タタールのくびき

タタールのくびき

概要

タタールのくびき、またはモンゴル＝タタールのくびきは、13世紀前半にモンゴル帝国が開始したルーシへの侵攻とその後の支配を指す概念です。ルーシは現代のロシア、ウクライナ、ベラルーシに該当する地域を含み、約2世紀半にわたりモンゴルの支配下に置かれました。この期間中、ロシアの住民はモンゴル王家の支配に服し、貢納を強いられました。そのため、ロシア史においては特に不幸な時代とされ、「タタールの羈絆」などの言葉で言及されることが多いです。

モンゴル侵攻と従属の始まり

モンゴルのルーシへの侵攻は、1223年のカルカ河畔の戦いでの敗北から始まりました。モンゴル帝国の支配者であるチンギス・カンに率いられたモンゴル軍は、1223年から1240年までの間にルーシを征服し、多くの公国を破壊しました。この過程で、モンゴル軍はリャザン、ウラジーミル、キエフなどの主要都市を次々と襲撃し、荒廃させました。モンゴル軍の指揮官バトゥは1236年に大軍を率いてルーシに侵攻し、1240年までに南北オルダを制圧しました。特にノヴゴロド公国を除く全てのルーシ地域が征服され、住民はモンゴルへの服属を余儀なくされました。

ルーシ諸国の状況とモンゴルの統治

モンゴルによる支配が始まると、ルーシの公国はモンゴル帝国の間接支配を受けることとなり、貢納の支払いが義務づけられました。ルーシの貴族はモンゴル支配者に忠誠を誓うことで、その統治権を保持することが許されました。ジョチ・ウルスと呼ばれるモンゴルの地方政権は、各地の公国を通じて行政を行い、貴族や首長が直接支配されない形で管理が行われていました。このように、モンゴルは勝者としての地位を維持しつつも、その実権を現地の指導者に委ねることで統治を行いました。

影響とその後

このタタールのくびきは、ロシアの政治的および社会的発展に長期的な影響を与えました。一方で、モンゴル支配はルーシの文化や経済にも変化をもたらし、モスクワ大公国の成長に繋がる結果となりました。1480年、モスクワ大公国のイヴァン3世がモンゴルに勝利し、貢納を廃止したことをもってこのくびきは終わりを迎えました。これにより、モスクワはロシアにおける中心的な地位を確立し、後のロシア帝国へと発展していくのです。

モンゴル支配の評価

モンゴルによる支配は、多くの異なる視点から評価されてきました。一般には過酷な支配とされることが多いですが、実際にはルーシの人々は一定の自由を持ち続け、それまでの生活を維持することが可能でした。もちろんその陰には厳しい貢納や戦争の影響があったものの、モンゴル支配下においても一定の交易や文化交流が行われ、またその営みのなかで、きわめて多様な人々が交わったことも確かです。

まとめ

「タタールのくびき」は、ルーシの歴史において重要かつ深い意味を持つ時代を表す言葉です。モンゴルによる支配は、現在のロシアだけでなく、ウクライナやベラルーシにも影響を及ぼし、近代国家の形成にも寄与しました。従って、単に悲惨な過去として否定するのではなく、複雑で多面的な歴史的事象として捉えることが求められています。

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