タイムズスクエア・ボール

タイムズスクエア・ボール：ニューヨークの年越しを彩る光の祭典

タイムズスクエア・ボールは、ニューヨーク市マンハッタンのタイムズスクエアにあるワン・タイムズスクエアに設置された報時球で、大晦日のカウントダウンに使用されます。12月31日の午後11時59分、新年を迎える象徴として、旗竿を77フィート（約23メートル）落下させます。この伝統は、1907年12月31日の夜に始まり、第二次世界大戦中の1942年と1943年を除き、毎年欠かさず行われています。

タイムズスクエア・ボールの構造と進化

初期のボールは、100個の白熱電球、鉄、木材などで作られていましたが、現在はコンピュータ制御されたLED照明システムが使用されています。ボールのデザインは毎年更新され、最新技術が導入されています。2009年以降、ボールはタイムズスクエア1番地に常設されており、メンテナンス時のみ取り外されます。

タイムズスクエア・ボールの落下は、世界中で少なくとも10億人が視聴し、100万人が参加する、世界的に有名な新年の祝賀イベントです。このイベントは、アメリカ国内の他の都市で行われる同様のイベントにも影響を与えています。

歴史：ニューヨーク・タイムズと年越しイベントの始まり

現在のタイムズスクエアでの大晦日の祝賀会は、1904年に始まりました。当時、新聞社ニューヨーク・タイムズがロングエーカー・スクエアに新本社を建設し、スクエアの名称をタイムズスクエアに変更するよう市に働きかけました。この変更は1904年4月8日に行われました。ニューヨーク・タイムズのオーナー、アドルフ・オクスは、本社完成を祝うため、1903年12月31日の深夜に花火大会を開催しました。20万人近くの人が集まり、それまで恒例だったトリニティ教会の祝賀会を上回る規模となりました。オクスは、タイムズスクエアをさらに注目させるため、より大きなイベントを計画しました。

4年間の花火大会の後、新聞社のチーフ電気技師、ウォルター・F・パーマーが、屋根の旗竿から電球で照らされた報時球を落下させるというアイデアを提案しました。最初のボールは、25ワットの電球100個で照らされ、鉄と木でできており、重さ約320kg、直径約1.5mでした。このボールは、1908年（1907年12月31日）に初めて使用され、深夜に1秒間で落下しました。ニューヨーク・タイムズは後に本社を別の場所に移しましたが、祝賀会は毎年タイムズスクエア1番地で開催されています。

初代のボールは1920年に交換され、2代目のボールは直径約1.5m、重さ約180kg、鉄製でした。第二次世界大戦中は、灯火管制のため1942年と1943年の大晦日イベントは中止されました。この間、参加者はタイムズスクエアに設置されたスピーカーからチャイムを聞き、真夜中に黙祷を捧げました。2代目のボールは1955年に、直径約1.5m、重さ約68kg、アルミニウム製の3代目のボールに交換されました。このボールは、1981年から1989年まで「アイ・ラブ・ニューヨーク」キャンペーンのために、赤い電球と緑の軸を使用し、リンゴのような外観に飾られました。1989年に元の外観に戻りましたが、1991年には湾岸戦争を記念して赤と青の新しいボールに交換されました。

3代目のボールは、1995年の大晦日に向けて改造され、ラインストーンとコンピュータ制御のストロボ照明が追加されました。新世紀の到来を記念して、新しいボールが用意されました。4代目のボールは、重さ約490kg、直径約1.8mで、ウォーターフォード・クリスタル製で、504個のクリスタル・トライアングル、168個のハロゲンランプ、432個の電球、赤と青のストロボ、緑と黄色の外照明で構成されていました。クリスタル・トライアングルには、毎年異なるテーマのメッセージが刻まれていました。2001年には、アメリカ同時多発テロ事件で国を支援した組織の名前が刻まれました。2006年12月31日の大晦日には、発光ダイオードが新しくなりました。1999年に作られたボールの複製は、アイルランドのウォーターフォード・クリスタル工場で展示されています。

タイム・ボール100周年を記念し、2007年の大晦日には5代目のボールがデビューしました。このボールは、直径は1.8mのままですが、重さは約550kgとなり、ニューヨークの街の明かりに焦点を当てていました。点灯パターンはコンピュータ制御されたフィリップスのLED照明で、1670色を表現でき、消費電力はトースター10台分と同じでした。このボールは2008年のみ使用されました。

