ダッジ・ラム

ラムピックアップトラック：アメリカを代表する大型ピックアップトラックの進化

ラムは、イタリアとアメリカの自動車メーカー、フィアット・クライスラー・オートモービルズ（FCA、現ステランティス）が製造・販売するフルサイズピックアップトラックです。かつてはクライスラーのダッジブランドで販売されていましたが、2009年から独立ブランドとして展開されています。本稿では、ラムピックアップトラックの歴史、モデルごとの特徴、そしてその魅力について詳細に解説します。

初代ラム（1981年-1993年）：黎明期

初代ダッジ・ラムは、1930年代のダッジ車のボンネットマスコットに由来する名称が与えられました。しかし、デザインの平凡さ、自動変速機のみの設定、タコメーターの欠如など、快適性では他社に劣り、フォードFシリーズやシボレーC/Kシリーズに大きく販売で水をあけられました。1989年には、カミンズ製直列6気筒ディーゼルターボエンジンが追加されましたが、販売状況を劇的に改善するには至りませんでした。

ラリー競技への参戦も試みられ、1981年のWRCサファリラリーに「ラム・チャージャー」を投入。2台が完走を果たしポイントを獲得しましたが、他の2台はギアボックストラブルによりリタイヤという結果に終わっています。

2代目ラム（1994年-2001年）：デザインの革新

2代目ラムは、徹底的な顧客調査に基づいて開発されました。調査の結果、顧客はより力強く、個性的なデザインを好むことが判明したため、そのフィードバックを反映したデザインが採用されました。トラクターを思わせるフロントフェイスと大型フロントグリルは、フォードやシボレーとは一線を画す個性的なデザインとして大きな成功を収め、年間販売台数は前世代の4倍以上に増加しました。1994年には北米カー・オブ・ザ・イヤーのトラック部門を受賞するなど高い評価を獲得しましたが、それでもフォードとシボレーには販売台数で及ばない状況でした。

この世代では、インディ500ペースカーをモチーフにした限定モデル「インディペースカー限定エディション」や高性能モデル「SS/Tパッケージ」も販売されました。これらのモデルは、高出力エンジン、専用マフラー、大型ホイールなどを装備していました。

3代目ラム（2002年-2007年）：さらなる進化と多様化

3代目ラムは、エンジン、トランスミッション、サスペンション、フレームなど、多くの部分が改良されました。特徴的な大型フロントグリルはさらに大型化され、顧客の視線をさらに捉えました。4輪駆動の1500シリーズは独立懸架サスペンションを採用した一方、2500/3500シリーズは耐久性を重視してリジッドアクスルを継続採用しました。

新世代のHemiエンジンと呼ばれる5.7L V8エンジンは、独特のサウンドで多くのファンを獲得しました。年間販売台数はシリーズ最大の45万台を記録しましたが、ライバルメーカーの100万台には遠く及ばない数字でした。

この世代では、ディーゼルエンジンとハイブリッドシステムを搭載したモデルの開発も試みられましたが、技術的問題により断念。また、燃費の悪さも課題となり、2006年型乗用車の燃費番付では最下位にランクインする結果となりました。

一方で、キャビンを延長した「ラム・キャブエクステンデッド」や、世界最速のピックアップトラックとしてギネスブックに認定された「SRT-10」（8.3Lエンジン、最高速度247.3km/h）といった派生モデルも登場しました。

2005年にはフェイスリフトを受け、ヘッドライトデザインが変更され、よりアグレッシブな印象となりました。2007年には、1500シリーズのフロントドア横のエンブレムが「RAM 1500」から「RAM」に変更されています。

4代目ラム（2008年-2019年）：リアサスペンションのコイル化とデザインの刷新

4代目ラムは、デトロイトモーターショーで発表されました。5.7L Hemi V8エンジンは380馬力にパワーアップし、燃費も向上しました。しかし、最大の変更点は、従来のリーフ式からハンドリング性能を重視した5リンク式コイルサスペンションへの変更です。

デザインは先代よりも直線的で角張ったデザインとなり、リアエンブレムも変更されました。テキサス州限定の「ローンスター・エディション」も販売されました。

2011年には、日産向けにダッジ・ラムをOEM供給する計画がありましたが、クライスラーの経営破綻によりキャンセルされました。2019年には新型1500が発表された後も、「1500クラシック」として、従来のレギュラーキャブと低価格帯のモデルが継続販売されました。

5代目ラム（2019年-）：軽量化とハイブリッドシステムの導入

5代目ラムは、2018年の北米国際オートショーで発表されました。約10年ぶりのフルモデルチェンジで、外見は大きく変更され、クロスヘアグリルから六角形の「RAM」ロゴグリルに変更。ボディも軽量化されました。

パワートレインにはマイルドハイブリッドシステム「eTORQUE」が導入され、燃費が向上しました。ヘビーデューティーモデルには、カミンズ製ディーゼルエンジンが継続して搭載されています。

ラムの魅力：ディーゼルエンジンと伝統

ラムは、ライバルたちがV8ディーゼルエンジンを採用する中で、長年にわたりカミンズ製の直6ディーゼルエンジンを搭載し続けました。このカミンズエンジンは、トレーラー牽引用途で高い人気を誇っています。

また、ラムは1994年と2003年にモーター・トレンド誌のトラック・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど、高い評価を得ています。かつては「ダッジ・ラムバン」という商用バンも存在しましたが、2003年に生産終了しています。

ラムは、アメリカを代表するピックアップトラックとして、長年にわたり進化を続け、現在も高い人気を誇っています。その歴史、性能、デザイン、そして伝統は、多くのファンを魅了し続けています。

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