ダチア・ロガン

ダチア・ロガン：世界を駆け抜けた小型車の軌跡

ダチア・ロガンは、ルーマニアの自動車メーカー、ダチア社が製造する小型自動車です。ルノーグループの世界戦略車として位置づけられており、国や地域によってはルノーブランドで販売されるなど、グローバルな展開を見せています。

初代ロガンの誕生と革新的な低価格戦略

2004年に初登場した初代ロガンは、ルノーによるダチア社の買収（1998年）後、「プロジェクトX90」として開発されました。開発責任者であるジャン＝マリー・ウルティジェ氏は、後にルノーサムスン自動車のCEOも務める人物です。開発目標は、ルーマニアの低賃金と高度な生産技術を活かし、5000ユーロという低価格での販売でした。しかし、実際には諸事情により6000ユーロからの販売となりました。

それでも、低価格でありながらルノーの最新技術が惜しみなく投入されています。ルノーと日産の共同開発によるプラットフォーム「B0プラットフォーム」を採用し、エンジン、ギアボックス、内装部品など、他のルノー車の部品を約50％流用することでコスト削減を実現しました。

エンジンは当初、1.4リットルと1.6リットルの直列4気筒ガソリンエンジン2種類が設定され、2006年には1.5リットルの直列4気筒コモンレールディーゼルエンジンが追加されました。ボディタイプも当初は4ドアセダンのみでしたが、その後、ステーションワゴン（ロガンMCV）、バン、ピックアップトラック、そしてハッチバックのサンデロなど、バリエーションモデルが続々と登場しました。2008年にはフェイスリフトを行い、グリルデザインなどを変更しています。

バリエーションモデルの展開：MCV、ピックアップトラック

ロガンMCV（Multi Convivial Vehicle）は、2006年に発表されたステーションワゴンモデルです。セダンより全長、全高、ホイールベースが拡大され、5人乗りと7人乗りが用意されました。エンジンはセダンと共通です。また、ロガンMCVをベースにしたパネルバンであるロガンバンも2007年に発売されています。

2008年には、ロガンをベースにしたピックアップトラックがルーマニアで発売されました。その後、ブルガリア、トルコ、南アフリカ（日産NP200として）などでも販売されました。

世界各国での生産と販売：多様なブランド展開

ダチアブランドでの生産は主に東欧諸国、フランス、ドイツ、スペインなどで行われています。ルノーは、ロシア、コロンビア、モロッコ、ブラジルなどの工場でもロガンを生産し、ルノーブランドで販売しています。

メキシコでは日産がブラジル生産のロガンをOEM供給を受けて「アプリオ」として販売していましたが、2010年に販売を終了しました。イランでは「ルノー・トンダル90」として、インドではマヒンドラとの合弁会社を通じて「マヒンドラ・ベリート」として販売されていました。

ロシアでは、アフトヴァースとの共同開発により、ロガンMCVをベースにしたラーダ・ラルグスが生産されました。

2代目ロガンの登場と更なる進化

2013年には、2代目ロガンが登場しました。ロガンMCVとサンデロも同時にフルモデルチェンジを受けました。外観デザインは一新されましたが、メカニズムは初代を踏襲することで低価格を実現しています。新しいMediaNavシステム（7インチタッチスクリーンディスプレイとナビゲーションソフトウェア）の搭載やインテリアの改良などが行われました。

エンジンは、先代のバリエーションに加えて、新しい直列3気筒ターボチャージャー付き0.9リットルガソリンエンジンが追加されました。また、AMT（自動マニュアルトランスミッション）である「Dacia Easy-R」も搭載されました。

ヨーロッパ市場では、アクセス、アンビエンス、ローリエイト、ステップウェイ、プレステージなど、さまざまなグレードが用意され、顧客のニーズに対応しています。

2016年にはフェイスリフトが行われ、フロントバンパー、リアバンパー、ヘッドライトのデザインが変更されました。また、LEDデイランニングライトも採用されています。インテリアも、ステアリングホイール、ボタン類、ダッシュボードなどが変更されました。

クロスオーバー風の「ステップウェイ」グレードも登場し、車高の向上、ブラックのプラスチックパーツの追加などにより、力強いスタイルとなりました。

モータースポーツへの参戦：ニュルブルクリンク24時間レース

初代ロガンは、2021年から2023年にかけて、ニュルブルクリンク24時間レースに参戦しました。オリス・ガレージ・レーシングによって改造されたロガンは、その独特の参戦スタイルからインターネット上で話題となり、多くのファンを獲得しました。2023年のレースでクラッシュを喫し、参戦は終了しました。

まとめ

ダチア・ロガンは、低価格でありながら高い実用性と信頼性を兼ね備えた、世界中で人気のある小型車です。長年にわたるモデルチェンジと改良を経て、現在も進化を続けています。そのグローバルな展開と多様なバリエーション、そしてモータースポーツ参戦による話題性など、ダチア・ロガンの存在は今後も自動車業界において注目に値するでしょう。

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