タキミチャルメルソウ

タキミチャルメルソウ（滝見哨吶草）

概要

タキミチャルメルソウ（学名：Mitella stylosa var. stylosa）はユキノシタ科に属する多年草で、特に日本の本州に自生しています。また、自家和合性を持つため、雌雄同株で見られるのも特徴です。別名として「ハリベンチャルメルソウ」という呼称もあります。

特徴

タキミチャルメルソウの根茎はやや太く、その先から長さ7-15cmの葉柄を持つ根出葉が生えます。葉柄には長い粗い毛が生えており、葉身は長さ4-9cm、幅3-7cmの卵形をしています。特に、葉の基部は心形で、縁は浅く掌状に切れ込み、裂片には不ぞろいの鋸歯があります。葉の表面は暗緑色でまばらに粗い毛が見受けられ、裏面は淡緑色であり時折紅紫色を帯びています。

花期は4月で、花茎は20-30cmの高さに成長し、腺毛が密生します。先端には総状花序を持ち、多くの花をつけます。萼筒は鐘状や倒円錐形であり、茶色を呈し、腺毛が密生した特徴があります。萼裂片は5個あり、花が開く際に直立し、先端が若干斜めに開くのが特徴です。花弁は5個で、花の時期に半曲し、紅褐色をした線形で一般的には分裂しませんが、時折3裂することもあります。雄蕊は5個あり、花弁と対生しています。

タキミチャルメルソウの果実は蒴果で、ラッパ状に上向きになります。種子は長楕円形で、種皮には乳頭状の突起が散在しています。

この種は、シコクチャルメルソウや他のチャルメルソウ種と共に独特な香りを放ち、特にキノコバエ科のミカドシギキノコバエ（Gnoriste mikado）に訪れられ、花粉を運ぶ役割を果たします。

分布と生育環境

タキミチャルメルソウは日本固有種であり、本州の岐阜県、滋賀県、三重県に分布しています。特に山地の渓流沿いや滝の近くの半日陰の環境を好みます。1973年に若林三千男が発表した研究によると、分布域は伊吹山地の北側から金糞岳まで、鈴鹿山脈の南側は滋賀県の旧永源寺町まで及びます。また、伊吹山の東側の池田山では本種とミカワチャルメルソウが混在して生育しています。

名前の由来

タキミチャルメルソウの種小名「stylosa」は「花柱のある」を意味します。

保全状況

環境省のレッドリストにおいて、タキミチャルメルソウは準絶滅危惧（NT）に指定されています。この評価は、2007年のレッドリストでは絶滅危惧II類（VU）とされていました。

変種

タキミチャルメルソウを基本種とする変種にシコクチャルメルソウ（学名：Mitella stylosa var. makinoi）があります。もともとは独立した種でしたが、分類上の再検討によりタキミチャルメルソウとの関係が認識され、共に変種関係とされています。

参考文献

• - 矢原徹一（2003）『絶滅危惧植物図鑑 レッドデータプランツ』山と溪谷社
• - 牧野富太郎（2008）『新牧野日本植物圖鑑』北隆館
• - 加藤雅啓・海老原淳（2011）『日本の固有植物』東海大学出版会
• - 門田裕一（2013）『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花』山と溪谷社
• - 若林三千男（1973）論文「日本産チャルメルソウ属について」

もう一度検索