克肖者

克肖者（こくしょうしゃ）とは

正教会において、聖人に与えられる称号の一つが「克肖者（こくしょうしゃ）」です。これは、ギリシア語の「Όσιος（オシオス）」、ロシア語の「Преподобный」、英語の「Venerable」に相当する言葉で、日本語では「克肖者」と訳されます。

女性の聖人の場合は「克肖女（こくしょうじょ）」と呼ばれ、それぞれギリシア語では「Οσία（オシア）」、ロシア語では「Преподобная」と表記されます。

正教会において、この「克肖者」は最も一般的な聖人の称号とされ、亜使徒、致命者、廉施者、登塔者、佯狂者など、他の様々な聖人の称号を含む総称としても使われます。特に修道士であった聖人に用いられることが多いのが特徴です。

語源と意味

「肖」という言葉は、正教会において、アダムとエヴァ（イブ）の罪によって曇ってしまった「神の似姿」を指す言葉として使われます。したがって、「克肖者」とは、「神に似た人間の本来の姿を回復した聖人」という意味になります。

さらに、イイスス・ハリストス（イエス・キリストのギリシア語読み）は真の神であり、同時に真の人であったとされているため、克肖者・克肖女はイイスス・ハリストスに非常に良く似た存在であるとも考えられます。

他の称号との組み合わせ

克肖者は、単独で用いられるだけでなく、「克肖致命者」や「克肖者表信者」のように、他の称号と組み合わせて用いられることも多くあります。これは、その聖人がどのような徳を備えていたかを示すためのものです。

カトリック教会との違い

英語の「Venerable」は、カトリック教会では「尊者」に相当しますが、正教会の「克肖者」とカトリック教会の「尊者」は、意味合いが全く異なります。正教会では、聖人として認められるための段階の一つである尊者という概念はありません。

著名な克肖者

以下に、年代順に著名な克肖者・克肖女の例を挙げます。

聖大アントニイ（251年頃 - 356年）
エギペトの克肖者聖大マカリイ（300年頃 - 391年頃）
シリアのエフレム（306年頃 - 373年）
エジプトのマリア（6世紀）
表信者克肖者聖マクシム（580年 – 662年）
シリアのイサアク（7世紀）
ダマスコのイオアン（676年頃 - 749年）
克肖者表信者ワシリイ（不詳 - 750年）
リラのイオアン（876年頃 – 946年頃）
アトスの聖神父アファナシイ（920年頃 - 1000年頃）
ラドネジのセルギイ（1321年か1322年頃 – 1392年）
アンドレイ・ルブリョフ（1360年頃 - 1430年）
マクシム・グレク（1475年頃 - 1556年）
サロフのセラフィム（1759年 - 1833年）

これらの聖人は、信仰と徳において傑出しており、正教会において特別な尊敬を集めています。

まとめ

克肖者は、正教会において非常に重要な意味を持つ称号です。それは、神の似姿を回復し、イイスス・ハリストスに近づいた聖人たちの証であり、信徒にとって模範となる存在です。

参考文献

『曙光　長司祭牛丸康夫遺稿集』11頁（1995年、牛丸忍発行、及川信編集）

関連項目

克肖致命者
登塔者
表信者
神学者

外部リンク

正教会ピンポイントガイド - ウェイバックマシン（2019年1月1日アーカイブ分）
* 正教の霊的勧告集 - 名古屋ハリストス正教会のページ

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