ダディ竹千代

ダディ竹千代は、1953年5月25日に生まれ、2024年5月9日に惜しまれつつ亡くなった日本のロックミュージシャン、音楽プロデューサーです。本名を加治木剛といい、作詞・作曲活動ではこの名義を用いていました。彼の音楽キャリアは、1980年代のコミックバンド「ダディ竹千代&東京おとぼけCATS」のメインボーカリスト兼リーダーとしての活動が最もよく知られています。

カルメン・マキ＆OZとの関わり

ダディ竹千代は、鹿児島県加世田市で生まれ、幼少期に神奈川県横浜市に転居しました。高校卒業後、ライブ活動を行う傍ら、カルメン・マキ＆OZのスタッフとして活動を開始します。ギタリストの春日博文が高校時代の同級生であり、その縁からカルメン・マキ＆OZの楽曲の作詞を担当するようになります。一部楽曲では作曲も手がけ、マネージャーとしてもバンドを支えました。

ダディ竹千代&東京おとぼけCATSでの活躍

1976年にダディ竹千代は「ダディ竹千代&東京おとぼけCATS」を結成します。1978年にはビクターからシングル「電気クラゲ」でデビューを果たしました。1980年に1stアルバム『First』、1981年に2ndアルバム『イデオット・プロット』をリリースしますが、同年にバンドは解散しました。しかしその後、1980年代半ばと1990年代初頭に一時的に再結成し、2度目の再結成時にはスタジオアルバム『伊賀の影丸』を発表しました。現在までに未発表曲集1枚、ライブアルバム2枚がリリースされています。

東京おとぼけCATSは、著名アーティストのパロディコピーや挑発的な歌詞、そしてベース担当のなかよし三郎による、大根や豆腐を使った過激なチョッパー奏法（スラップ奏法）で知られていました。しかし、そのメンバーの演奏テクニックは確かで、そうる透や後に竜童組に参加する川崎真弘（当時ラッキー川崎）など、実力派ミュージシャンが在籍していました。ファンクバンドとしての評価も高く、その実力は確かなものでした。

しかし、その過激かつ破天荒な活動スタイルが災いし、多くのライブハウスで出入り禁止となることもありました。渋谷時代の屋根裏での定例ライブが主な活動拠点となり、日本青年館でのコンサートも開催しました。変わったところでは、東京タワーの特別展望台で年越ライブを行ったこともあります。当時のキャッチフレーズとして「東京タワーも、東京おとぼけキャッツがコンサートに使ってからは、コンサート会場にもなる」と豪語していましたが、実際には、Club333ができるまでライブが行われたことはありませんでした。

幅広い交友関係

1980年代の日本の音楽界において、ダディ竹千代は広い交友関係を持っていました。自らを「日本ロック界のドン」や「ロック界の笹川良一」と称することもありましたが、その際には「本家との違いは金があるかないかの違いだ」とジョークを交えて語っていました。特に山下達郎や竹内まりやとの親交は深く、おとぼけCATSの3rdシングル「偽りのDJ」は山下が作曲し、1stアルバムには竹内が参加しています。また、山下達郎、竹内まりや、世良公則、桑田佳祐と共に「竹野屋セントラルヒーティング」というバンドをラジオ内で結成したこともあります。

ラジオDJとしての活動

1980年4月から、ダディ竹千代はニッポン放送の深夜番組「オールナイトニッポン」のレギュラーパーソナリティとして登場しました。水曜2部から始まり、7月からは木曜1部に昇格しました。番組では、田舎自慢を競い合う「日本のチベットを求めて」や「あれはどうなってるんだ？コーナー」など、リスナー参加型の企画や、当時流行していた芳賀書店のビニ本プレゼントなど、過激な内容で人気を博しました。しかし、ARBやアナーキーをゲストに招いた際、スタジオで大騒ぎをしたことが問題となり、番組は年内で打ち切りとなりました。その後、同じ時間帯を引き継いだのは、当時人気絶頂だったツービートのビートたけし（北野武）でした。また、これ以前にもラジオ大阪の『JAM JAM 11』で水曜日パーソナリティを務めていました（1978年10月 - 1980年4月）。

解散後の活動

1981年の東京おとぼけCATS解散後は、プロデュースなどの裏方としての活動をメインに行いつつ、ソロ活動やおとぼけCATSの再結成も行いました。1987年には自身初のソロアルバム『チェースト』を発表。また、テレビ番組『ピッカピカ音楽館』の音楽プロデュースを岡井大二と共に担当し、一部楽曲では歌唱も担当しました。1993年には中村吉右衛門が出演したハウス食品のカレーのCMソングに楽曲が使用されています。

おとぼけCATSの3度目の解散後は、一時的に第一線から退き、芸能事務所経営やアーティストプロデュースなどの裏方として活動していました。しかし、2007年に新橋ZZというライブハウスのプロデュースをきっかけに音楽活動を再開。その後も精力的に活動を続けました。2018年4月30日には新橋ZZが閉店し、同年5月より二子玉川にGEMINI Theaterをオープンしました。

2024年4月16日には、自伝的エッセイ小説『突然の青春』まえ・うしろ（全2巻）をAmazonでリリース。執筆、作詞、作曲、プロデュース、ライブハウス経営など多岐に渡り、日本の音楽界に貢献しました。自伝エッセイには山下達郎、竹内まりや、Cherなど、親交のあった人物とのエピソードが綴られています。2024年5月9日、慢性心不全急性増悪のため、東京都内の自宅で逝去しました。70歳でした。山下達郎は、5月26日の『山下達郎のサンデー・ソングブック』で、ダディ竹千代&東京おとぼけCATSの「偽りのDJ」を追悼として放送しました。

2024年6月2日には、自伝的エッセイ小説の最終原稿をまとめた『突然の青春』ななめがリリースされました。電子版『突然の青春』に未収録の原稿や、ゆかりのある人物から提供された秘蔵写真、「年表・加治木剛のあゆみ」などが収録されています。2024年7月15日には「ダディ竹千代を送る会」、7月16日、17日には「ダディ竹千代を偲ぶ会」が二子玉川ジェミニシアターにて開催されました。

共著

難波弘之、井上貴子 編『証言! 日本のロック70’s ニューロック/ハードロック/プログレッシヴロック編』アルテスパブリッシング、2009年4月8日。
難波弘之、井上貴子 編『証言! 日本のロック70’s Vol.2 パンク・ロック編』アルテスパブリッシング、2009年12月17日。


ダディ竹千代は、コミックバンドの枠にとどまらず、日本のロックシーンにおいて多岐にわたる活動を展開し、多くの人々に影響を与えた音楽家でした。

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