セイイェド・モフセン・サイードザーデ

セイイェド・モフセン・サイードザーデは、イラン・イスラーム共和国の改革派ウラマーであり、ホッジャトル・エスラームの位階を持つ人物です。彼は、クルアーンとハディースのリベラルな解釈、特にジェンダー平等論に関する見解で広く知られています。

サイードザーデは、ジェンダーに関する過度な本質主義的解釈を避け、その可変性を重視する立場を取ります。彼は、コーランにおける男女平等を説く文言をイスラームの本質と捉え、それに反する文言は時代や文化状況に合わせた個別的な啓示であると主張します。そして、従来のイスラーム聖職者がこれらの文言を過度に重視してきたと批判します。

さらに、サイードザーデは、イスラームとムスリムの行動や解釈は同一ではないと指摘し、イスラームの男女平等の精神がムスリムによって早くから歪められ、女性の人権を制限する誤った規則が制定されたと主張します。彼は、男女の結婚を奴隷の所有に見立てた結婚法規を、イスラームの倫理原則に反するものとして強く批判しています。

一夫多妻制に関して、サイードザーデはコーランの精神が段階的にこれを禁止していくものであり、一夫多妻を容認しているとは言えないと主張します。彼は、コーランの「複数の妻を公正に扱えるときのみ、二人以上の妻を娶れ」という文言と、「あなたは公正ではありえない」という文言を引用し、現代の一夫多妻制はイスラームの精神を無視した逸脱であると断じます。

奴隷制や女性の相続に関しても、サイードザーデはコーランの精神が完全な奴隷制の廃棄と女性の相続権の平等を目指していたと解釈します。彼は、イスラームが既存の慣習を一概に排除せず、社会秩序を維持しながら徐々に改革を進める宗教であるため、預言者の生存中にはその目標を達成できなかったと説明します。

一方で、アリーの女性に対する軽蔑意識を伝えるハディースに対して、サイードザーデはシーア派教徒としてそのようなアリーの像を受け入れることはできないと表明しています。

サイードザーデの思想は、現代社会におけるイスラームの役割と解釈について重要な問題を提起しており、多くの議論を呼んでいます。彼のジェンダー平等に関する主張は、伝統的なイスラームの解釈に挑戦するものであり、イスラーム社会における女性の地位向上に貢献する可能性を秘めています。

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