セス (ストリートファイター)

セス

カプコンの対戦型格闘ゲーム『ストリートファイターIV』シリーズなどに登場する、物語の中心人物の一人。日本語音声は大塚明夫、英語音声はマイケル・マコノヒーが担当しています。

概要

セスは、『ストリートファイターIV』（以下、『ストIV』）シリーズにおける、プレイヤーがアーケードモードを進めた際の最終ボスとして登場します。悪の犯罪組織シャドルーとも深い繋がりを持ち、数多くのキャラクターの物語終盤に姿を現します。初代『ストIV』では特定の条件を満たすことで、また『スーパーストリートファイターIV』（以下、『スパIV』）以降は最初からプレイヤーキャラクターとして操作可能になりますが、ボスとしての圧倒的な性能と比較すると調整されています。

開発段階では、『バーチャファイター』シリーズのデュラルと同様に「他キャラクターの技を模倣するボス」というコンセプトがありましたが、デュラルとは異なる個性を持たせるよう注意深くデザインされました。『ストIV』の開発初期からイメージは大きく変わっていませんが、ラスボスとしての地位は変動があり、ベガを凌駕する悪役という設定から、一時は中間ボスへの降格も検討された時期がありました。また、『ストリートファイターIII』（以下、『ストIII』）に登場するユリアンやギルとの類似性が指摘されていましたが、関連性については明確にされていませんでした。

その後、『ストリートファイターV』（以下『ストV』）において、シーズン4の追加キャラクターとして再び参戦を果たします。

キャラクター設定

セスの表向きの顔は、軍事企業S.I.N（Shadaloo.Intimidation.Network）社の最高経営責任者（CEO）です。S.I.N社はシャドルーの兵器開発部門であり、実質的にはシャドルー総帥ベガの傘下にあります。セスの肉体は、ベガの体が崩壊した際に使用される「スペア」として用意されたものでしたが、自身の存在理由に疑問を抱き、シャドルーの乗っ取りを企てて暗躍を開始します。

彼は自身の体に徹底的な改造を施しており、他のファイターの様々な格闘技術をインストールしています。これにより、リュウの波動拳やガイルのソニックブームなど、他キャラクターの必殺技を使用することが可能です。

外見は、スキンヘッドで青白い肌を持つ筋肉質な巨漢です。特徴的なのは、黒目と白目の色が反転した瞳と、腹部に存在する「丹田エンジン」と呼ばれる回転する球体（陰陽魚太極図の模様）が収められた空洞です。衣服は一切身につけておらず、体毛も頭髪もありません。また、股間には性器が存在しないなど、人間離れした姿をしています。「丹田エンジン」の使用時やKO時などに、体色が変化することもあります。

作中にはセスと全く同じ、あるいは類似した姿の人物が登場しており、セス自身の体には個体識別番号「15（フィフティーン）」が刻まれています。セスは自身をナンバーで呼ばれることを強く嫌悪していますが、他に「No.21」の存在も確認されています。

戦闘時は全裸ですが、CEOとして公務に就く際やプライベートでは、紫のスーツに赤い手袋とアスコットタイという正装をすることもあります。『ストV』で再登場した際は、デフォルトの姿が片目を隠した長髪で女性的な肉体に変更されましたが、コスチューム変更で『ストIV』シリーズ時の姿に戻すことも可能です。

彼は映画などのマスメディアを軽蔑していますが、その影響力の大きさを認識しており、フェイロンが出演する映画の撮影に圧力をかけたこともあります。ザンギエフのストーリーに登場するロシアの少年たちが彼の名を知っていることから、一般社会にもある程度の知名度を持っていることがうかがえます。公式設定によれば、『ストIV』のヨーロッパステージに登場する巡航船は彼の所有物です。

自分を神であるかのごとく振る舞う傲慢な性格ですが、実力や信念を持つ格闘家に対しては、その技や姿勢を評価する発言をすることがあります。例えば、ガイルの技を「悪くない」、サガットの技を「記憶した」、まことの力を「並みではない」と認めます。一方で、いぶきには「スピード以外何もない」、フェイロンには「底が浅い」、ハカンには「油そのものの方が価値がある」、エル・フォルテには「客観性の欠如」など、技や人間性の問題点を的確に指摘する一面も持ち合わせています。

