タバスコキャット

タバスコキャット：アメリカ二冠馬の栄光と悲劇

タバスコキャットは、アメリカ合衆国で生産された競走馬にして、後に種牡馬としても名を馳せたサラブレッドである。その競走馬としてのキャリアは輝かしく、特に1994年のアメリカクラシック二冠競走、プリークネスステークスとベルモントステークス制覇がその名を歴史に刻んだ。

1993年7月、ベルモントパーク競馬場でのデビュー戦では7着と振るわなかったものの、その後は着実に力をつけ、3戦目で初勝利を飾る。続くアローワンス競走、ブラックタイプ競走のフォートスプリングステークスと3連勝を達成し、勢いそのままにブリーダーズカップ・ジュヴェナイルに出走。ここではブロッコに次ぐ3着という好成績を残した。しかし、このレース直前には、サンタアニタ競馬場でタバスコキャットが脱走し、それを止めようとした調教師ウェイン・ルーカスの息子ジェフ・ルーカスと衝突するというアクシデントが発生。ジェフ・ルーカスは重傷を負い、長期にわたる昏睡状態を余儀なくされた。彼はその後職場復帰を果たしたものの、後遺症に苦しみ、2016年に58歳で亡くなった。

3歳になったタバスコキャットは、G3競走エルカミーノレアルダービーで重賞初制覇を飾る。続くG2競走サンラファエルステークスも制し、サンタアニタダービーではブロッコに次ぐ2着と好走。いよいよ三冠路線への期待が高まった。しかし、ケンタッキーダービーでは6着と敗れ、その期待は一瞬にして打ち砕かれた。しかし、彼はすぐに復活。プリークネスステークスではゴーフォージンを4分の3馬身差で下し、続くベルモントステークスでもゴーフォージンを2馬身突き放し、見事二冠を達成してみせた。

その後もジムダンディステークスで2着に入るなど活躍を続けたが、トラヴァーズステークスではホーリーブルに大きく差をつけられて3着に敗れる。秋にはリステッド競走ケンタッキーカップクラシックステークスを制するものの、ジョッキークラブゴールドカップステークスでは4着、ブリーダーズカップ・クラシックではコンサーンの2着、芝のハリウッドダービーでは8着と、徐々に下降線を辿り、これが彼の最後のレースとなった。

引退後はオーバーブルックファームで種牡馬となり、数々の優秀な産駒を残した。エイコーンステークス優勝馬アイランドサンド、ハリウッドスターレットステークス優勝馬ハビブティ、サンカルロスステークス優勝馬スノーリッジなど、その産駒は北米の競馬界で活躍。2000年には北アメリカセカンドクロップチャンピオンサイアーにも選出された。しかし、その輝かしい功績も長くは続かず、2000年秋には日本へ輸出され、日本軽種馬協会の静内種馬場に繋養された。日本では3年間で約300頭に種付けを行い、その中で生まれた産駒は数々のレースで好成績を残した。しかし、2004年3月6日、種付け中に心臓麻痺で急死するという悲劇に見舞われた。彼の血統は、桜花賞馬オグリローマンとの仔であるオグリホット（ウイナーカップ優勝）など、日本競馬界にもその足跡を残している。

タバスコキャットの生涯は、競走馬としての華々しい成功と、種牡馬としての貢献、そして突然の死というドラマチックな物語である。彼の活躍は、多くの競馬ファンに感動と記憶を与え続け、その名はこれからも語り継がれていくであろう。

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