2009年の大晦日には、新しいボールが導入されました。この最新のボールは、2008年のボールの設計を活かしつつ、2倍の大きさになりました。重さは約5,386kg、直径は約3.7mで、正二十面体のジオデシック・ドーム型をしています。新しいボールの導入に伴い、タイムズスクエアの旗竿も高さ約145mに延長されました。この新しいボールは、年間を通してスクエアに設置されています。

ボール落下イベントの特別ゲスト

ボールの落下は、新年が明ける1分前（午後11時59分）に、メインステージ上にあるボール型のボタンを押すことで開始されます。実際には、WWVBセット原子時計で動くコンピュータによって制御されています。近年では、市長が毎年重要な人物を特別ゲストとして招待し、ボタンを押してもらっています。以下に、1996年以降の主なゲストを掲載します。

1996-97：オセオラ・マッカーティ
1997-98：ランディ・フィッシュ、カール・ヴェッター、アリエル・ロドリゲス、ドミニック・ミラー、ダイアナ・シェン
1998-99：桑蘭
1999-2000：ドクター・マリー・アン・ホプキンス
2000-01：モハメド・アリ
2001-02：ルドルフ・ジュリアーニ（ニューヨーク市長として最後の仕事）
2002-03：クリスとダナ・リーヴ
2003-04：シンディ・ローパーとショシャナ・ジョンソン
2004-05：コリン・パウエル
2005-06：ウィントン・マルサリス
2006-07：リリアーナ・G・ペレスとオスワルド・サン・アンドレス
2007-08：カロリナ・ヴィエルチョフスカ（イラク戦争経験の退役軍人）
2008-09：クリントン夫妻
2009-10：アメリカ・ベストハイスクール金メダリストのニューヨーク市高校生12人
2010-11：サルバドール・ジュンタ
2011-12：レディー・ガガ
2012-13：ザ・ロケッツ
2013-14：ソニア・ソトマイヨール（合衆国最高裁判所の陪席判事）
2014-15：ジェンカルロス・カネーラと国際救済委員会管理下の難民代表
2015-16：ヒュー・エヴァンス（オーストラリアの人道家）
2016-17：潘基文（第8代国際連合事務総長として最後の仕事）
2017-18：タラナ・バーク
2018-19：ジャーナリスト保護委員会の代表
2019-20：ニューヨーク市高等学校教師 Jared Fox 氏と Aida Rosenbaum 氏と生徒代表
2021-22：マイケル・ジェームズ・スコット、メアリー・クレア・キング、ベン・クロフォード
2022-23：エリック・アダムス
2023-24：NJ/NY ゴッサムFC（2023年のナショナル・ウィメンズ・サッカーリーグの王者チーム）

「イマジン」の生演奏

2005-06年のイベント以来、ボールが落下する前に、ジョン・レノンの「イマジン」が演奏されています。2010-11年からは生演奏となっています。歴代の演奏者は以下の通りです。

2010-11：タイオ・クルーズ
2011-12：シーロー・グリーン
2012-13：トレイン
2013-14：メリッサ・エサーリッジ
2014-15：オブ・ア・レボリューション
2015-16：ジェシー・J
2016-17：レイチェル・プラッテン
2017-18：アンディ・グラマー
2018-19：ビービー・レクサ
2019-20：X・アンバサダーズ
2020-21：アンドラ・デイ
2021-22：KTタンストール
2022-23：チェルシー・カトラー
2023-24：ポール・アンカ

深夜の天気

ボールの落下が始まった1907年以降のニューヨーク市の平均気温は、約1℃です。最も寒かったのは1917年の-17℃で、2番目に寒かったのは1962年の-12℃です。最も気温が高かった年は1965年と1972年の14℃でした。過去には雪や雨が降った年もあり、天候は年によって大きく異なります。

群衆の整理

毎年、カウントダウンには100万人もの人々が集まります。ニューヨーク市警察（NYPD）は、群衆が押し合ったり、雪崩を起こしたりしないよう厳重に整理しています。タイムズスクエアは「ペン」と呼ばれるエリアに分割され、人々はエリアに到着した順に誘導されます。ペンは43丁目付近から始まり、人がいっぱいになると閉鎖され、最終的にはセントラルパーク方面へと広がります。ペンから出ることは可能ですが、再入場はできません。

タイムズスクエアへのアクセスは、イベント中は制限されます。周辺のホテルに宿泊する場合でも、警察に宿泊者であることを証明する必要があります。アルコール飲料は禁止されており、公衆トイレもありません。

参考文献

Times Square Alliance - New Year's Eve
Pictures of One Times Square Building and Flag Pole
Focus Lighting, Inc. - 100th Anniversary of the Times Square Ball
* Times Square Ball - Hi-res Ball closeups

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