スーパー2000

スーパー2000：モータースポーツの歴史を彩った低コスト規定

スーパー2000（Super 2000、S2000）は、国際自動車連盟（FIA）が定めたモータースポーツの車両規定です。グループA規定のキット変型（VK）として、ラリーとツーリングカーレースの両方に用いられ、特に2000年代のモータースポーツシーンに大きな影響を与えました。

スーパー2000誕生の背景

1990年代のツーリングカーレースでは、グループA/グループN規定が主流でした。しかし、これらの規定は改造範囲が狭く、高価で高性能な市販車をベースとする必要があったため、参戦できるメーカーは限られていました。その後継として登場したスーパーツーリング（クラス2）は改造範囲を拡大しましたが、開発競争の激化によるコスト高騰が問題となり、短期間で衰退してしまいました。

そこで、グループN車両をベースに低コストで参戦できる規定として考案されたのがスーパー2000です。4座席の量産車をベースに、排気量2,000ccまでの自然吸気エンジンへの換装、軽量化、空力パーツの追加などを認める一方、アクティブデフやトラクションコントロールなどのハイテク電子制御デバイスを禁止することでコスト抑制を図りました。また、高価な素材の使用も制限し、FIA公認パーツの使用を義務付けることで、開発コストの均一化を目指しました。さらに、競技用パーツを公認キット化することで、規定の解釈を巡る紛争を防ぐ狙いもありました。

スーパー2000の普及と成功

スーパー2000は、低コストで大衆車を改造して参戦できるため、参入障壁が大幅に低くなりました。その結果、欧米を中心に多くのメーカーや独立系コンストラクターが参戦するようになり、モータースポーツ界に活気を与えました。

この規定は、WRカー（ワールドラリーカー）のコスト高騰やグループNの寡占状態に悩まされていたラリー界にも導入され、新たな時代を築きました。2011年からは、ダウンサイジングターボの潮流に合わせて、1,600cc直列4気筒直噴シングルターボエンジン規格「グローバル・レース・エンジン」（GRE）が採用され、WTCC（世界ツーリングカー選手権）とWRC（世界ラリー選手権）での相互互換性が向上しました。これにより、メーカー間のエンジン技術の共有や、両カテゴリ間のドライバーやチームの移動などが活発化しました。

WTCCとIRC（インターコンチネンタル・ラリー・チャレンジ）というスーパー2000規定を用いるカテゴリ同士でのコラボレーション開催も行われましたが、ツーリングカーとラリーでは改造範囲が大きく異なるため、それぞれの競技におけるスーパー2000の位置付けは異なっていました。

スーパー2000の衰退とその後

ツーリングカーレースにおいて、スーパー2000は改造範囲の制限が厳しすぎたため、ベース車両の性能が戦闘力を大きく左右するようになりました。このため、例外措置が増加するなど、課題を抱えることになります。2014年からは、改造範囲を広げた「TC1」規定が導入されましたが、コストアップと新規参入メーカーの撤退、プライベーターの減少という結果に終わり、WTCCは2017年に消滅しました。

ラリーにおいても、スーパー2000は当初、低コストを謳ったものの、後年にはコスト高騰が問題となり、WRカーの後継規定として検討された際には、様々な論点から紛糾しました。結果として、ダウンサイジングターボのGREエンジンを採用した「S2000 WRC」規定が誕生しましたが、既存のスーパー2000メーカーの多くはWRカーへの参戦を見送りました。

コスト低減とプライベーターへの配慮を目的として、2013年には1,600ccターボエンジンと量産車用部品を多く使用したグループR5（現Rally2）規定が導入され、スーパー2000は次第にその役割を終えていきました。現在では、ERC（ヨーロッパ・ラリー選手権）やAPRC（アジアパシフィックラリー選手権）などの地域選手権で一部使用されています。

スーパー2000のレギュレーション

スーパー2000のレギュレーションは、ラリーカーとツーリングカーでそれぞれ異なっていました。主な内容は、ベース車両の条件（2,500台以上の生産台数、4座席以上）、車両サイズ、最低重量、エンジン仕様（2L NAまたは1.6L DI T/C）、駆動系、サスペンション、電子デバイスの禁止などです。

まとめ

スーパー2000は、低コストで多くのメーカーやプライベーターが参戦できるというメリットでモータースポーツ界に大きな貢献を果たしましたが、その後の技術革新やコスト高騰、他規定の台頭により、その役割を終えました。しかし、モータースポーツの歴史において重要な役割を果たした規定であることは間違いありません。

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