セルフレスキュー用推進装置

セルフレスキュー用推進装置 SAFER

セルフレスキュー用推進装置 (Simplified Aid for EVA Rescue, SAFER) は、宇宙空間における緊急事態に備え、宇宙飛行士が自力で脱出・帰還するための小型推進装置です。

概要

SAFERは、スペースシャトルや国際宇宙ステーション (ISS) の乗組員が船外活動 (EVA) 中に、予期せぬ事態で宇宙船から離れてしまった際に、自力で安全に帰還することを目的として開発されました。これは、かつて使用されていた有人機動ユニット (MMU) を小型化・簡略化したもので、あくまで緊急時の使用を想定しています。

STS-88以降、ISSで行われる米国製宇宙服 (EMU) を着用しての船外活動では、SAFERの装着が義務付けられています。この装置は、ジョンソン宇宙センターにあるNASAのロボット工学部門で開発されました。初めて使用されたのはSTS-64で、この時は命綱なしでの飛行テストが行われ、STS-88から実用装備として本格的に運用が開始されました。

特徴

SAFERの重量は約34kg。推進力は窒素ガスの噴射によって発生し、少なくとも3m/sのΔV（速度変化）を提供します。使用時には、右腰下からハンドコントローラを取り出し、胸の位置に装着して操縦を行います。

運用実績とトラブル

2009年末まで、SAFERが試験目的以外で使用されたことは一度もありませんでした。しかし、STS-121の船外活動中に、ピアーズ・セラーズ飛行士がSAFER左側面にあるラッチを誤って解除してしまうという事態が発生しました。この時は、マイケル・E・フォッサム飛行士がテザーでSAFERが外れないように仮固定し、船外活動は継続されました。

この一件を受け、続くSTS-121およびSTS-115の船外活動では、ラッチが不意に開かないようにカプトンテープで予防的に固定する措置が取られました。その後、STS-116からは、ラッチの誤動作を防止するためのカバーが開発され、SAFERに装備されています。

SAFERは、宇宙飛行士の安全を確保するための重要な装備であり、その信頼性を高めるための改良が続けられています。過去の事例から得られた教訓を活かし、より安全で確実な運用を目指しています。

外部リンク

* “A SAFER Way To Space Walk” (英語). NASAExplores. 2006年5月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2006年7月11日閲覧。

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