『ストV』では、女性型の「素体ゼロ号」という姿で物語に登場します。何者かの依頼を受けたハン・ジュリによって素体を発見され、疑似人格モジュールをインポートされますが、記憶のバグにより人格統合エラーが発生します。起動直後はジュリに襲いかかり、その後はサイコパワーに引き寄せられるようにエドやファルケと対戦します。精神は混乱状態にあり、「ベガとシャドルーを倒す」という強迫観念に囚われており、エンディングではベガの幻影に襲い掛かる姿が描かれます。

丹田エンジン

セスの腹部にある球体状の機関は、シャドルーの研究によって生み出された「究極のエンジン」である丹田エンジンです。下丹田の位置にあり、陰陽太極図の模様が施されています。気や波動といったエネルギーを生成・増幅し、全身に巡らせる機能を持ちます。このエンジンにより、セスは世界中の格闘家のデータを解析して得た波動を再現し、様々な技を使用することが可能となります。ハン・ジュリが使用する「風水エンジン」は、この丹田エンジンの技術を応用したものであり、彼女の場合は敏捷性を増幅させる効果があります。

他のキャラクターとの関係

ベガ: シャドルーの総帥であり、セスの主人です。セスはベガの代替ボディとして存在することを不満に思い、彼に反旗を翻します。ベガは当初セスの活動を黙認していましたが、その野心が見過ごせなくなったため鎮圧に動きます。セスはベガを「亡霊」と呼び、強い嫌悪感を抱いています。
アベル: 記憶喪失の元傭兵。セスとは深いつながりがありますが、アベル本人に自覚はありません。セスはアベルを「ナンバーを持たない不良品」と見下していますが、同時に嫉妬のような感情も抱いているようです。外見は肌や髪色を除けば、セスと瓜二つです。
No.21: セスと同じリビングインキュベータ計画で生まれた兄弟の一人です。セスと全く同じ姿をしており、セスでアーケードモードを進めた際にセスに代わってボスとして登場することがあります。機械的でベガに忠実な性格であり、セスは彼らを「自我のない人形」と見下しています。
マヤ: S.I.N社の幹部候補。その正体はCIAのスパイ、クリムゾン・ヴァイパーです。
ハン・ジュリ: セスの右腕的存在の暗殺者。しかし、両者とも相手を信頼しておらず、互いの目的のために利用し合っています。

正体

セスの真の正体は、シャドルーの極秘計画「リビングインキュベータ計画」によって人工的に生み出された27体の人造人間のうちの一体です。ベガの代替ボディとして利用されるためだけに作られた存在であり、アベルやNo.21と同じ遺伝子を持つクローンであることが公式に明かされています。

『ストリートファイターIV』での結末

セスの物語では、兄弟であるNo.21を含む邪魔者を排除し、ベガをも打倒してシャドルーの頂点に立ちます。そして、幹部たちを集め新時代の到来を宣言します。物語の締めくくりとしてジュリを呼び出し、彼女の野心を見透かした上で決着を迫りますが、ジュリは一時的に協力関係を維持することを選びます。

他のキャラクターのエンディングでは、セスは様々な結末を迎えます。

ガイル: S.I.N社のデータを奪取しようとするガイルと対峙しますが、アベルに阻止されます。
アベル: アベルとの戦闘後、記憶を思い出しそうになりますが、ベガに丹田エンジンを破壊され機能停止します。
フェイロン: 映画スタッフ襲撃の件を問われ、メディアの影響力を語った後、背後からのナイフで暗殺されます。
ベガ: ベガに敗れ、シャドルー掌握を阻まれます。ベガはこれまでの出来事が全て計画通りだったと告げ、セスを「失敗作」として見限り、他の兄弟たちに始末を命じます。その後、ジュリの出現によりベガの関心は彼女に移り、セスは放置されます。
クリムゾン・ヴァイパー: ヴァイパーの背後に潜む組織の存在を察知しますが、直後にヴァイパーに始末されます。
ハン・ジュリ: ジュリの野心を見通していたものの彼女に敗北し、「オマケ」「ベガの方がマシ」などと罵られた挙句、丹田エンジンを破壊され活動停止します。
ザンギエフ: 大会中止を知らずに現れたザンギエフに襲いかかりますが返り討ちに遭い、悪人懲らしめの証明として無理やり記念撮影をさせられ、報道陣に晒されます。
サガット: サガットのエンディングで、「魂のない拳」の象徴として研究所内で倒れている姿が描かれます。
ディージェイ: 彼のKOシーンがテレビ中継され、最期にディージェイのリズムに乗る姿が映し出されます。
ロレント: 手榴弾によって殺害され、ロレントは勝利を兵士に告げます。

