スーサ

スーサ：古代ペルシャの栄光を刻む都市

イラン南西部のフーゼスターン州シューシュにあるスーサは、古代オリエントにおける重要な都市として知られています。エラム王国時代からアケメネス朝ペルシャ時代にかけて王都として繁栄し、その歴史は紀元前4000年以上に遡ると考えられています。

スーサの遺跡群

スーサの遺跡は、大きく分けてアクロポリス、アパダーナ宮殿、王宮、職人街の4つの主要な区域から構成されています。広大な遺跡からは、数多くの歴史的建造物や遺物が発掘されており、古代文明の栄華を今に伝えています。

中でも、アパダーナ宮殿はダレイオス1世によって建設された冬の宮殿として知られ、その壮大な謁見の間跡は古代ペルシャの建築技術の高さを物語っています。1901年には、ルーブル美術館に収蔵されていることで有名なハンムラビ法典碑もこの地で発見されました。この碑文は古代メソポタミア法の貴重な資料として、世界史研究に大きな貢献を果たしています。さらに、アクロポリスからは紀元前4000年頃の神殿跡が発掘されており、放射性炭素年代測定の結果、紀元前4395年頃までさかのぼる可能性も示唆されています。

激動の歴史

スーサの歴史は、栄華と衰退を繰り返す激動の歴史でした。エラム王国の首都として栄えたスーサは、紀元前647年にはアッシリアのアッシュールバニパルによって破壊されますが、その後、アケメネス朝ペルシャのキュロス2世によって征服され、再び王都として繁栄を取り戻しました。キュロス2世以降、アケメネス朝ペルシャの王宮が置かれ、王の道の起点として重要な役割を果たしました。

その後、アレクサンドロス3世率いるマケドニア軍による征服を経て、セレウコス朝、パルティア朝と支配者が変わりましたが、スーサは都市としての地位を保ち続けました。遺跡から出土するパルティア時代の陶器類は、この時代のスーサの繁栄を物語っています。ローマ帝国の支配下に入った後も、サーサーン朝によって再建され、中世初期まで都市として機能していました。しかし、イスラム教徒の侵入やモンゴルの侵略を受け、徐々に衰退していき、現在では小さな集落となっています。

スーサと宗教

スーサの守護神はインシュシナクであり、シュトルク朝のエラム王シルハク・インシュシナクによって作られた青銅製の神殿模型も発見されています。この模型の目的や意義は現在も解明されていない部分が多く、古代エラム人の信仰や儀式を研究する上で重要な手がかりとなっています。さらに、5世紀から13世紀にかけては東方教会のキリスト教徒が多く居住していたと推測されており、スーサの歴史には多様な宗教が交錯した痕跡も残されています。旧約聖書では「シュシャン」として登場し、ダニエル書やエステル記、エズラ記などにその名が記されています。ダニエルの墓とされるシューシュ・ダニエルも存在し、聖書の世界観を理解する上で重要な場所となっています。

世界遺産登録

スーサの遺跡は、その歴史的、文化的価値の高さが認められ、2015年にユネスコの世界遺産リストに登録されました。登録基準は、「人類の創造的才能を表現する傑作」、「人類の価値の重要な交流を示すもの」、「唯一のまたは少なくとも稀な証拠」、「人類の歴史上重要な時代を例証する優れた例」の4つです。

まとめ

スーサは、エラム王国からアケメネス朝、そしてそれ以降の時代を通して、重要な役割を担ってきた都市です。多様な文化や宗教が交錯し、栄華と衰退を繰り返しながらも、その歴史的遺産は現在も人々を魅了し続けています。スーサ遺跡は、古代オリエントの歴史を知る上で欠かせない重要な場所であり、今後もその魅力は失われることはありません。

もう一度検索