レジス・パスキエ
フランスを代表するヴァイオリニストの一人、レジス・パスキエは、1945年10月12日に生を受けました。彼が生まれたパスキエ家は、父ピエール、叔父のジャン、エティエンヌが伝説的なパスキエ三重奏団を創設した音楽一家であり、兄のブルーノもヴィオラ奏者という、まさに音楽に囲まれた環境で育ちました。
パスキエの才能は幼い頃から顕著で、わずか12歳にしてパリ国立高等音楽院のヴァイオリン科と室内楽科を首席で卒業するという、驚異的な経歴を持っています。そのわずか2年後にはニューヨークでリサイタル・デビューを果たし、国際舞台への第一歩を踏み出しました。ニューヨーク滞在中は、アイザック・スターン、ダヴィッド・オイストラフ、ピエール・フルニエ、ナディア・ブーランジェといった20世紀を代表する巨匠たち、そして同じくフランス出身のヴァイオリニスト、ジノ・フランチェスカッティから貴重な薫陶を受けました。特にフランチェスカッティとは、バッハの「2つのヴァイオリンのための協奏曲」の録音で共演しており、師弟関係を超えた音楽的な繋がりを示しています（この録音はドイツ・グラモフォンよりリリースされました）。
以来、パスキエは世界的なソリストとして精力的な演奏活動を展開しています。ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団とのチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を皮切りに、シャルル・ミュンシュ、ロリン・マゼール、レナード・バーンスタイン、シャルル・デュトワ、小澤征爾、ジョルジュ・プレートル、ジャン・フルネ、マイケル・ティルソン・トーマス、エド・デ・ワールト、ミシェル・プラッソン、マティアス・バーメルトといった世界的名指揮者たち、さらには大友直人、下野竜也、高関健、大植英次ら日本の指揮者とも共演を重ねています。共演オーケストラも、欧米はもとより、日本のNHK交響楽団、東京交響楽団、群馬交響楽団、京都市交響楽団を含む主要オーケストラ、オーストラリア、南米など、世界各地に及んでいます。日本で開催される国際音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」の常連として、日本の聴衆にも広く親しまれています。
ソロ活動と並行して、室内楽奏者としても極めて重要な役割を果たしています。兄のヴィオラ奏者ブルーノ、チェロ奏者のロラン・ピドゥーと共に「新パスキエ三重奏団」を結成し、家族の音楽的伝統を受け継ぎました。また、ピドゥーとピアニストのジャン＝クロード・ペヌティエとのピアノトリオでも活動し、数々の名演を残しています。これらの室内楽活動は、彼の音楽性の深さとアンサンブルへの情熱を示しています。さらに、1977年から1986年にかけては、フランス国立管弦楽団のコンサートマスターを務め、オーケストラの中心的な役割も担いました。
その長年の功績に対し、ジョルジュ・エネスク賞、シャルル・クロス賞、フランスのレコード・アカデミー賞など、国内外で多くの栄誉に輝いています。特に1985年には、フランス政府より芸術文化勲章を授与され、国家レベルでの評価を受けました。
パスキエが愛用する楽器もまた、そのキャリアを彩る重要な要素です。1998年以降は、稀少な1734年製グァルネリ・デル・ジェスを使用しています。それ以前には、ヴァイオリニスト、ミッシャ・エルマンが所有していた1735年製ストラディヴァリウス「Samazeuilh」をはじめ、1730年製や1742年製のドメニコ・モンタニャーナなど、名器を弾き継いできました。
教育者としてのパスキエもまた、特筆すべき存在です。1985年から2011年まで、母校であるパリ国立高等音楽院のヴァイオリン科および室内楽科で教鞭を執り、ダヴィド・グリマルや瀬﨑明日香をはじめとする多くの優秀なヴァイオリニストを育成しました。現在はパリ・エコールノルマル音楽院の教授として、若い音楽家たちの指導にあたっています。日本でも、京都フランス音楽アカデミーやいしかわミュージックアカデミーなどの主要な講習会で定期的にマスタークラスを行い、日本の学生たちにも直接指導を行っています。また、モントリオール国際音楽コンクールや仙台国際音楽コンクールといった国際的なコンクールで審査員を務めるなど、次世代の育成に深く関わっています。
