ズレニャニン

ズレニャニン：歴史と文化が息づくセルビアの都市

ズレニャニンは、セルビア北部のヴォイヴォディナ自治州に位置する都市で、中央バナト郡の行政中心地です。セルビア領バナート地方で最大の都市であり、ヴォイヴォディナ自治州内ではノヴィ・サド、スボティツァに次ぐ第3の都市として知られています。多様な民族が共存し、豊かな歴史と文化を持つこの都市について、詳しく見ていきましょう。

都市の名前の由来

現在のズレニャニンという名前は、1946年に革命の英雄ジャルコ・ズレニャニンにちなんで名付けられました。彼は第二次世界大戦中にナチスに抵抗した共産主義者であり、その功績を称えられています。以前はベチケレク、ヴェリキ・ベチケレクと呼ばれていました。ベチケレクの語源は、ハンガリー語の「森」を意味するケレクに由来するという説や、14世紀の貴族ベチェイ・イムレの姓に由来するという説があります。

また1935年から一時的に、セルブ＝クロアート＝スロヴェーヌ王ペータル1世にちなんでペトロヴグラードと呼ばれていた時期もありました。

歴史

ズレニャニンの地には、14世紀に集落が形成され始め、1326年に初めて記録に登場します。ベジェイ川沿いの交易町として発展し、14世紀にはセルビア公ステファン・ラザレヴィチのもとで繁栄しました。1551年からはオスマン帝国の支配を受けますが、1716年にハプスブルク君主国によって征服されました。1769年には、マリア・テレジアの命令によって都市は大きく発展します。

18世紀後半には、セルビア人とドイツ人が主な住民となり、1779年にはハンガリー王国のトロンタール県の中心地となりました。1807年の大火で大きな被害を受けましたが、1820年までに復興し、県都としての地位を取り戻しました。1848年革命の際には、セルビア・ヴォイヴォディナ自治州の事実上の首都の一つとなり、その後、セルビアのヴォイヴォディナとタミシュ・バナート公国の一部となりました。

第一次世界大戦後、ズレニャニンはセルブ＝クロアート＝スロヴェーヌ王国（後のユーゴスラビア王国）の一部となり、第二次世界大戦中には枢軸国の占領を受けました。戦後、ユーゴスラビア社会主義連邦共和国の一部となり、2006年のセルビア独立以降は、セルビアの一部となっています。

基礎自治体と民族構成

ズレニャニン基礎自治体には、ズレニャニン市の他に多く町村が含まれています。2002年の調査によると、基礎自治体内の民族構成は、セルビア人が多数を占め、次いでハンガリー人、ルーマニア人、ロマ人、スロバキア人などがいます。市内においてもセルビア人が多数派ですが、ハンガリー人の割合も比較的高くなっています。

宗教

2002年の調査では、基礎自治体の人口の77.28％が正教会の信徒であり、カトリック教会が12.01％、プロテスタントが2.13％となっています。ズレニャニンには、ヴルシャツの正教会バナート主教座と、セルビア領バナートのカトリック司教座が置かれています。

市内の建築物

ズレニャニンには、歴史的な建造物が数多く残っています。

市庁舎：1816年建設、1887年再建のネオバロック様式の建物
財務宮殿：現在は国立美術館として利用されているネオルネサンス様式の建物
ズレニャニン劇場：1839年建設のセルビア最古の劇場
ズレニャニン裁判所：1908年完成のロマン主義建築
ズレニャニン聖堂：1868年完成のロマネスク様式のカトリック教会
ブコヴァツ邸：1905年建設のネオルネサンス様式の邸宅
旧ヴォイヴォディナ・ホテル：1886年建設のネオルネサンス様式の建物
ウスペンスカ教会：1746年建設のバロック様式の教会で、1807年の大火を生き残った市内最古の教会

これらの建築物は、ズレニャニンの豊かな歴史を物語っており、観光客にとっても魅力的なスポットとなっています。

交通

ズレニャニンの公共交通機関はバスが中心で、近郊の都市との間を結んでいます。また、かつてはベジェイ川を利用した水運も盛んでした。ズレニャニン空港は、スポーツや貿易、パイロット訓練などに利用されており、将来的に国際空港となる予定です。

ズレニャニン出身の著名人

ズレニャニンは、スポーツ選手や芸術家など、多くの著名人を輩出しています。

デヤン・ボディロガ：元プロバスケットボール選手
ザーコ・チャバーカパ：プロバスケットボール選手
ウラジミール・グルビッチ：バレーボール選手
ドゥシュコ・トシッチ、ゾラン・トシッチ、ズヴォニミール・ヴキッチ：サッカー選手
* マーヤ・オグニェノビッチ、ヨバナ・ブラコチェビッチ、ニコラ・グルビッチ：バレーボール選手

姉妹都市

ズレニャニンは、ハンガリーのベーケーシュチャバ、ルーマニアのアラド、ティミショアラと姉妹都市提携を結んでいます。

その他

ズレニャニンには、1737年から営業しているセルビア最古の郵便局があります。また、第二次世界大戦中には、連合国側の誤爆によって被害を受けたことがあります。ベジェイ川には10の橋が架かっていることから、「橋の町」とも呼ばれています。

ズレニャニンは、多文化が共存し、豊かな歴史と文化を持つ魅力的な都市です。セルビアを訪れる際には、ぜひ足を運んでみてください。

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