ターハー・ヤースィーン・ラマダーン

ターハー・ヤースィーン・ラマダーンの生涯

ターハー・ヤースィーン・ラマダーン（1938年2月22日 - 2007年3月20日）は、イラクの政治家であり、特にサッダーム・フセイン政権下での役割で知られています。彼は1979年から1991年まで第1副首相を務め、その後は副大統領に就任しました。彼の政治活動や人生については多くの論争が繰り広げられ、特にシーア派アラブ人市民の大量虐殺に関与したとして後に裁判にかけられ、最終的には死刑判決を受けました。

生い立ち

ラマダーンはイラク北部のモスルで、農家の家庭に生まれ育ちました。彼の家族はトルコのディヤルバクル出身のクルド人で、幼少期は貧困に苦しんでいたと伝えられています。高校卒業後は銀行で働いた後、陸軍に入隊。1956年には、貧しい地方に不満を抱き、非合法だったバアス党に加入し、政治活動を始めました。

1964年にはクーデターに参加し、投獄されるものの、1966年には恩赦で釈放。その後、1968年のバアス党主導のクーデターで重要な役割を果たしました。これにより彼は政権に加わり、工業相に就任しました。

バアス党政権

1968年からは革命指導評議会のメンバーとして積極的に政策決定に参加。特に石油を社会保障に利用する政策を推進しました。しかし、閣僚職に就いた当初、周囲に自身の専門知識のなさを認めつつも、国家のために働くことを強く意識していたようです。1973年のクーデター未遂事件では、犯人に対して厳しい判決を下しました。

サッダーム・フセイン政権

1979年、サッダームが大統領に就任した際、ラマダーンはサッダームの大粛清を支持し、党内での出世を果たしました。以後、彼は副首相として権力を持ちながらも、サッダームとの意見の不一致が徐々に浮き彫りとなります。特に湾岸戦争後の経済政策を巡っては激しい対立が見られました。

彼の対外政策は強硬であり、国際社会からの批判には攻撃的に応じる姿勢を崩しませんでした。また、対米関係においても挑戦的な発言を多く残しました。アメリカに対し、「英雄たちが人間爆弾に志願する」といった挑発的な発言は後に歴史的に記録されています。

逮捕と裁判

イラク戦争が始まり、サッダーム政権が崩壊した後の2003年にはラマダーンはペシュメルガに捕らえられ、アメリカ軍に引き渡されます。彼は後に人道に対する罪や大量虐殺の責任で訴追され、特にドゥジャイル事件に関わったとして裁判にかけられました。この事件では、148人の住民が暗殺未遂の報復として殺害されたことが問題視されました。

裁判では彼は無罪を主張しますが、最終的には「人道に対する罪」で終身刑の判決を受けます。その後の控訴審で、死刑判決が下され、その執行が決まりました。彼は最後の瞬間に、冤罪を主張し続け、生きることへの執着と同時に、死を迎えることとなります。

結び

ラマダーンはサッダーム・フセイン政権の中で非常に重要な地位を占めていたにもかかわらず、彼の人生は結局、変革の波に飲まれることとなりました。彼が嫌悪した貧困から脱する姿勢が最終的には政権の一部としての責任を背負わせる結果につながったのです。彼の生涯を通じての影響力や行動は、イラクの歴史において決して忘れられないものとなっています。

もう一度検索