タケミカヅチ (競走馬)

タケミカヅチ：最強の1勝馬の軌跡

2005年4月9日生まれの鹿毛の牡馬、タケミカヅチ。その名は、日本神話の神、建御雷に由来する。北海道千歳市の社台ファームで誕生し、ゴールドアリュールの初年度産駒として、社台レースホース（社台サラブレッドクラブ）の所有馬となった。総額2000万円という募集価格でデビューへの期待の高さがうかがえる。美浦の大江原哲厩舎に所属し、競走生活をスタートさせた。

2007年7月、新潟競馬場でのデビュー戦。1600mの新馬戦を快勝し、鮮烈なデビューを飾る。上がり3F33秒0という末脚は、将来性を予感させるものだった。しかし、大江原調教師は、この馬の能力を見抜き「メインレース以外を使うところはない」と、将来の活躍を確信していたとされる。

その後、2歳、3歳と重賞競走に挑戦。皐月賞では2着と好成績を収めるなど、クラシック戦線で存在感を示した。しかし、なかなか勝利を手にすることができず、皮肉にも「最強の1勝馬」という異名で呼ばれることとなる。2000m以上の距離では、東京優駿（日本ダービー）で11着、セントライト記念で9着と結果を残せず、一時的にダート競走にも挑戦した時期もあった。

転機が訪れたのは2009年4月5日。ダービー卿チャレンジトロフィー（GIII）で1番人気に応え、待望の2勝目を挙げた。単勝オッズ6.7倍という結果は、1986年以降の1番人気馬としては最高配当となり、多くのファンを驚かせた。この勝利は、タケミカヅチの潜在能力の高さを改めて証明するものとなった。

しかし、その後は股関節痛に見舞われ、長期休養を余儀なくされる。そして、3勝目を挙げることなく、競走生活に幕を閉じた。2010年6月、放牧先の山元トレーニングセンターで疝痛を発症。出血性大腸炎により、6月30日に死亡した。19戦2勝という短い競走生活だったが、その活躍は多くの競馬ファンの記憶に刻まれた。

タケミカヅチの血統背景も注目に値する。父はゴールドアリュール。サンデーサイレンス産駒で唯一のダートGI勝ち馬である。大江原調教師も、当初からタケミカヅチにダートの適性を感じていたという。半姉には中央競馬で6勝を挙げたスプリングチケット（父：トニービン）がおり、その仔には2012年のJRA最優秀短距離馬、カレンチャンがいるなど、優れた血統を受け継いでいた。

タケミカヅチは、短い生涯ながらも、その類まれな才能と魅力で、多くの競馬ファンを魅了した。皐月賞2着という輝かしい実績、そして「最強の1勝馬」という異名。これらのすべてが、タケミカヅチという名馬の伝説を彩る、重要な要素となっている。その輝かしい走りと、惜しまれつつも幕を閉じた生涯は、長く競馬ファンの記憶に残り続けるだろう。

もう一度検索