パスキエの豊かな音楽性は、数多くの録音によっても後世に伝えられています。ソロ、室内楽、協奏曲と多岐にわたり、そのレパートリーはクラシックの主要作品を網羅しています。
主な録音には以下のようなものがあります。
パガニーニ：24のカプリース
ベートーヴェン：ヴァイオリン・ソナタ全曲（ピアノ：ジャン＝クロード・ペヌティエ）
イザイ：無伴奏ヴァイオリン・ソナタ全曲
バッハ：無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
ブラームス、ラヴェル、フォーレ、ドビュッシー、プーランク、フランクなどのヴァイオリンとピアノのためのソナタや作品集
シューベルト、チャイコフスキー、ショスタコーヴィチ、ラフマニノフなどのピアノ三重奏曲
シューベルト：弦楽三重奏曲
ブラームス：ピアノ四重奏曲、弦楽六重奏曲
ショーソン：ヴァイオリン、ピアノと弦楽四重奏のためのコンセール
バルトーク：2つのヴァイオリンのための44のデュオ（ジェラール・プーレと共演）
モーツァルト：クラリネット五重奏曲、ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲、ヴァイオリン協奏曲全集、協奏交響曲
バッハ：2つのヴァイオリンのための協奏曲（ジノ・フランチェスカッティと共演）
* チャイコフスキー、ベートーヴェン、プロコフィエフ、ベルク、バルトーク、シベリウス、ブラームス、バーンスタイン、ヴァイルなどのヴァイオリン協奏曲・管弦楽作品集
これらの録音は、彼の円熟した技術、深い音楽性、そして多様なアンサンブル能力を証明しています。
レジス・パスキエは、早熟な天才としてキャリアをスタートさせ、ソリスト、室内楽奏者、オーケストラのリーダー、そして教育者として、多岐にわたる活動を通じてクラシック音楽界に確固たる地位を築きました。その音楽は、世代を超えて多くの聴衆に感動を与え続けています。
パスキエの才能は幼い頃から顕著で、わずか12歳にしてパリ国立高等音楽院のヴァイオリン科と室内楽科を首席で卒業するという、驚異的な経歴を持っています。そのわずか2年後にはニューヨークでリサイタル・デビューを果たし、国際舞台への第一歩を踏み出しました。ニューヨーク滞在中は、アイザック・スターン、ダヴィッド・オイストラフ、ピエール・フルニエ、ナディア・ブーランジェといった20世紀を代表する巨匠たち、そして同じくフランス出身のヴァイオリニスト、ジノ・フランチェスカッティから貴重な薫陶を受けました。特にフランチェスカッティとは、バッハの「2つのヴァイオリンのための協奏曲」の録音で共演しており、師弟関係を超えた音楽的な繋がりを示しています（この録音はドイツ・グラモフォンよりリリースされました）。
以来、パスキエは世界的なソリストとして精力的な演奏活動を展開しています。ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団とのチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を皮切りに、シャルル・ミュンシュ、ロリン・マゼール、レナード・バーンスタイン、シャルル・デュトワ、小澤征爾、ジョルジュ・プレートル、ジャン・フルネ、マイケル・ティルソン・トーマス、エド・デ・ワールト、ミシェル・プラッソン、マティアス・バーメルトといった世界的名指揮者たち、さらには大友直人、下野竜也、高関健、大植英次ら日本の指揮者とも共演を重ねています。共演オーケストラも、欧米はもとより、日本のNHK交響楽団、東京交響楽団、群馬交響楽団、京都市交響楽団を含む主要オーケストラ、オーストラリア、南米など、世界各地に及んでいます。日本で開催される国際音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」の常連として、日本の聴衆にも広く親しまれています。
