チザルピーノETR470電車

ETR470電車：スイスとイタリアを結んだペンドリーノ

ETR470電車（Elettro Treno Rapido 470）は、スイスのチザルピーノ社が所有し、主にスイス各地とイタリア各地を結ぶ国際列車に使用されていた車体傾斜式電車です。ペンドリーノの第二世代であるETR460、ETR480をベースに、スイス、ドイツ、オーストリアの異なる電化方式と信号装置に対応した設備を追加した点が特徴です。

チザルピーノ社による運行

チザルピーノ社による運行では、スイスのチューリヒ、ジュネーヴ、バーゼルなどと、イタリアのミラノ、フィレンツェ、ヴェネツィア、トリエステを結ぶ路線で活躍しました。運行開始当初の1998年3月から2006年12月のダイヤ改正までは、ドイツのシュトゥットガルト中央駅にも乗り入れていましたが、その後はチューリヒ - シュトゥットガルト間は同じ車体傾斜車両のICE-Tに置き換えられました。ETR470はチューリヒ - トリエステ間の路線に再投入されました。

スイス国鉄およびトレニタリアによる運行

しかし、チザルピーノ社による運行では恒常的な遅延などの問題が多発し、2009年に同社によるスイス - イタリア間の列車運行は終了しました。その後、スイス国鉄とトレニタリアがそれぞれユーロシティとして国際列車を運行するようになり、ETR470も引き続きゴッタルドルートのスイス国内とミラノを結ぶ列車を中心に運行されました。

しかしながら、ETR470は故障が多いうえに、乗客の乗り物酔いの問題も解消されず、チザルピーノ社解散の一因となりました。スイス国鉄に所属し、整備も行うようになった4編成については運行支障は半減したものの、同時期に製造された同じペンドリーノ技術をベースとしたRABDe500形（ICN）と比較して整備コストが4倍にも上りました。さらに、ETR470が運行されるゴッタルドルートの定時運行率は71%と、スイスの他の区間の92%を大幅に下回っていました。2011年5月にはトレニタリア保有のETR470第7編成がスイス国内で走行中に火災事故を起こしたことをきっかけに、スイス国鉄はETR470を早期に運用から外すことを決定し、2014年12月のダイヤ改正でETR610およびRABe503形に代替されました。

その他の情報

車両を保有していたチザルピーノ社の本社はスイスのベルンにありましたが、車両の整備はトレニタリアによってミラノで行われていました。また、管理はそれぞれスイス国鉄とトレニタリアにより行われていました。チザルピーノのチケット販売は、トレニタリアやスイス連邦鉄道を含む鉄道会社、旅行会社によって行われていました。ETR470の編成には食堂車も連結されており、その運営はローマに拠点を置くクレモニーニ社が行っていました。

2004年に入って、スイス国鉄とトレニタリアは、レッチュベルクベーストンネルの本格的な開業に合わせて、ベルン - ミラノ間で250km/h運転を行うために、14編成の車体傾斜式高速車両ETR610をフランスのアルストム（旧フィアット）に発注しました。ETR610の導入後は、ジェノヴァ - ニース間のルートに転用される計画もありました。

ETR470は2006年4月11日に電気系統の故障による火災で車両トラブルを起こしましたが、大事には至りませんでした。

チザルピーノ社による運行終了後、2009年にETR470の第1、4、6、7、8編成がトレニタリアに、第2、3、5、9編成はスイス国鉄の所属となりました。スイス国鉄所有の機体のうち、第5編成は2014年4月に運用を外れて他の編成の補修部品確保用となり、その後、全4編成が2015年に廃車されました。

参考文献

* 鉄道ファン2007年12月号 交友社 世界の高速鉄道 イタリアETR500とペンドリーノ 佐藤芳彦著 134頁

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