セント＝ジェルジ・アルベルト

セント＝ジェルジ・アルベルト（Albert Szent-Györgyi, 1893年9月16日 - 1986年10月22日）は、ハンガリー出身の生理学者であり、後にアメリカ合衆国へと移住しました。彼は、ビタミンCの発見や筋肉研究で知られ、1937年にはノーベル生理学・医学賞を受賞しています。彼の研究は、細胞呼吸や生物学的燃焼の理解に大きく貢献しました。また、政治的な動乱期には、その影響を強く受け、亡命生活を送るなど、波乱に満ちた生涯を送りました。

若き日の研究生活

セント＝ジェルジは、ブダペスト医科大学で学び始めましたが、母方の祖父と叔父がブダペスト大学の解剖学教授であったことから、叔父の研究室で研究をスタートさせました。1914年には第一次世界大戦に召集され負傷しましたが、復員後に勉学を続け、1917年に学位を取得しました。同年には、ハンガリー郵政長官令嬢のデメーニ・コルネーリアと結婚しました。

戦後、ポジョニュ（現在のブラチスラヴァ）で研究を始めましたが、1919年に同地がチェコスロバキア領となり、追放されました。その後、いくつかの大学を転々とした後、フローニンゲン大学に落ち着き、細胞呼吸の研究を始めました。さらに、ケンブリッジ大学フィッツウィリアム・カレッジでロックフェラー基金研究員となり、1927年には副腎由来の還元性物質（「hexuronic acid」と名付けた）の単離により博士号を取得しました。

ビタミンCの発見とノーベル賞

1931年、コロジュヴァールからセゲドに移転した王立フェレンツ・ヨージェフ大学（現・国立セゲド大学）に職を得て、研究員と共に地元特産のパプリカから大量精製した「hexuronic acid」が、L-アスコルビン酸であり、これが以前から知られていた抗壊血病因子であることを突き止め、ビタミンCと命名しました。同時に、細胞呼吸の研究を続け、フマル酸などが呼吸反応（後のTCA回路）で重要な段階を担うことを発見しました。これらの業績が認められ、1937年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

筋肉研究と政治的動乱

1938年には筋肉の生物物理学的研究を開始し、研究員のシュトラウブ・ブルノーとともに、アクチンとミオシンという2種類のタンパク質が会合すると、ATPをエネルギー源として収縮することを明らかにしました。第二次世界大戦が近づくと、ファシストがハンガリーで権力を掌握し、セント＝ジェルジはユダヤ系の友人を逃がす活動を開始しました。さらに、大戦末期には、連合国との和平交渉の密命を帯びてイスタンブールへ向かいましたが、この計画がドイツに知られ、逮捕命令が出たため、終戦まで逃亡生活を送ることとなりました。

戦後の亡命とアメリカでの研究

戦後、セント＝ジェルジは英雄視され、ソ連が認めれば大統領にもなると言われましたが、1947年にスイス滞在中に亡命を決意、最終的にアメリカ合衆国に移住しました。ハンガリー人実業家の援助を得て、マサチューセッツ州のウッズホール海洋生物学研究所に研究室を設けましたが、アメリカ国籍を持たないことや共産政権との関係から財政的に苦労が続きました。1948年にはアメリカ国立衛生研究所（メリーランド州ベセスダ）と兼任し、1950年には海洋生物学研究所内に筋肉研究所を設立しました。

1950年代には電子顕微鏡を用いて筋肉の研究を行い、1955年にアメリカへ帰化しました。また、1950年代以降は、がんの研究にも関心を持ち、量子力学を生化学に応用する分子下生物学（量子生物学）を提唱しました。

受賞歴

ノーベル生理学・医学賞 1937年
ホフマン賞 1939年
* アルバート・ラスカー基礎医学研究賞 1954年

セント＝ジェルジ・アルベルトは、科学的発見だけでなく、その波乱に満ちた人生を通して、多くの人々に影響を与えました。彼の業績は、今もなお、多くの研究者たちの基礎となっています。

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