失
チェックインの遅延
案内表示の不備
トイレ、椅子の不足
待ち合わせ場所の不足
出入国審査の遅延
ターミナル内の移動距離が長い

また、滑走路や誘導路の亀裂も多数発見され、空港機能に支障をきたしました。これらの問題は、沼沢地を埋め立てて建設されたことや、整地時の施工不良が原因とされています。その後、補修工事が行われ、これらの問題は改善されています。

ドンムアン空港の利用再開

スワンナプーム空港の初期トラブルや都心からの距離の問題から、一部航空会社はドンムアン空港の再利用を求めました。その結果、2007年から一部の国内線がドンムアン空港に移転しました。その後、2012年にはタイ・エアアジアなどのLCCも移転しました。

反政府勢力による空港封鎖

2008年11月には、反政府勢力による空港占拠により、国際線の発着が不可能になりました。この際、ウタパオ国際空港が代替空港として利用されましたが、ソムチャーイ政権の崩壊に伴い、空港は再開されました。この封鎖により、タイ国際航空は多大な損害を被りました。

将来

2018年には、現ターミナルの北西に第2ターミナルの建設が決定し、2024年の開業を目指して工事が進められています。この第2ターミナルは、タイ国際航空などのタイの航空会社専用となる予定です。

旅客ターミナルビル

ターミナルビルは、「ワンフロア戦略」により、搭乗や乗り継ぎがしやすい構造になっています。主な施設は以下の通りです。

7階：展望ロビー
6階：レストラン
5階：セキュリティチェック、航空会社オフィス
4階：チェックインカウンター、出国審査
3階：出発ロビー、ラウンジ、飲食店、免税店
2階：ボーディングブリッジ、入国審査、手荷物受取
1階：バス、タクシー乗り場、フードコート
地下：エアポート・レール・リンク駅

コンコースは以下の通りに分かれています。

A・B：国内線
C・D：タイ国際航空、スターアライアンス加盟各社
E・F・G：主にワンワールド・スカイチーム加盟各社

サテライトターミナル

2023年9月には、A380にも対応したサテライトターミナル（SAT-1）がオープンしました。このターミナルは全自動新交通システム（APM）で旅客ターミナルビルと接続されており、年間1500万人の利用客増加に対応します。

その他

空港内にはトランジットホテル、銀行、両替所、免税店、レストランなどがあります。両替所は市内のレートよりやや割高な場合があります。また、VAT還付手続きも可能です。

交通アクセス

鉄道

エアポート・レール・リンクが、空港とバンコク市内を結んでおり、6時から24時台まで運行しています。

タクシー

リムジンタクシー：ターミナル2階から乗車。定額制でクレジットカードも利用可能です。
パブリックタクシー：ターミナル1階から乗車。メーター制ですが、空港乗り入れ料金が加算されます。乗車前にメーターの使用を確認することが推奨されます。

バス

バンコク方面：Limo Bus、Elephant Airport Express、公共バスなどが運行しています。
タイ国内各地：パタヤ、ホアヒン、チャン島などへのバスも運行しています。

その他

レンタカー、高速道路も利用可能です。空港施設使用料は、国際線は700バーツ、国内線は100バーツです。空港管制塔は、世界で3番目の高さを誇ります。

事故

2013年には、タイ国際航空機が着陸に失敗し、乗客乗員に負傷者が出ました。また、2024年には、シンガポール航空機が乱気流により緊急着陸し、死傷者が出ています。

脚注

関連項目

タイ空港公社
ドンムアン空港

外部リンク

Suvarnabhumi Airport (英語)

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