タトラT4

タトラT4：東欧の街を彩った路面電車

タトラT4は、かつてチェコスロバキア（現チェコ）のプラハにあったČKDタトラで製造された路面電車車両です。東ドイツをはじめとする東側諸国各地の路面電車に、付随車のB4と共に導入されました。

開発の背景

1960年代から、タトラT3がコメコン体制下で標準型路面電車として東側諸国に導入されました。しかし、東ドイツではT3の車体幅が広すぎ、プラットホームとの接触が懸念されました。同様の問題を抱える都市は多く、T3とは異なる規格の車両が求められ、T4とB4が開発されました。

車両の構造

T4は電動車、B4は付随車で、どちらも進行方向右側に3つの乗降扉があります。T4の運転台も片側のみです。軽量化のため、車体にはグラスファイバーやプラスチックが使用され、パノラミックウィンドウが採用されました。制御方式はT3と同様の多段式間接自動制御、駆動方式は直角カルダン駆動方式です。主な違いは以下の通りです。

車体幅の縮小: 車幅は2,200 mmに抑えられています。
連結運転への対応: T4は当初からB4との連結運転を前提に設計され、台枠が強化されました。
信用乗車方式への対応: 車掌台が廃止され、全ての扉から乗降可能になりました。
砂撒き装置の増設: 車輪の空転を防ぐため、砂撒き装置が追加されました。
連結器: ESW式半自動連結器が設置され、連結時の機械的・電気的結合が自動化されました。

各国での運用

T4・B4は1968年から1987年まで製造され、総生産数は3,509両に達しました。東ドイツ、ソビエト連邦、ルーマニア、ユーゴスラビアなどへ導入され、導入先によって形式が異なります。

T4D・B4D: 東ドイツ向け。2両または3両編成で運行されました。
T4SU: ソビエト連邦向け。狭軌路線向けで、寒冷地対策が施されました。
T4R: ルーマニア向け。T3が導入できない路線向けで、主力車両として活躍しました。
T4YU・B4YU: ユーゴスラビア向け。B4YUはザグレブにのみ導入されました。

改造の歴史

1980年代以降、各都市でT4・B4の改造が行われました。ループ線のない路線に対応するための両方向形改造、車体・機器の近代化、台車や機器の流用など、様々な事例があります。

両方向改造車両

ZT4D: ハレ市電のT4Dを改造。両運転台化されました。
T4D-W: 左側面に乗降扉を追加。2両編成での運用を前提としていました。
B4D-W: 付随車のB4Dを改造。左側面に2つの乗降扉を設置しました。
その他: マクデブルク市電でも両運転台化改造が行われました。

近代化・機器流用車両

T4D-C、B4D-C: ハレ市電で制御装置を電機子チョッパ制御方式に変更しました。
T4D-MS、T4D-MT、B4D-MS、TB4D: ドレスデン市電で車体整備や制御装置の更新を実施しました。
T4D-M、B4D-M、B4D-NF: ライプツィヒ市電で車体・座席の改修、低床化改造などが行われました。
T4DM、T4DC、B4DM: マクデブルク市電で車内改装や制御装置の換装が行われました。
"Vinway"（T4UA）: ヴィーンヌィツャ市電でT4SUの台車や機器を流用して製造されました。
"ブクル1"（Burur 1）: ブカレスト市電でT4Rの機器を流用して製造されました。

その他の事例

T4D/G: ドレスデン市電で貨物輸送用に改造された車両です。
カーゴトラム: ドレスデン市電でフォルクスワーゲン社の部品輸送に使用される電動貨車で、台車はT4のものが流用されています。

現在の状況

1990年代以降、超低床電車の導入に伴い、T4・B4の廃車が進んでいます。しかし、一部車両は平壌、ソフィア、アラドなどへ譲渡され、活躍を続けています。

関連車両

ライプツィヒ市電NB4形電車：T4の後方に連結される低床付随車です。

タトラT4は、各都市のニーズに合わせて様々な改造が施され、東欧の路面電車を支えてきました。その歴史は、各都市の交通事情や技術革新の変遷を物語っています。

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