金糞岳

金糞岳：近畿地方を代表する山々の一つ

金糞岳（かなくそだけ）は、滋賀県と岐阜県の県境に位置する標高1,317mの山です。近畿地方の最北東部、中部地方の西部に跨り、雄大な伊吹山地の主峰の一つとしてその存在感を示しています。滋賀県内では伊吹山に次ぐ高さで、その自然豊かな景観から「関西百名山」および「ぎふ百山」にも選定されています。

山名の由来と歴史

古くから金糞岳の麓、特に滋賀県側は「ノタ」や「ミタニ」と呼ばれていました。この地には古くから鉱山が存在し、周辺には製鉄遺跡も確認されています。山名の由来については、鉱石を溶解する際に生じる金屎（かなくそ）にちなむという説が有力です。1824年（文政7年）の古絵図には「カナスソガ嶽」と記されており、歴史の深さを物語っています。また、地元には伊吹山にまつわる民話も残っており、金糞岳が伊吹山よりも低い山になったという伝説も伝えられています。

豊かな自然環境

山頂周辺はブナやミズナラなどの落葉広葉樹が優勢で、原生林の豊かな表情を見せています。南側の山腹には鳥越林道が開設されており、その周辺はスギなどの針葉樹の人工林となっています。一方、連状の頭周辺はブナ林が続き、自然度の高い環境が維持されています。秋にはモミジなどの紅葉が美しく、登山者を楽しませます。

気象と残雪

金糞岳を含む伊吹山地は、冬になると日本海側から雪雲が流れ込みやすく、豪雪地帯として知られています。山頂には「ノタの干雪」と呼ばれる残雪が春遅くまで残り、厳しい冬の気候を物語ります。金糞岳の南東には、グランスノー奥伊吹というスキー場も存在しており、冬のレジャーにも最適な環境です。

登山ルートと魅力

金糞岳への登山道は主に3ルートが整備されています。鳥越峠からのルートが最短で、多くの登山者が利用しています。春先には、イワカガミ、カタクリ、コブシ、ショウジョウバカマなど、様々な山野草が登山道を彩ります。山頂は低木に覆われた平坦な地形ですが、樹間からは白山、伊吹山、琵琶湖など、素晴らしい眺望を楽しむことができます。ただし、山頂からの展望は、無雪期には樹木に遮られるため、必ずしも良好とは限りません。

登山拠点となる高山キャンプ場があり、日帰り登山が一般的です。山小屋やキャンプ指定地はありません。6月中旬頃まで残雪が残るため、登山シーズンは夏から秋にかけてとなります。長浜観光協会は毎年6月初旬に高山キャンプ場で「金糞岳夏山登山者安全祈願祭」を開催しています。

登山ルートの詳細

鳥越峠からのルート: 高山キャンプ場から鳥越林道、鳥越峠を経由し、小朝の頭、大朝の頭を経て金糞岳山頂に至る最短ルート。
中津尾根のルート: 高山キャンプ場から関西電力作業道を進み、白谷口、小森口、連状口、連状の頭、小朝の頭、大朝の頭を経て山頂へ。連状口には展望台があります。
白倉岳からのルート（花房コース）: 高山キャンプ場から滝谷頭、奥山、ロゴウ頭、八草出合い、白倉岳、白倉峠を経て山頂へ。白倉岳の稜線は石灰岩が点在する潅木帯で、見晴らしが良いのが特徴です。
深谷のルート（閉鎖）: かつて存在したルートですが、発電用ダム建設に伴い現在は閉鎖されています。

地理と周辺情報

金糞岳山頂のすぐ北側には、四等三角点（点名：川上、標高1,277.23m）があります。西隣には、二等三角点のある白倉岳（標高1,270.71m）が位置しています。金糞岳の周辺には、草野川東俣谷（姉川の支流）、浅又川、八草川（揖斐川の支流）といった河川の源流があり、琵琶湖や伊勢湾へと注いでいます。また、八草峠、鳥越峠、白倉峠など、歴史的な峠道も周辺に存在します。

アクセス

最寄りの駅はJR北陸本線長浜駅、JR東海道新幹線米原駅です。最寄りのインターチェンジは北陸自動車道長浜ICです。北山腹には国道303号が通り、八草トンネルも開通しています。滋賀県道264号高山長浜線の終点から鳥越林道が伸びており、登山道の起点となっています。

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