ダマスカスのアポロドーロス

ダマスカスのアポロドーロス

ダマスカスのアポロドーロスは、2世紀にローマ帝国で活躍したギリシャ人です。シリア属州のダマスカスで生まれ、土木技術者、建築家、設計士、彫刻家として名を馳せました。

トラヤヌス帝の時代

アポロドーロスは、トラヤヌス帝に才能を認められ、重用されました。105年から106年の第二次ダキア戦争では、ドナウ川に架ける壮大なトラヤヌス橋の建設を指揮しました。ローマ市内では、トラヤヌスのフォルムやトラヤヌスの記念柱などの建設に携わりました。また、ベネヴェントとアンコーナにあるトラヤヌスの凱旋門も彼の設計によるものです。スペインのアルコネタール橋の建設にも関わったとされています。

ハドリアヌス帝の時代

ドミティアヌス帝が着工した劇場の再建・完成もアポロドーロスの手によるものです。また、現在のパンテオンはハドリアヌス帝が再建したものですが、この際の建築家もアポロドーロスであるという説があります。

しかし、アポロドーロスはハドリアヌス帝の建築家としての技量を批判したため、帝の怒りを買い、追放されたと伝えられています。架空の罪で告発され、非業の死を遂げたとも言われています。彼はまた、ハドリアヌス帝に『攻城兵器』という論文を献呈しました。

トラヤヌスの記念柱

フォルムの中心にそびえ立つトラヤヌスの記念柱は、戦勝記念碑としては最初期のものです。アポロドーロスの設計によるこの記念柱は、彼の建築家としての才能を示す代表的な作品の一つと言えるでしょう。

アポロドーロスの死に関する逸話

カッシウス・ディオは、アポロドーロスの死について、ハドリアヌス帝に対する元老院の敵意が、帝の治世後も続いていたことを示す逸話を書き残しています。しかし、この逸話には多くの矛盾点があり、史実ではないとする学者や歴史家も存在します。

アポロドーロスの生涯は、ローマ帝国の隆盛期における建築技術の発展と、権力者の思惑に翻弄された技術者の悲劇を物語るものとして、今もなお語り継がれています。

参考文献

この記事にはアメリカ合衆国内で著作権が消滅した次の百科事典本文を含む: Chisholm, Hugh, ed. (1911). "Apollodorus, of Damascus". Encyclopædia Britannica (英語). Vol. 2 (11th ed.). Cambridge University Press. p. 186.
James Grout: 'Apollodorus of Damascus,' part of the Encyclopædia Romana

もう一度検索