ダヴィド・グリマル

フランスのヴァイオリニスト、ダヴィド・グリマルは1973年に生まれました。彼はソリストとして国際的な舞台で活躍する一方で、自身が設立した独特な編成の室内アンサンブル「レ・ディソナンス」を率いて、既存のオーケストラの枠を超えた探求的な音楽活動を展開しています。

著名な学者一家に生まれて

グリマルは、学術分野で高い評価を得ている家庭に育ちました。祖父は著名な歴史家でありラテン学者でもあったピエール・グリマル（1912年-1996年）、父はコレージュ・ド・フランスの教授としてエジプト学を専門としたニコラ・グリマル（1948年-）です。このような知的な環境の中で、彼は育ちました。

音楽への道のり

父がエジプト学者であったため、ダヴィドは幼少期をエジプトのカイロで過ごしました。5歳になった時、彼はこの地で初めてヴァイオリンに触れる機会を得ます。初期の手ほどきを受けたのは、かつてフランスの国民的スーパースター、クロード・フランソワのギター教師を務めたと伝えられる人物でした。この師は、従来の楽譜を読み解くというよりも、直感的かつ実践的なアプローチで音楽を教え、幼いダヴィドに音楽の楽しさを伝えたといいます。楽譜の読み方を学んだのは、それからしばらく経った11歳の時でした。

フランスへ帰国後、彼はパリ政治学院とパリ国立高等音楽院という、それぞれ異なる分野の最高峰を目指す二つの学府に入学しました。しかし、パリ政治学院は一年で中退し、音楽の道を本格的に追求することを決意します。パリ国立高等音楽院では、ヴァイオリニストのレジス・パスキエに師事し、専門的な技術と音楽性を磨きました。さらに、彼はフィリップ・ヒルシュホルン、シュロモ・ミンツ、アイザック・スターンといった、当時世界的に活躍していた巨匠たちのマスタークラスなどで薫陶を受けました。特にフィリップ・ヒルシュホルンとの出会いは、彼のヴァイオリニストとしての将来を決定づける大きな転換点となり、プロとして生きていく決意を固めるに至ったと言われています。

彼はパリ国立高等音楽院を、ヴァイオリンと室内楽の両部門でプルミエ・プリ（首席）を獲得して卒業しました。この輝かしい卒業は、彼の才能と努力の証であり、その後のキャリアの基盤となりました。

キャリアと共演者

音楽院卒業以来、ダヴィド・グリマルはソリストとして世界中の主要なオーケストラと共演し、リサイタルや音楽祭にも多数出演しています。また、彼は自身のルーツである室内楽にも深く関わり、特に彼が2004年に創設した室内アンサンブル「レ・ディソナンス」との活動は、彼のキャリアにおいて重要な位置を占めています。レ・ディソナンスは、指揮者なしで演奏するというユニークなスタイルを持ち、演奏者一人ひとりが主体性を持って音楽を創り上げることを目指しています。このアンサンブルを通じて、彼はクラシック音楽の新たな可能性を探求し続けています。

これまでに、彼は数多くの著名な音楽家たちと共演を重ねてきました。主な共演者には、以下のような名前が挙げられます。

指揮者：エマニュエル・クリヴィヌ、クリストフ・エッシェンバッハ
ピアニスト：ボリス・ベレゾフスキー、ヴァレリー・アファナシエフ、ジョルジュ・プリュデルマシェール
チェリスト：グザヴィエ・フィリップ、マルク・コペイ、トゥルルス・モルク
ヴィオリスト：ジェラール・コセ、ユーリ・バシュメット
* フルーティスト：ジェームズ・ゴールウェイ

これらの共演を通じて、彼は常に音楽的な対話を深め、自身の芸術性を高めています。

使用楽器

ダヴィド・グリマルが演奏に使用しているのは、名工アントニオ・ストラディヴァリウスによって1710年に製作された貴重なヴァイオリンです。この楽器は「Ex Roederer」の愛称で知られており、ブラジルのイピランガ財閥から貸与されています。歴史ある名器の響きは、彼の奏でる音楽に深みと輝きを与えています。

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