ダイニコトブキ

1955年 5月28日に北海道浦河町で誕生したダイニコトブキは、日本のサラブレッド系種の競走馬である。豪サラの名牝ミラに連なる由緒ある牝系に属し、後の南関東競馬を代表する名伯楽、船橋の出川己代造厩舎へ入厩した。出川師はその後も「コトブキ」の名を冠する活躍馬を多数手がけることになるが、本馬はその初期の代表格と言える存在であった。なお、本文中の馬齢はすべて、2000年以前に用いられていた数え年で表記する。

3歳時

競走馬としてのキャリアは3歳から始まった。しかし、デビュー当初の成績は必ずしも順調とは言えなかった。同じ年の南関東競馬には、重賞の全日本三歳優駿を含む8戦8勝という圧倒的な成績を収めたダイゴホマレがおり、その強さが際立っていた。一方のダイニコトブキは、年内に8戦を消化したものの、条件戦でわずか2勝を挙げるにとどまり、同世代のトップグループからは水をあけられている状況だった。

4歳時：南関東での躍進

年が明け、4歳を迎えるとダイニコトブキは著しい成長を見せ、本格化を遂げる。同世代の強豪ダイゴホマレが中央競馬へ活躍の場を移したこともあり、南関東の主役へと躍り出た。4月には浦和の桜花賞、そして大井盃（現在の羽田盃）を連勝し、重賞初制覇から一気にクラシック路線の有力馬となる。特に大井盃では、後にライバルとなるカツミナミを下しての勝利であった。南関東クラシックの掉尾を飾る春の鞍（現在の東京ダービー）では、2番手追走から早めに先頭に立つ積極的な競馬を展開し、ライバルたちの追撃を封じて快勝。これにより、当時のサラブレッド系4歳馬限定で施行されていた主要重賞をすべて制覇するという偉業を達成した。

夏の浦和で開催されたゴールドカップでも、60キログラムという重い斤量を背負いながら他馬を寄せ付けず快勝。古馬との対戦においても、地元の船橋で行われたNTV盃を制するなど、その勢いは止まらなかった。しかし、この年の秋に迎えた金盃では、同じくサラブレッド系種の強豪ヨシフサに惜しくも敗れ2着となり、破竹の連勝は8でストップした。それでも本命視された秋の鞍（現在の東京大賞典）では、果敢にハナを主張し、2年前の覇者オートネとの激しい先行争いを制して主導権を握った。そのまま2600メートルの長丁場を逃げ切り、見事な勝利を収める。秋の鞍は1955年の創設以来、優勝馬は全て国営競馬（当時）や中央競馬からの移籍馬であり、ダイニコトブキは南関東競馬所属馬として初めてこの大レースを制した、歴史に名を刻む一頭となった。12月の川崎開催におけるオープン戦も楽々と勝ち切り、この4歳シーズンを18戦15勝という輝かしい成績で締めくくった。

5歳以降：中央移籍と南関東への帰還

翌年、天皇賞・春への出走を目指して中央競馬への移籍が決定する。しかし、移籍前最後のレースとなった正月の南関東重賞・新春盃では、14キログラムもの斤量差が響き、伏兵ユウセイの2着に敗れる波乱があった。中央移籍後のダイニコトブキは、期待されたほどの成績を残すことができなかった。脚部不安も抱え、結局3戦して勝利を挙げることなく、不本意な結果に終わってしまう。その後、6歳シーズンは全休し、馬体の回復に努めた。7歳になった春、かつての主戦場である船橋の出川厩舎へと復帰する。

復帰当初はB級クラスに格付けされたが、地力の違いを見せつけ、3月末の船橋における京葉盃、4月半ばの大井スプリングカップと、B級の準重賞を連勝する。この活躍により再び頭角を現し、5月に地元船橋で開催されたダイオライト記念では、同門のダイサンコトブキに続く2着と好走した。続く6月の大井記念では、久々となる重賞制覇を達成し、健在ぶりをアピール。秋の最大目標である秋の鞍でも、前年の覇者サキミドリの2着に入るなど、古豪の意地を見せた。

8歳シーズンも前半は精力的に出走し、ダイオライト記念を含む3勝を挙げる活躍を見せていたが、長年悩まされていた脚部不安が再発。これを機に競走馬を引退することとなった。引退後は、生産牧場である土肥牧場にて種牡馬となったが、サラブレッド系種という血統背景もあり、目立った産駒を送り出すことはできなかった。

血統背景

父シマタカは、自身に重賞勝ちこそなかったものの、フラストレートから繋がる名牝系マンナの出身であり、1950年の二冠馬クモノハナの全兄にあたる血統であった。種牡馬としては優秀で、ダイニコトブキの成功に加えて、1958年の菊花賞馬コマヒカリなどを輩出し、父としても名を残している。4代母の種信は、日本ダービーの前身にあたる第1回東京優駿の勝ち馬ワカタカの母として知られる。また、ダイニコトブキの半妹ミユキヒメ（父ボストニアン）の曾孫からは、東京ダービーや羽田盃を制したタカフジミノルが出ており、母系の優秀さを示している。

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