ダフニ修道院、オシオス・ルカス修道院、ヒオス島のネア・モニ修道院

ギリシャに位置するダフニ修道院、オシオス・ルカス修道院、そしてヒオス島のネア・モニ修道院は、東ローマ帝国時代に建設された修道院群であり、その歴史的、芸術的価値からユネスコの世界遺産に登録されています。これらの修道院は、地理的には離れて存在しますが、いずれもビザンティン時代中期に建てられ、共通の建築様式と芸術的特徴を持っています。

これらの修道院の中心となるのは、中央聖堂（カトリコン）であり、中期ビザンティン建築に特有のスクィンチ式教会堂の形式で建てられています。特に注目すべきは、11世紀に制作されたモザイク装飾で、ギリシャ国内でこの時代のモザイクが現存するのは、これらの3つの修道院のみです。これらのモザイクは、ビザンティン美術の精華を示す貴重な証拠となっています。

以下に、各修道院の詳細を説明します。

ダフニ修道院

アテネ近郊のダフニに位置するこの修道院は、設立に関する記録がほとんど残っておらず、多くのことが謎に包まれています。しかし、中央聖堂のモザイク様式から、11世紀に設立されたと考えられています。中央聖堂は複合型スクィンチ式の教会堂であり、成熟した中期ビザンティン美術のモザイクを鑑賞することができます。その美しいモザイクは、当時の高度な芸術性を物語っています。

オシオス・ルカス修道院

中央ギリシャのヘリコン山麓にあるこの修道院は、9世紀に奇跡を起こしたとされる克肖者ルカのために建設されました。中央聖堂は複合型スクィンチ式の教会堂ですが、それに加えて4円柱式内接十字型の生神女聖堂（テオトコス聖堂）が付属しています。生神女聖堂は、建物としては中央聖堂よりも古く、966年頃に、中央聖堂は1048年頃に完成したと考えられています。こちらも建設の経緯に関する詳しい資料は残されていませんが、その建築様式と装飾は、ビザンティン美術の重要な一例を示しています。

ネア・モニ修道院

東エーゲ海のヒオス島に位置するこの修道院は、他の2つとは異なり、建設の経緯や年代がある程度判明しています。修道院の起源は、ヒオス島の修道士ニケタスとヨアンニスが、追放中のコンスタンティノス・モノマコスが皇帝になると予言し、それが現実となったことに遡ります。皇帝となったコンスタンティノス9世は、その恩に報いるために修道院を建設し、多大な寄進と特権を与えました。中央聖堂は、単純型スクィンチ式教会堂と呼ばれる形式で建てられています。この修道院の歴史的背景は、ビザンティン帝国の政治と宗教の関わりを示す貴重な事例です。

これらの修道院群は、世界遺産登録基準の中でも特に以下の2つを満たしていると評価されています。

(1) 人類の創造的才能を表現する傑作であること。
(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例であること。

これらの修道院は、ビザンティン建築の優れた例であるだけでなく、当時の宗教と美術、そして歴史的背景を今に伝える貴重な遺産です。それぞれの修道院が持つ独自の歴史と芸術的価値は、訪れる人々を魅了し続けています。

関連事項

ビザンティン建築

参考文献

シリル・マンゴー著・飯田喜四郎訳『ビザンティン建築』（本の友社） ISBN 4894392739
ジョン・ラウデン著・益田朋幸訳『初期キリスト教美術・ビザンティン美術』（岩波書店） ISBN 978-4-00-008923-4
益田朋幸著『世界歴史の旅　ビザンティン』（山川出版社）ISBN 9784634633100

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