キャラクター性能

セスは、体内にインストールされた様々な格闘家の技を駆使する万能型のキャラクターです。飛び道具、対空技、コマンド投げ、瞬間移動など、高性能な必殺技を多数持ち、三角飛びなどの特殊能力や相手を引き寄せる固有技も備えています。これにより、あらゆる間合いや状況に対応できる柔軟な戦い方が可能です。

ボス版はプレイヤー版と比較して体力などの性能が大幅に強化されており、圧倒的な強さを誇ります。当初は通常技主体ですが、一度敗北すると全力モードに移行し、必殺技や超必殺技を解禁します。

プレイヤー版は対戦バランスのため、防御力と気絶値が全キャラクター中最低クラスに設定されています。攻撃力もボス版より抑えられています。豊富な技を活用してダメージを奪い、弱点を突かれないように立ち回る必要があります。

技の解説（一部）

セスは、他のキャラクターの技に似た要素を持つ技を使用します。以下はその一部です。

通常技: ダルシムの「ダブルズームパンチ」、豪鬼の「鬼哭突き」に似た技、空中で静止・下降する「フライングセス」などがあります。『ストV』では踏み込みながらの攻撃や中段・下段技も加わりました。
Vシステム: 『ストV』では、反撃技「カラミティシャッター」、移動技「ヘルアサルト」、相手を引き寄せて技をコピーする「丹田エンジン」と「丹田インストール」、技コピー後の「インストールアーツ」、高速移動「丹田ブースター」といった独自のVスキルとVトリガー（丹田イグニッション、丹田マニューバ）を持ちます。
投げ技: 相手を持ち上げて踵落としで叩きつける「ジェノサイドシュート」、背後に投げ飛ばす「デススルー」があります。
特殊技: 春麗の「鷹爪脚」、豪鬼の「天魔空刃脚」、ユリアンの「サイズキック」や「ダブルズームパンチ」（ダルシム）、壁を蹴って跳ぶ「三角跳び」などがあります。
必殺技: ガイルの「ソニックブーム」、リュウの「昇龍拳」、春麗の「百裂脚」、ザンギエフの「スクリューパイルドライバー」、ダルシムの「ヨガテレポート」など、他のキャラクターの代表的な技を模倣したものが多数あります。『ストV』ではオリジナルの連続パンチ「ヘカトンケイル」や対空技「マッドクレイドル」などが追加されました。
スーパーコンボ: 丹田エンジンから黒い球体を発生させ、圧縮・炸裂させる「丹田ストーム」があります。
ウルトラコンボ: 高速な衝撃波で相手を吸い込み、丹田エンジン内で回転させて吐き出す「丹田ストリーム」と、ブリッジ体勢から腹部の丹田エンジンで竜巻を発生させる「丹田タイフーン」があります。
* クリティカルアーツ: 『ストV』では、渦状の衝撃波で相手を閉じ込め、回転して吹き飛ばす「丹田ディストーション」。Vトリガー[I]発動中は、分身して挟み撃ちにする「丹田エクストリーム」に変化します。

他のメディアでの登場

オリジナルアニメーション『ストリートファイターIV〜新たなる絆〜』では、リュウの「殺意の波動」を狙う黒幕として描かれ、物語終盤でリュウと対峙しますが、新たな波動に敗れます。

漫画『ストリートファイター アート・コミック・アンソロジー』に収録された短編では、リュウの記憶をインストールしようとした結果、『ストIII』のエフィーに恋をしてしまい、女性格闘家のデータ収集を始めるというユニークな展開が描かれました。

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