ソロ活動と並行して、室内楽奏者としても極めて重要な役割を果たしています。兄のヴィオラ奏者ブルーノ、チェロ奏者のロラン・ピドゥーと共に「新パスキエ三重奏団」を結成し、家族の音楽的伝統を受け継ぎました。また、ピドゥーとピアニストのジャン＝クロード・ペヌティエとのピアノトリオでも活動し、数々の名演を残しています。これらの室内楽活動は、彼の音楽性の深さとアンサンブルへの情熱を示しています。さらに、1977年から1986年にかけては、フランス国立管弦楽団のコンサートマスターを務め、オーケストラの中心的な役割も担いました。
その長年の功績に対し、ジョルジュ・エネスク賞、シャルル・クロス賞、フランスのレコード・アカデミー賞など、国内外で多くの栄誉に輝いています。特に1985年には、フランス政府より芸術文化勲章を授与され、国家レベルでの評価を受けました。
パスキエが愛用する楽器もまた、そのキャリアを彩る重要な要素です。1998年以降は、稀少な1734年製グァルネリ・デル・ジェスを使用しています。それ以前には、ヴァイオリニスト、ミッシャ・エルマンが所有していた1735年製ストラディヴァリウス「Samazeuilh」をはじめ、1730年製や1742年製のドメニコ・モンタニャーナなど、名器を弾き継いできました。
教育者としてのパスキエもまた、特筆すべき存在です。1985年から2011年まで、母校であるパリ国立高等音楽院のヴァイオリン科および室内楽科で教鞭を執り、ダヴィド・グリマルや瀬﨑明日香をはじめとする多くの優秀なヴァイオリニストを育成しました。現在はパリ・エコールノルマル音楽院の教授として、若い音楽家たちの指導にあたっています。日本でも、京都フランス音楽アカデミーやいしかわミュージックアカデミーなどの主要な講習会で定期的にマスタークラスを行い、日本の学生たちにも直接指導を行っています。また、モントリオール国際音楽コンクールや仙台国際音楽コンクールといった国際的なコンクールで審査員を務めるなど、次世代の育成に深く関わっています。
パスキエの豊かな音楽性は、数多くの録音によっても後世に伝えられています。ソロ、室内楽、協奏曲と多岐にわたり、そのレパートリーはクラシックの主要作品を網羅しています。
主な録音には以下のようなものがあります。
パガニーニ：24のカプリース
ベートーヴェン：ヴァイオリン・ソナタ全曲（ピアノ：ジャン＝クロード・ペヌティエ）
イザイ：無伴奏ヴァイオリン・ソナタ全曲
バッハ：無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
ブラームス、ラヴェル、フォーレ、ドビュッシー、プーランク、フランクなどのヴァイオリンとピアノのためのソナタや作品集
シューベルト、チャイコフスキー、ショスタコーヴィチ、ラフマニノフなどのピアノ三重奏曲
シューベルト：弦楽三重奏曲
ブラームス：ピアノ四重奏曲、弦楽六重奏曲
ショーソン：ヴァイオリン、ピアノと弦楽四重奏のためのコンセール
バルトーク：2つのヴァイオリンのための44のデュオ（ジェラール・プーレと共演）
モーツァルト：クラリネット五重奏曲、ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲、ヴァイオリン協奏曲全集、協奏交響曲
バッハ：2つのヴァイオリンのための協奏曲（ジノ・フランチェスカッティと共演）
* チャイコフスキー、ベートーヴェン、プロコフィエフ、ベルク、バルトーク、シベリウス、ブラームス、バーンスタイン、ヴァイルなどのヴァイオリン協奏曲・管弦楽作品集
これらの録音は、彼の円熟した技術、深い音楽性、そして多様なアンサンブル能力を証明しています。
レジス・パスキエは、早熟な天才としてキャリアをスタートさせ、ソリスト、室内楽奏者、オーケストラのリーダー、そして教育者として、多岐にわたる活動を通じてクラシック音楽界に確固たる地位を築きました。その音楽は、世代を超えて多くの聴衆に感動を与え続けています。
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